コロナ禍でもつながれる!韓国で生まれた、親と子の新しくも懐かしいコミュニケーションツール

 コロナ禍でもつながれる!韓国で生まれた、親と子の新しくも懐かしいコミュニケーションツール

韓国で販売累計部数38万部突破、5年連続「両親への贈り物 推薦図書」第1位(韓国大型書店にて)を獲得した一冊『Mommy Book』をご存じですか?本書はお母さんが自身の考えや思い出、悩み、子どもへのメッセージを書き込み、最終的に子どもへと渡すことで完成するライティングブックです。
このたび、アルクの新刊として本書の日本版が発売!編集担当の峯山麻衣子さんに『Mommy Book』の魅力をたっぷりと聞きました。

Mommy Book

Mommy Book

  • 作者:INNOVER KOREA
  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: 単行本
 

お母さんが著者となり、書き込むことで完成する本

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

帯に「書くのは私のお母さん」とありますが、『Mommy Book』はどんな本ですか?

峯山麻衣子さん

言葉のとおり、「お母さん」という立場の人が著者となり、書き込むことで完成するライティングブックです。内容は、2万7000人に聞いた「お母さんに聞きたいこと」から200問を選出し、掲載しています。

お母さんは書き込んだら、最終的に本を子どもに渡します。質問への回答を通して、子どもが今まで知らなかったお母さんの人生や考えについて知ることができるというコンセプトの本です。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

どのように使うのですか?

峯山麻衣子さん

子どもからお母さんに「書いてね」と贈ったり、お母さんが自分で書いて子どもへプレゼントしたりする本です。子どもから贈る場合は母の日やお母さんの誕生日に、お母さんから贈る場合は、書きためたものを子どもの入学や成人など節目でプレゼントすると、素敵なサプライズになるのではないかと思います。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

『Mommy Book』は韓国で発売された本だそうですね。

峯山麻衣子さん

はい、もともとは韓国の版元さんが出版した本で、2013年に『Daddy Book』、2014年に『Mommy Book』が発売されています。韓国では『Daddy Book』が先に出ていますが、日本では母と子どもが本をやりとりする方がイメージしやすい、ということで『Mommy Book』をまず出しました。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

韓国ではどのような反響があったのでしょうか。

峯山麻衣子さん

韓国では5月に父母の日(韓国では母の日と父の日が一緒)があるのですが、「両親へのプレゼント 推薦図書第1位」と大型書店で紹介されたり、実際に父母の日のプレゼントとして贈られた本の写真がInstagramで広がったりして、じわじわと知名度が上がりました。2019年には、韓国の人気歌手IU(アイユー)さんがご両親からの回答内容をInstagramにアップして、広く知られました。

www.instagram.com

Q「お母さんはどんな20代を過ごしたの?」A「働きながらあなたのお父さんと嫌というほどデートしていた」

「英語学習のアルク」で本書の出版を実現させるまで

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

どのようにして『Mommy Book』と出合ったのですか?

峯山麻衣子さん

年に4、5回渡韓していたほど韓国が好きなのですが、旅行の際に偶然書店で見つけたんです。ちょうどその頃娘が1歳くらいだったので「韓国の育児が気になる」と育児書の棚に行ったら『Mommy Book』がありました。

質問も面白みがあって、韓国語のレベルも読みやすかったので自分で書いていつか娘にあげよう!と思いレジに持っていきました。娘は生粋の日本人なので、普通に生きていたら韓国語が読めるわけがないのに(笑)。

そんな感じで、原書と出合ったときは単に自分のために購入しました。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

アルクといえば英語学習書籍のイメージがありますが、なぜこの書籍を出版することになったのでしょうか?

