今回、「ニュースな英語」が取り上げるのは、前回・前々回に 引き続き 、新型コロナウイルス関連の話題です。皆さんの生活にも関連するhoarding。いったい、何を指す言葉でしょうか?
今回のニュースな英語
hoarding今回のニュースな英語は、「買いだめ」を意味する「hoard」。動詞で「 to hoard」、名詞では「hoarding」となります。「fear-based hoarding」や「panic buying」などとも言います。
世界中で店から消えるトイレットペーパー
いまだ終息が見えない新型コロナウイルスの感染 拡大 ですが、これに関連したデマがもとで日本では先ごろ、トイレットペーパーが品薄になったのは記憶に新しいと思います。
ところが、トイレットペーパーが買いだめされて小売店から消えたのは、日本だけではありません。イギリスやオーストラリア、香港、シンガポール、アメリカなど、世界各地でもトイレットペーパーの品薄状態が続いています。
当然ながら、マスクや消毒用ハンドジェルも商品棚から消えています。しかしウイルスと直接関係のなさそうなトイレットペーパーが必要以上に買われる理由は、いったい何なのでしょうか?
どんなふうに使われている?
買いだめで店から商品がなくなる様子を伝える報道が多い中、「トイレットペーパーを買いだめする人の心理」を取り上げたメディアも少なくありません。イギリスのニュース専門局スカイニュースは、3人の専門家に、なぜ人々は買いだめをするのか?そして そもそも 、なぜトイレットペーパーなのか?という疑問を投げかけています。
news.sky.com記事の見出しはこうなっています。
“Coronavirus: Why are people panic buying and why toilet paper?”ここでは「panic buying」という言葉で「買いだめ」を表現しています。「パニック買い」という描写が、「合理的な理由がないのに買ってしまう」という、焦る人々をよりリアルにイメージさせますね。「コロナウイルス:人はなぜ買いだめをしているのか?しかもなぜトイレットペーパー?」
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのドミトリス・ツビコス博士は、トイレットペーパーが長期間保存できる商品であること、店内で目立つところに陳列されていること、大きいこと、といった理由から、危機の際に「トイレットペーパーを買っておきたい」という心理が働くとスカイニュースに対し説明しています。「大きければ大きい方が、人は重要だと思ってしまう」とのことです。
消費者行動を専門に扱うコンサルタント会社「イノベーションバブル」の心理学者カタリーナ・ヴィトゲンスさんも 同様に 、トイレットペーパーの大きさがポイントだと 指摘 します。トイレットペーパーは大きいため、商品棚が空いていると「ない」ことが目立ちます。そのため、「買っておかなければ」と焦る気持ちが強くなってしまうようです。
また、心理学者のエマ・ケニーさんは、以下のように述べています。
It's really interesting to see people are stockpiling things like toilet paper.ここでは、「stockpiling」という言葉で「買いだめ」を表現しています。トイレットペーパーなどのモノを買いだめする人たちの様子を見るのは本当に興味深い。
この記事にはこんな一文もありました。
‘It's ridiculous ,’ Ms Kenny said of the ‘panic buying’ behaviour - particularly of hoarding loo rolls.ちなみに 「loo rolls」は「トイレットペーパー」のこと。トイレットペーパーはロール状になっているため「toilet rolls」などとも呼ばれますが、イギリスでは俗語でトイレを「loo」と呼ぶため、「loo rolls」になります。ケニーさんは、「パニック買い」という行動──特にトイレットペーパーの買いだめ──について、「ばかげている」と話す。
まとめ
必要以上に何かを買う、「買いだめ」を表すもっとも一般的な単語は、「hoarding」。同じく「stockpiling」も使えますが、どちらも「ためる」という行為を指します。今回のように「手に入らなくなるのではないか」と焦る心理から買いだめに走る行動は、「panic buying」とも表現できます。
文:松丸さとみ
フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。
Blog: https://sat-mat.blogspot.jp/
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