日本人が無意識に使い分けている「外来語の法則」とは?

不思議なエイゴ

日本で普通に使われている外来語や和製英語。でも、世界から見るとかなり不思議!?アメリカで生まれ、日本で暮らし、博多弁を操る言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが、最近日本で見つけた「不思議なエイゴ」をご紹介します。今回は、私たち日本人が無意識に使い分けているという「外来語の法則」に切り込みます。

育児をして気付いた和製英語の多さ

私には娘が3人います。次から次へと生まれたので、あっという間にうちはベビーグッズだらけになりました。

特にベビーカーの数は半端なかったです。普通のやつ、折りたためるやつ、2人乗りのやつ、3輪のやつ、チャイルドシートとセットになったやつ・・・どれだけ要らない物にお金を無駄にしたんだろう?と何度も自問しました。それに、おしり拭きを心地いい温度に温めるやつも持っていました。ちなみに、「やつ」は相当便利な日本語です。

ママになった後、いろんなことに気付かされました。育児はバリ大変なこと。赤ちゃんはよう泣くこと。そして、思ったより、私は強いということです。

けれど、言語学者の私がいちばん強く感じたのは、赤ちゃんグッズを表す外来語がどれほど多いかということです。

・ベビーカー (stroller / baby carriage)
・ベビーベッド (crib)
・ベビーフード (baby food)
・ベビーチェア (high-chair)
・チャイルドシート (car seat)
・ジュニアシート (booster seat)
・マザーバッグ (diaper bag)

ほとんどは和製英語です。和製英語は面白くて、基本的に簡単な単語しか和製英語になりません。babyやmother、childは日本人みんなが知っているので、そのまま日本語にしても平気なのです。

これらの和製英語の使い方には、一応パターンがあります。多くの場合、単独の語では使われません。

例えば「ベビーカー」や「ベビーベッド」はよく言うけれど、単に「ベビー」とはあまり言わないでしょう?“That baby is so cute!”を日本語で言うとき、「あのベビーは、超かわいい!」ではなく「あの赤ちゃんは、超かわいい!」と言いますよね。

これは外来語や和製英語によくある傾向なので、今回はこの傾向について解説していきたいと思います。

さて、始めましょう!

日本でよく使われる外来語の法則とは

先ほど言ったように、ほとんどの和製英語は簡単な英単語から生まれます。「ベビー」「ボーイ」「ガール」「ミルク」「マン」「ウーマン」「ワン」のような単語です。でも、あまり単独で書いたり言ったりはしません。

ベビーが欲しいなぁ。
I want to have a baby.

公園で遊んでいるボーイはかわいいね。
The little boy playing in the park is really cute.

妊娠した!ガールが生まれたら嬉しいなぁ!
I’m pregnant! I hope I have a girl.

お母さんは、バリ強いウーマンだ。
My mom is a really strong woman.

あのマンは怖い!
That guy is scary.

こんなのは全然聞かないよね?

和製英語や外来語はランダムに生まれると思っている人も多いかもしれませんが、実は法則があるのです。

パンの名前に英語が多いのはなぜ?

ほかの例を見てみましょう。

パン屋さんでよく「エッグ」「ブレッド」「ミート」「ミルク」などの単語を見かけます。

・オニオンブレッド
・ミートパン
・エッグサンド

日本人なら誰もがわかる、なじみのある名称です。

なんで「たまねぎ」「卵」「お肉」と日本語で言わないの?と思ったことがありませんか。

これにはいろんな理由があると思いますが、きっと「オニオンブレッド」と言った方が、「たまねぎパン」よりおいしそうに聞こえる!と思っている人がたくさんいるからでしょう。

実は日本人が「オニオン」と「たまねぎ」を使い分けているということに気付いている人は少ないと思います。つまり、日本語では食材の時だけ「オニオン」を使っているのです。

スーパーでオニオン2個を買ってきてくれる?
Could you pick up a couple of onions at the store?

オニオンが好きじゃない。
I don’t like onions.

オニオンの皮をむく時、涙が出る。
Peeling onions always makes me cry.

と日本語で言ったら、ちょっと変な人だと思われます。

日本人は、無意識に外来語や和製英語を使い分けています

パンは外国から来たものですから、パン用語に外来語が多いのは当然です。あまり和食のメニューで外来語を見ることはありませんよね。

パン屋さんだから、なんとなくしゃれとる外来語を使わないといけない、という空気があります。もちろん、外来語を使う理由は、日本語にない語彙とのギャップを埋めるためでもありますが、格好いいと思う人が多いからという理由もあります。
英語だけじゃなくて、フランス語、イタリア語なども同じ理由でよく使われています。

もちろん、日本語で「玉ねぎ蒸しパン」という名称を付けてもいいけれど、「オニオンブレッド」のほうが豪華なイメージがしますよね。

ちなみに、「パン」は最初に日本語に入ってきた外来語だそうです。ポルトガルの宣教師と一緒に来日しました。「パン」は、ポルトガル語の「pao」からきたそうです。

同じような例はほかにもたくさんあります。

よく、洋服とか外国の物についてカタカナを使います。こうした商品の色を表すとき、「グリーン」「レッド」「ブルー」などと言います。けれど、畳の色は「グリーン」じゃなくて「緑」と言いますよね。着物も「ブルー」や「レッド」じゃなくて、「青」「赤」と言います。

「台所」と「キッチン」のイメージも違いますよね?「台所」と聞くと和風のものを、「キッチン」と聞くと洋風のものを思い浮かべるはずです。「ライス」はお皿に乗せてあるものだけど、「ご飯」は茶わんで食べるものです。

日本に不思議な英語が多いのは、英語がわかるから

日本語には外来語があふれています。不思議な英語はたくさんあるし、考えてみたら、そんなに不思議じゃない英語もあります。

日本人は義務教育で英語を習うので、単語をたくさん知っています。「日本人は英語が話せない!」とよく言われますが、英語がわかるからこそ、こんなにたくさんの英語や外来語、和製英語が使われているのだと思います。

だって、誰も英語がわからなかったら、英語を使わないでしょう?

外来語の使い方は独特で面白いです。日本人が外来語を無意識に使い分けていることは、言語学者の私にとって相当興味深いことです。

これからどんな不思議な英語が日本に入ってくるのか、楽しみにしています!

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アン・クレシーニ

文:アン・クレシーニ
アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページ更新中!

写真:リズ・クレシーニ