峯山麻衣子さん

私もずっと英語学習書籍を担当してきたので、個人で楽しんでいた本書の日本版を企画するという発想はなかったのですが、母の病気と、英語書籍以外に挑戦しようという会社の機運が高まった時期が重なり、それが契機になりました。

コロナ禍で地方の両親と会えない日々が続く中、母が糖尿病をこじらせて片目を失明させたのです。すごくショックで、「いるのが当たり前だった母も老いるし、いつかいなくなるんだ」と痛感しました。同時に「会えないままの別れになったら、後悔する」とも。話し足りないし、母の人生がどんなものだったか語れる自信がないなと。ちょうどその時期、会社としても英語ジャンル以外の書籍も企画してよいことになり、日本語の『Mommy Book』があったら母も書けるのに、書けるうちに書いてほしいと思い、絶好のタイミング!と提案しました。

かなりの私情で企画してしまったわけですが、母としての私、子どもとしての私と同じような思いでこの本を手に取ってくれる方がほかにもいるだろうと思いました。後に知ったことですが、韓国の版元で『Mommy Book』を作った編集者の方は、お父さまが脳卒中で倒れたときにこの本のアイデアを思い付いたのだそうです。韓国には両親を特に敬う文化がありますが、日本にだって愛はあるぞと。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

出版に至るまで大変だったことがあれば教えてください。

峯山麻衣子さん

アルクとしては新しいジャンルの本なので、当たり前ですが通常より社内での理解を得るのに時間がかかりました。「(わざわざ立派な書籍にしなくても)大学ノートで同じことをやってもいいわけだよね?」という声があったり、広告塔になる著者がいないという課題が生まれたり。また、韓国では印刷代が日本より安いと言われていて、日本で原書と同じ上製本を作ろうとすると採算が取れないのではと意見を頂いたり。

ですが、韓国での評判や、この本があることの意味、プレゼントブックとして上製本の格にこだわりたいことなどを丁寧に説明していって、企画を実現することができました。

印象的だったのは、企画を通すための要所要所で、普段淡々と仕事を共にしていた社内の女性の先輩方が背中を押してくれたり、助け舟を出してくれたりしたことです。本書に共感してくれる人はいるという実感もだんだんと強くなりました。

原書の良さを残しながら、日本版を作る

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

日本版を作るにあたり、気を付けたことはありますか?

峯山麻衣子さん

翻訳本なら必ずある難しさだと思いますが、他言語を素直に訳すと日本人の感覚からズレることがあります。例えば、原書の目次にある“엄마, 사랑합니다.”(I love you, Mommy.)という言葉。そのまま訳すと「お母さん、愛してる」であり、まったく間違っていないのですが、日本で「お母さん、愛してる」と言う人はあまりいませんよね!?(言えるのなら素晴らしいですが)なんとなく重い。

そのため、日本人にとってまだ自然な「お母さん、大好き」としました(それさえも何十年言ってないですが)。ここでいう韓国の「愛してる」と日本の「大好き」は、使われる言葉が違うだけで感情の重さというか気持ちは一緒なんです。こういった表現をどの程度変えるかはよく考えました。

質問内容についても、お母さんが「そんな質問ナンセンス」と不快になることがないよう、今の日本女性に受け入れられる質問かどうかは気を付けました。例えば「お父さんが子どものように見えて、母性愛が刺激されたのはいつ?」という質問がありましたが、父になった夫に子どものように振る舞われることを歓迎しない妻は多いと考えて変えました。ほかにも、家庭内でのジェンダーロールについて固定するような質問も変えています。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

200問の質問内容について、どのように感じましたか?

峯山麻衣子さん

面白かったのは、やはり質問内容に韓国の文化や気質が表れているなと感じたことです。もしこの本の質問を日本人が考えていたら、安全で差し障りない質問ばかりになりそうなものですが、本書には韓国の方の、合理的に聞きたいことを聞くような部分や、ユーモアが反映された質問がちょうどよいあんばいで入っています。例えば、「お母さんも整形したい場所はある?」「老後に私から受け取りたいお小遣いはいくら?」くらいの質問は、スパイスとしての韓国らしさと判断して残しています。

変更する部分があった半面、全体としては私も母について疑問に思ったことがある質問ばかりで、国が違えど母に抱く思いは一緒なのだなと感じました。

「知らなかった母の人生」に触れ、心が揺さぶられた

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

実際にご自身でも書いて、お母さまにも本書を贈ったそうですね。書いてみて気付くこと、書いてもらって感じたことを教えてください。

峯山麻衣子さん

自分で書いてみて気付くことは、改めて自分がどんな人間か思い知らされるということです。幼少期のエピソードを書いて「基本的な性格が変わっていないな」とか、20代のときのことを書いて「くすぶった10代を20代で回収してるな」とか(笑)。

