ENGLISH JOURNAL ONLINE

コーヒーに「Need room?」ってどういう意味?自動的に「バイリンガル」になるわけじゃない!

マヤ・バーダマンさん

『ENGLISH JOURNAL』50周年を記念して、『ENGLISH JOURNAL』「ENGLISH JOURNAL ONLINE」の執筆陣に、「英語学習のこれまでとこれから」というテーマで寄稿していただきました。日本で育って外資系企業に勤務し、自身の経験に基づいた英語学習やビジネス英語の著作があるマヤ・バーダマンさんが、日本語と英語を習得していく過程や、外資系企業での英語に関する気付きなどについて伝えます。

『ENGLISH JOURNAL』創刊50周年、おめでとうございます!

英語を学ぶ方や英語を使う方の味方であり、言語としての英語とその文化的背景や歴史、世界の出来事やトピックスも学べる教材・情報誌である『ENGLISH JOURNAL』は常に、英語とさまざまな形で関わる方々と英語の世界をつなぐ橋のような存在です。

そして、「これはどういう意味だろう」「日本語の〇〇は英語でなんて言うのだろう」などと疑問に思ったとき、「ENGLISH JOURNAL ONLINE」は答えやヒントを届けてくれる心強いリソースです。

常に時代とともに進化し、読者の方々に寄り添ってきた『ENGLISH JOURNAL』と読者の皆さまにメッセージをお届けできる貴重な機会を頂き、心から感謝申し上げます。

最初から「バイリンガル」だったわけではない

「ハーフ」「ミックスルーツ」「バイリンガル」などと聞くと、自然に2言語(以上)を完璧に話せるようになったという印象を持たれる方もいますが、必ずしもそうではありません。

私の場合、小学1年生のときにアメリカンスクールに通うまでは仙台の幼稚園に通い、家では日本語を使っていました。父が英語で話し掛けたとき、理解はしていても私自身は日本語でコミュニケーションを取っていました。

アメリカンスクール入学後は、英語環境に浸ることに。授業が英語で行われ、最初の1年はついていけないこともありました。それでも、ESL(English as a Second Language)の先生にお世話になり、1、2年で家でも英語を話すようになったのです。小学校の半ば頃からは、問題なく英語でコミュニケーションが取れるようになっていました。

アメリカから来日した子どもたちがいる中では、英語の冗談や文化的背景のある話題についていけないこともありました。(日本で育ち、日本で生活する期間が長く、日本語を使う機会も多いので、これは自然なことだと後になって理解できました)一方で、私と同じような状況の子どもたち同士で分かり合えることがあり、同じ世界を共有できました。

家ではアメリカの祖母が送ってくれた「セサミストリート」のビデオを見たり、本を読んだり、寝る前に父が本を読み聞かせてくれたりしました。授業に加え、ESLや家でも英語に触れる時間を増やしていきました。

ところで、昔、家の本棚に『ENGLISH JOURNAL』が並んでいた記憶があります。当時から自分の声をカセットテープに録音するのが好きだったので、音声が収録されていたカセットテープに興味を持ちました。また、ロゴが「パックマン」(ゲームのキャラクター)に似ていると思い、気に入っていたことを強く覚えています。これも何かのご縁か運命だったのかもしれませんね。

常に日本語と英語を行ったり来たり

アメリカンスクールに通っていた当時、「That’s so めんどくさい」「She もこの後 free(学校で授業のない自由時間)だって」のような話し方がいちばん楽でした。英語話者の方と話しているときに、相づちが「そうなんだ〜!」になったり、間を埋める言葉が「あのー」になったりしていました。

ただ、家では、日本語か英語で話し始めたら、そのセンテンスを話し終わるまで1つの言語をキープするように気を付けていました。食卓では、1つのセンテンスに日本語と英語を交ぜたらテーブルの上にある瓶に10円を入れる決まりになっていたのです。「罰金制度」は少々厳しいように感じるかもしれませんが、そのルールのおかげで、1つの言語をきちんと話すよう意識でき、効果的なトレーニングになりました。

また、日本語と英語を行ったり来たりする中で混乱することもありました。

例えば、「メジャーリーグ」という言葉。日本語の「メジャーリーグ」というカタカナ語に最初に触れたためか、脳内にはカタカナの読み方がインプットされていました。そのため、英語で言おうとすると、 Major League(「メイジャーリーグ」のような音)ではなく、カタカナ語でそのまま「メジャーリーグ」(“measure league”の音に近い)と発音するクセがついてしまいました。(実は今も、Major Leagueと言うときは一呼吸置いて気を付けるようにしています!)

現在でも常に、言葉のニュアンスや伝わり方、「日本語のこの言葉を英語で言いたいけど、どれが適切かな」「英語ではこう言うけど、日本語では違う表現の仕方をするな」など、日本語と英語の、言語やその背景にある文化の違いについて考えています。

アメリカ旅行中、カフェでの注文にドキドキ

旅行や留学中は「アメリカで生活しないとわからない単語や言い回し」に触れ、戸惑うこともありました。

「レンジでチン」をzapと言うのもその一つです*1

Would you like me to zap that for you?

これ、レンジで温めようか?

皆さんも、アメリカのコーヒーショップで注文するときに緊張したことはありませんか?私も同じでした。しかも、数年前にもハワイのカフェのカウンターで次のように聞かれて、固まってしまったことがあります。

Need room?

カップにミルクのためのスペースは必要?

