英語学習が続く!「自分の褒め方」

飽きない英語 マナビツヅケル学習者

「モチベーションの維持」。これは英語学習者の永遠のテーマと言えるのではないでしょうか。連載「飽きない英語 マナビツヅケル学習者」では、現役高校教員の大竹保幹さんが、授業で実践している飽きない英語学習の方法と、それを皆さんの英語学習に応用させるコツを紹介します。

褒められたら、英語学習はもっと楽しい!

皆さんは、褒められるのは好きですか?

おそらくほとんどの人が褒められて嫌な気はしないでしょう。褒められるとうれしくなって、やる気が出てくる。もう少し頑張ろうと思えてくる。これは人間にとって当然の反応と言えます。

それなら自分をうまく褒めることができれば、英語の勉強はもっと楽しくなるはずです。

では、学校の先生は生徒たちのやる気を引き出すためにどんな褒め方を実践しているのでしょうか。そしてそれをどのように自宅の学習に応用すればいいのでしょうか。

第2回のテーマは「自分を褒める」です。

教師の褒めテクニックを応用しよう

I have a bog.

これは、私が以前勤めていた高校で生徒が実際に書いた英文です。

少しでも英語を教えたことのある人なら誰もがうなずく、よくある間違え方をしているのですが、皆さんが先生だったらこの生徒にどんなコメントをしますか?

相手が英語を習いたての小中学生なら、こういったアルファベットの誤りはよくあることなので、英文を書けたこと自体を褒めるという人が多いかもしれません。

ところが相手が高校生だったらどうでしょう。「高校生にもなってdとbを間違えるなんて」と言いたくなりますか?もちろんその気持ちは十分にわかりますが、もしそんなコメントをしたらきっと生徒のやる気はなくなってしまいます。

ちなみに私は、bとdの誤りは赤ペンで小さく指摘しましたが、その隣のaを丸で囲み、こう書き添えました。

冠詞が使えていて素晴らしい!

私には、この生徒がI have dog. という誤用の壁を越えられたことがうれしかったのです。

教師にとって「褒める」ことは生徒のやる気を引き出すための基本テクニックです。

褒められると単純にうれしいというだけでなく、ある程度の実力を認めてもらえた気持ちにもなり自己肯定感が高まります。授業中、生徒をのせるのがうまい先生は必ずと言っていいほど生徒を褒めるのがうまいのです。

ただし、なんでもかんでも褒めればいいというわけではありません。できて当たり前のことを褒められると、なんだかばかにされているような気がして、かえってやる気を失ってしまうことだってあるからです。

相手が何を難しいと感じているかを瞬時に見極め、的確に褒めること。これが教師の褒めるテクニックなのです。

相手をどう褒めるかを考えるのは結構大変なことですが、自分がいつ褒められたいかならすぐにわかります。自分をおだててやる気を引き出し、それで英語の力が伸びるならやらない手はありません。

誰も褒めてくれない?それなら・・・

「褒める」と言うと、普通は言葉で伝えるものという感じがしますが、何かうまくいったことに対して報酬を渡すのだって褒め方の一つです。

例えば、小学校などでは児童がやってきた課題に対してシールを貼ってあげたり、花丸を大きく描いてあげたりすることがあります。家庭ではお手伝いをした子どもにお菓子をあげることもありますよね?

こういった物による報酬は、「これができたら次も同じものがもらえるだろう」と相手に思わせることによって、次も同じような「正しい行動」をとるよう促すために使われます。

シールを集めたいから宿題を頑張る。お菓子が欲しいからお手伝いする。これだけを見れば、餌で釣って相手を自分の思うようにコントロールしているような感じもしますが、やる気に対する効果はわかりやすく出てきます。

「もし2時間集中して勉強ができたら、アイスを食べてもいい」とか、「単語を50個覚えるごとにシールを貼っていって、10枚たまったら好きな服を買おう」とか、自分の勉強に応用するとしたらこんな感じでしょうか。

自分を褒めるコツ

ただし、これもただ「勉強が終わったら自分にご褒美を与えればいい」というわけではありません。大して取り組んでいなくてもおいしいケーキを食べられるとわかった途端、不思議なもので人間はやる気を失ってしまうからです。

ポイントは、少しつらいと思うような学習内容に対して報酬を与えるということです。「頑張ったからこそ、ご褒美をありがたいと思える。だから次も頑張れる」というサイクルを作ることができれば、単語や例文の暗唱といった英語学習のつらい部分をうまく乗り越えることができるかもしれません。

ちなみに、学習を重ねていくうちに報酬の内容が英語に関係することに変わると、英語学習のスピードが加速します。

「この文法問題を解き終えたら今日本屋で買った洋書を読もう」という段階までくれば一日中英語に触れていてもつらくありません。映画を観ているだけで英語の勉強になるところまでくると、どこからが勉強でどこからがご褒美なのかもわからなくなります。これが英語学習の最終目標とも言えるでしょう。

自分を褒める方法は物に頼るだけがすべてではありません。

自分のやったことに対して「われながらよくやったなぁ」とか「英語が少しずつわかるようになってきたぞ」などと成果を常にポジティブな言葉で捉えていくことも大切です。

「私なんてまだまだ・・・」と人前では謙虚に振る舞うことも時には必要かもしれませんが、自分一人で勉強しているときはぜひ自分を最大限評価してあげましょう。

参考書のページがなかなか進まないときも、「まだこんなにある・・・」と悲観的になるのではなく、「ここまで進んだぞ」と前向きに捉えてみるだけで明日ももう少し頑張ろうと思えてくるものです。

また、今はSNSが普及しているので、日常について簡単に発信することができるようになってきました。自分がしたことや感じたことについて「いいね!」と誰かに褒めてもらうとそれだけでうれしい気持ちになったりもしますよね。

それならば、自分が勉強したことを誰かに見てもらうというのもいいかもしれません。SNSで「いいね!」が付いたら、自分の成果が認められたような気がしてまた次も頑張れるようになるはずです。

ただし、「いいね!」の数は絶対に気にしないこと。もともと勉強は自分のためにしていることです。多くの人に褒められるのが目的になってしまっては、なんのための勉強なのかわからなくなってしまいます。

ストイックはかっこいい?

ご褒美など一切なく、ただただ厳しい環境で勉強し続けて英語を身に付けた人の話を聞くと、「すごい」「かっこいい」と思うのは当然の反応なのですが、私たち全員がそれをまねできるかと言われれば、それはそんなに簡単なことではありません。

また、中には「褒める」ことよりも「叱る」ことのほうが大切だというかなりスパルタな考え方の教育もありますが、怒られたくないから頑張るといったやる気の出し方は、少なくとも自身の勉強には取り入れないことをおすすめします。

「今日、単語を100個覚えないと夕食を食べられない」と決めて自分を厳しい環境に置くことはできるかもしれませんが、勉強すればするほど自分の心が削れていきそうです。英語学習は楽しくないと続けられないのです。

「ストイック」という響きはなんだかかっこいいのですが、そこに喜びを感じることができる人は一握りです。だから私たちは少しくらい甘えてみましょう。

単語を覚えたらお菓子を食べられるとか、洋書を20ページ読み終えたらテレビを見られるとか、そういうところから始めればいいのです。

「褒める」は小さな目標です。

毎日の小さなご褒美を目標に学習を続けていれば、いつの間にか本当の大きな目標にたどり着くことができますよ。

子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ

子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ

  • 作者: 大竹保幹
  • 出版社: アルク
  • 発売日: 2018/12/18
  • メディア: 単行本

大竹保幹

文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立多摩高等学校教諭。1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。