過去を振り返るのは楽しくもつらくもありますが、ありのままを知ってもらった方が娘の参考になると思うので、かっこ悪いことも書いています。気を付けたのは、「こうした方がいい!」と自分の意見を押し付けないということです。娘にも私の意見を取捨選択できる意思を持ってほしいですね。

母に書いてもらって思うのは、ああやっぱり手紙っていいなということ(笑)。私は人から手紙をもらうのが好きなのですが(たいていポジティブなことが書いてあるから)、誕生日に手紙をくれと言ってもくれない筆不精の母なので、やっとまともな手紙をもらえるのがうれしいです。筆跡が残るのも、母の字が懐かしくていい。

あとは、この本の醍醐味(だいごみ)である「知らなかった母の人生」や「聞かなければもらえなかった言葉」を聞けるのが最高に心を揺さぶられます。泣きたいときに見たら3秒で泣けるような。どんな気持ちでこれを書いたかと想像するとさらにくるものが・・・。たまに入っているボケた回答もかわいらしいです。関西のお母さんとかは相当面白い答えをくれるんじゃないかと思います(過大な期待)。

 コロナ禍でもつながれる!韓国で生まれた、親と子の新しくも懐かしいコミュニケーションツール

編集担当・峯山さんのお母さまが記入した『Mommy Book』

 コロナ禍でもつながれる!韓国で生まれた、親と子の新しくも懐かしいコミュニケーションツール

編集担当・峯山さんが記入した『Mommy Book』

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

特に印象的だった質問を一つ選ぶとしたらなんですか?

峯山麻衣子さん

一つ・・・選び難い。母として選ぶ一問と、娘として選ぶ一問にしましょう!

書く立場としては、Q182「お母さんの人生で、一番の恩人と言える人は?」でしょうか。この質問への回答を通して、人として魅力的であろうとすると家族以外にも仲間や味方が必ず出現するということを伝えられるなと思いました。

母に聞きたい質問としては、Q127「お母さんが家族のために諦めたものってある?」。これまで「母は私たちのためにいてくれる」くらいの気でいたな、母個人のやりたいことに目を向けてこなかったなと気付かされました。母の場合は時代もあって私より捨てたものが多いんじゃないかと思ったり。これからでもかなえられることはかなえてあげたいですね。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

どんな人にこの本をお薦めしたいですか?

峯山麻衣子さん

もともと家族に愛情を示すことをためらわない方にはもちろんぴったりの本ですが、感謝や愛情を表現するのが照れくさくて苦手という方に使ってみていただきたいですね。日本人は照れくさくて感情や愛情を素直に伝えるのが苦手だったり、遠慮して聞きたいことが聞けなかったり、「察する」ことに頼る場面も多いですよね。そんな方にこそ、本書で小さな「聞いてみてよかった」「伝えておいてよかった」体験を届けられたらいいなと思います

聞きたいことをズバッと聞けたり、ユーモアを挟んだりする、韓国らしい良さが出た質問の力を借りてみてはいかがでしょうか。面と向かって聞けない・言えないことも、文字で200ページの中に紛れ込ませるのならば、ハードルが下がると思います。

男性も手に取りやすいようにという思いもあって、ピンクの装丁を避けたので、息子さんもぜひお母さまに渡してみてください。日本の男性はシャイだと言われがちですが、感謝や愛情を伝え合って関係が悪変することはそうそうないのに、恥ずかしさや照れが障害になってできないのはもったいないですから。

お母さまやお子さまに『Mommy book』を贈ってくださる方々にとって、本書がなんらかの役割を果たすことを願っています。

 コロナ禍でもつながれる!韓国で生まれた、親と子の新しくも懐かしいコミュニケーションツール

Mommy Book

Mommy Book

  • 作者:INNOVER KOREA
  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: 単行本
 

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ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

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