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コロナ禍で「ニューノーマル」になったもの【LONDON STORIES】
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「多文化都市」と呼ばれるイギリスの首都ロンドン。この街で10年以上暮らすライターの宮田華子さんが、日々の雑感や発見をリアルに語ります。

コロナ禍の生活を続けて早1年

イギリスでのコロナ禍が本格的に始まったのは昨年3月。このコラムが世に出る頃には約1年間コロナ禍で生活したことになる。ほとんどの時間を家で過ごしていた にもかかわらず 、新しい体験も多かった。

厳しい 行動制限の日常は、毎日発表される情報と、どんどん 更新 される対策ルールをネットやメディアにかじりついて必死に 把握 し続ける「追い掛けっこ」。常にアンテナを張りながら新情報を検索し、不明点はSNSを通して友人たちに聞いて回る。精神的には常に慌 ただし く、そして会っていないのに友人とのコンタクトは例年より増えている。

この1年でさまざまな「ニューノーマル」が誕生・定着していったのは、日本もイギリスも同じだろう。1年前までは普段の生活でマスクを着用する人は皆無だったイギリス。コロナ禍で初めてマスクを着用した人も多いが、現在は外出時必装。街並みを変えるほどの変化だった。

進化した「宅配システム」で受け取りが快適に

ニューノーマルは安全を考慮した上で導入されたものから、生活の変化によって自然発生的に生まれたものまでさまざまだが、コロナ禍で「よい意味」で大きく進化したものに、宅配システムがある。

イギリスの宅配システムは質の低さで知られており、私自身も悩みの種だった。 受け取る 荷物には大きく分けて、①誰かが送ってくれるもの(私の場合、主に日本から)、②自分で配送 手配 したもの(主に通販)の2種類がある。①はまだ解決していないのだが(長く複雑な物語なので、これについてはまたいつかの連載で)、②は飛躍的解決を遂げた。

通販で何か買っても、ほとんどの場合、配達日時が指定できない。できた場合でも配達時間が「〇月×日午前8時~午後7時」という、「ほぼ丸一日」という雑過ぎる時間設定が一般的だ。

日時変更や再配達の 手続き もやっかいで、配達日はわざわざ会社を休み、丸一日、自宅でスタンバっているのは普通のことだった。しかしコロナ禍になって すぐに 定着したのが「デジタル署名」と「置き配」システム。オンラインで 先に 「置き配OK」サインを済ませると、配達員は接触なしで置いていってくれる。つまり配達日時に振り回されなくなったのだ。

宅配業者DPDは、配達 完了 後に置き配の荷物写真などが掲載されたリンク付きメールを送ってくれる。

実はこの置き配システム、導入は日本よりイギリスの方が早かった。 受け取る 側(客)ではなく、配達員(労働者)を守るために生まれたシステムであるのがイギリスらしい。

急増する配送需要の中、配達員が 安心 して仕事を続けられるよう、ロックダウン後 すぐに 「ドアを開けず荷物を 受け取る 」方法がルール化した。その後、より安全に非対面&置き場所を 先に 指定できる 仕組み を各社が構築、一般化した。配送アプリも一気に進化し、配達員が今どこにいるのかまでわかる業者も出てきて、本当に便利になった。

非対面で行う「バーチャル診察」

医療にもニューノーマルが導入されている。イギリスでは病気になるとまずはGP( general practitioner)と呼ばれる家庭医にかかり、必要に応じて検査や専門医に回される。このGPの初診がすべてバーチャルになったのだ。医師と電話で話し、必要であれば(オンライン環境があれば)ビデオ通話に切り替え、症状を見せながら診察を受ける。その後、検査や対面診察など次のステップに進む。

私もコロナ禍でGP診察を受けたが、最初は「バーチャルでちゃんと診察してもらえるの?」と不安だった。しかし通常よりも診察予約が取りやすく、ビデオ画面は驚くほどの高画質!結局電話&ビデオ診察のみで解決し、最後まで医師に直接対面することはなかった。

要は非対面で済むこととそうでないことのすみ分けなのだと納得した。バーチャル診察も、配送業者 同様に 医療現場の人を守るための 仕組み 。ポストコロナでも継続されるシステムだと 予想 される。

歯科治療は不要不急?

逆に早く元のシステムに戻ってほしいのは、歯科治療だ。歯科は粘膜に直接触れるため、治療者側の危険度は極めて高い。現在は1日の患者数を限定し、緊急を要する治療のみ受け付けているところが多い。

私が通う歯科ではドリルを使う治療をすると、清掃と換気のため治療室を1時間半閉鎖している。担当歯科医は「コロナ禍以降、ずーっと掃除してる」と苦笑していた。

NHS *1 の歯科健診や歯石除去は休止のため、どうしてもやってほしい人は「プライベート」と呼ばれる全額自己負担の高額な歯科医院に行かなくてはならない。健診を安価で受けられないことで、貧富の差による口内健康格差が生まれることも 懸念 されている。この部分については、早く「オールドノーマル」に戻ってほしいと願ってやまない。

ロンドンの有名美術館Tate Modern(テート・モダン)のショップでも、マスクや消毒液を販売している。

この原稿を書いている12月現在、イギリスはワクチン接種が開始されたところだ。このニュースに“沸いている”と言うほどでもないのがニヒルなイギリス人らしいが、「終わりの始まり」に近づいたようにも見える。

しかし本当に終息するときまで、まだまだ生活は変化していくの かもしれない 。じっとしているのに目まぐるしいコロナ禍だが、太古から人間は変化と適応を繰り返し、進化してきたはず。その変化の過程を、私たちはこの1年で凝縮して経験しているの かもしれない

イギリスのロンドンってどんなところ?

イギリスの首都ロンドンはイギリス南東部に位置し、さまざまな人種・文化・宗教的背景の人たちが住んでいる「多文化都市」。ビッグベン、大英博物館など観光スポットも満載。

写真:宮田華子

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年3月号に掲載した記事を再編集したものです。

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*1 :National Health Service の略。イギリス政府が運営する国民保健サービス

宮田華子(みやた はなこ) ライター/エッセイスト。2002年に渡英。社会&文化をテーマに執筆し、ロンドン&東京で運営するウェブマガジン「matka(マトカ)」でも、一筋縄ではいかないイギリス生活についてつづっている。

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