Need room?は直訳すると「スペースは必要ですか?」ですが、その意図は、客が「はい」と答えた場合、カップにミルクを足しても中身があふれないように、コーヒーや紅茶を少なめに注ぎますよ、ということです。

「前回旅行したときは一度も耳にしなかった」と思いながら、常に自分の英語をアップデートしなければいけないと再確認しました。

ビジネス現場の英語は別物!たった1語で洗練された表現に

外資系企業で働き始めると、そこで使われる英語がそれまで触れてきた英語とは少し違うことに気付きました。

ただし、テクニカルで難しい単語やjargon(業界用語や一部の人にしか理解できないような言葉)ばかりというわけではありません。なじみのある語が多いのに、その選び方や組み合わせによって、丁寧で洗練された印象を受けたのです。

また、知っていた言葉の「今まで遭遇しなかった用法」や「ビジネスの文脈で持つ独特の意味」があることにも気が付きました。そのような意味は必ずしも英和辞書には載っておらず、英英辞書でも見つからないものもありました。現場でこそ触れられる英語があったのです。

そうした発見のきっかけは次の表現でした。

Could you kindly get back to us by tomorrow?

明日までにお返事(折り返し)いただけますでしょうか?

このkindly(親切に、優しく)という単語を添えるだけで、相手への思いやりが伝わることを初めて知り、とても洗練された印象を受けたのを今でもよく覚えています。

このような英語について学びたくて、本を求めに書店に行っても、探しているような本は見つかりませんでした。自分のいる環境が「教材」だと考え、メールやプレゼン、オフィスの会話など、耳から目から入ってくる英語をお手本にして、自分用のテンプレート集やフレーズ集を作りました

「英語を教えて!」と言われて学び始めた

当時も英語について質問を受けることがありましたが、「なぜここにはtheがないの?」など、冠詞や文法について尋ねられてもうまく回答できませんでした。That’s just the way it is ...(そういうものだから・・・)と、洋楽の曲名のようなフレーズですが、そう思うしかなかったのです。

「英語を話せるのでしょう?じゃあ、教えて!」と頼ってもらえても、うまく説明できず、「理解する・わかっている」ことと「教えられる」ことは別物なのだと痛感しました。

そこから、的確な回答や説明ができるように、英語の仕組みを勉強しました。私にとって、父(編集部注:早稲田大名誉教授で、英語学習の著作も多数あるジェームス・M・バーダマンさん)が師匠・コーチ・メンターで、教材は父の書籍、そして「レクチャー」でした。(時折、父は職業柄「教授モード」に入ったのです)

一生「学習者」を続けていきたい

自分の英語との関わりを振り返ると、常に学習者である、と改めて思います。

執筆を始めたきっかけは、最初に勤めた外資系企業での経験から、「かつての自分のように困っている方や、私のように『教材になる環境』にいない方もいるかもしれない。そのような方々に、本を通して自分の学びや経験が役に立つことができたらいいな」と考えたことでした。

あの頃の私が必要としていたような本があれば、英語で悩む人が救われるかもしれないそれが本の出版につながったのです。

読者の方々が自信を持って英語でコミュニケーションを取れるようになり、本来の力を最大限に発揮して、それが良好な人間関係や仕事につながり、それぞれの舞台で活躍できますことを常に願っています。

月並みかもしれませんが、「日本と海外をつなぐ橋」になりたいとずっと思ってきました。今、英語学習の面でその「橋」となり、日本の方々が英語を使って活躍して日本と世界の「橋」になるサポートができているかもしれないと思うと、この上ない喜びを感じます。

そんな中、 「ENGLISH JOURNAL ONLINE」で連載「品格のある英語」を書かせていただき、「英語のお悩み相談室」の企画にも関わらせていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

To teach is to learn twice.

教えることは二度学ぶこと。

これは、Joseph Joubertというフランスの思想家でエッセイストの言葉です。何かをほかの人に説明するためには、学んだことや自分の理解を言語化する必要があり、また、そのためにはより深い理解や工夫が必要です。そのためにさらに調べ、学び、知識を深めます。私にとって、英語との関わりは常にそのプロセスです。

英語は生き物ですので、今後も変わっていきます。1年間で英語の辞書に500以上の新語が追加されることもあります。5年もすると、言語学習やコミュニケーションのツールもさらに進化するでしょう。

この50年で、英語学習情報誌のパイオニアである『ENGLISH JOURNAL』も、音声収録の形式がカセットテープからデジタルに変わり、媒体もウェブの「ENGLISH JOURNAL ONLINE」に広がり、大きく発展と進化を遂げています。英語学習の世界は今後どのように変化していくのか、想像できないからこそワクワクします。

その変化とともに、自分もいち学習者としてのjourneyを楽しみ、また、学びを読者の皆さまと共有し続けたいと思います。

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※トップ画像のマヤ・バーダマンさん写真:©村田克己

マヤ・バーダマン

マヤ・バーダマン仙台市生まれ。上智大学比較文化学部(現 国際教養学部)卒業。ハワイ大学へ留学し、帰国後は秘書業を経て、ゴールドマン・サックスに勤務。医学英語に携わったのち、別の外資系企業に勤務。著書に『英語のお手本 そのままマネしたい英語の「敬語」集』『英語の気配り マネしたい「マナー」と「話し方」』(ともに朝日新聞出版)、『品格のある英語は武器になる』(宝島社)、『外資系1年目のための英語の教科書』(KADOKAWA)、『英語で仕事をすることになったら読む本』(アルク)、共著に『英語の決定版 電話からメール、プレゼンから敬語まで』(朝日新聞出版)などがある。
Twitter: @maya_tokyo
Instagram: @maya_tkjp
Website:www.jmvardaman.com