英会話は、簡単なフレーズでも相手と仲良くなれる!日本にある法人向けの高級アパートメントで外国人滞在客のコンシェルジュをしているKayo(重盛佳世)さんが、楽しいエピソードとイラストと共に、幅広く使える英語フレーズを紹介します。国内の企業で活躍後、40歳を前に長年勤めていた会社を辞めてイギリスのカンタベリーに語学留学し、英会話本を出版したKayoさんのとっておきのコツがいっぱい。第1回は「リクエストに応える、おすすめする」です。
コンシェルジュの仕事は国際交流会のよう
私がコンシェルジュをしているところは、ホテルとは違って、日本へ長期で出張に来るビジネスマンたちが滞在する短期の賃貸アパートメントです。ほんどが法人契約なので、各企業が手配している日本の宿泊所といった場所でしょうか。
契約している企業もさまざまで、ITや金融関係、自動車メーカーなどをはじめ、アパレル、コスメ、食品、保険、そして芸術関係も。世界中のビジネスパーソンが利用しています。
皆さん長期滞在なので、毎日接しているうちにアットホームな関係になり、慣れてくると私がいるフロントにおしゃべりに来てくれます。話題は家族や自国のこと。
また、みんな日本好きなので、日本の文化や食生活について聞いてきます。私は海外生活の経験もあるので、外から見た日本もなんとなく分かり、海外の人たちが好きそうな話題に振ったりしています。
そうやって盛り上がっていると、他の入居者もやって来て、「Kayo、何話してるの?」と聞いてきます。そこで私がそれぞれを紹介して意気投合。で、また話が盛り上がっていると、そこに一人、二人と加わり・・・。気が付くと、ちょっとした文化交流会になっています(笑)。
この連載では、こんな滞在客と接する日々の中で、ほっこりする出来事や、驚いたこと、彼らの文化と日本文化との違いなどを紹介していきます。
第1回は、コンシェルジュとしての力量を求められる「滞在客からのリクエスト」のエピソードです。
何に興味があるかを聞き出すのが腕の見せどころ
このアパートメントに滞在するビジネスパーソンは企業に勤める人がほとんどですから、当然、週末は休みになります。そして休日になると、ここぞとばかりに日本滞在を楽しもう!とアクティブに行動します。
そんなとき、彼らは私に次のように尋ねてきます。
Are there any places you recommend?
どこかいい場所を教えて?
でも、「いい場所」というのは人それぞれで、これではあまりにもザックリし過ぎています。そこで、コンシェルジュKayoの「聞き出す術」の出番です!
私が最初に尋ねるのは、この質問です。
What are you interested in?
何に興味がありますか?
そして、すかさず次のように続けます。
Shopping? Historic places and buildings? Art museums? The city or the country? Or food?
買い物?歴史的な場所とか建物?美術館?都会、それとも田舎?もしくは食?
すると、相手も自分が興味のある分野を話してきます。そこからヒントを得て、相手が興味のありそうな場所へ具体的に落とし込んでいくのです。
日本が大好きなアニメおたくのドイツ人の場合
彼は30代半ばの自動車メーカーのデザイナー。超日本好きで、以前にも訪日経験はあるものの、日本が好き過ぎて、会社に日本出張を提案し、今回仕事で訪れたとのことでした。
彼は毎朝出勤の15分前に私のところに来て、私とおしゃべりしてから出掛けていきます。
日本のアニメが好きで、シャツの下にはいつもキャラクターTシャツを着ています。そして、「今日は○○のTシャツだよ♪」と見せてくれるのです。きっと会社では真面目キャラで通っていて(以前、会社には話す相手があまりいないとボヤいていたから・・・)、シャツの中を見せることはできないのでしょう。
それなら、この場が唯一のアニメキャラの見せ場でしょうから、私も一緒に盛り上がって、「いいね!」「似合っているよ!」と褒めまくります!すると彼は満面の笑みで、「でしょ~。これ、先週の日曜に買ったんだ!」と返事をして、気分よく出掛けていくのです。
そんな彼は休日になると9時半くらいにやって来て、私と話して、その日の行き先を決めるのでした。
あるときは、「ちょっとした自然に触れたい!」とのことで、私も以前に行って楽しかった思い出のある高尾山をすすめました。電車の乗り換えから、駅に着いてからのロープウエーの使い方、お食事所など。
私が登ったのは遠い昔だったので、うろ覚えだったのですが、「山の中のお寺の天狗(てんぐ)の像が印象的だった!」と、天狗について簡単な英語で説明しながら伝えました。
Tengu is a legendary creature with a long nose. It looks like a devil, but it is a messenger of God and Buddha. It protects mountain shrines and temples.
天狗は伝説の生き物で、長い鼻が特徴です。悪魔のような姿ですが、神様や仏様の使者です。山にある神社や寺を守っています。
すると彼は、「じゃあ、その天狗を見に行ってくるよ!」と。
その日の彼は、お気に入りのアニメのTシャツと半ズボンスタイル。あまりにも軽装だったので、ジャケット持参をすすめたのですが、「No problem!(大丈夫!)」とそのまま元気に出掛けてしまいました(休日はシャツで隠す必要がないので、堂々とアニメキャラを披露できます・笑)。
おすすめした後のフォローが仲良くなるポイント!
私が人とのコミュニケーションで大切にしていることがあります。それは、前述のような会話をした後、次にその相手と顔を合わすときには、こちらから先に「どうだった?」と声掛けをすることです。
すると相手も、「自分を気にしてくれているんだ!」と、もっと心を開いてくれます。他のことで忙しいときでも、そうしたコミュニケーションは優先させています。
後日、前述の彼に会ったときには、次のような会話をしました。
私:How was Takao-san?
彼:There were too many tourists, but it was great!
私:Did you use the cable-car?
彼:No, it was too crowded, and because the weather was nice, I went to the top of the mountain on foot.
私:What did you have for lunch?
彼:I had the soba that you recommended to me! It was delicious. I also had grilled dumplings.
私:How were the Tengu?
彼:The statues of them looked so mysterious!
私:高尾山はどうだった?
彼:観光客が多かったけど、最高だったよ!
私:ロープウエーは使った?
彼:混んでいたから乗らなかった。天気が良かったから、自分の足で登ったんだ。
私:お昼に何を食べたの?
彼:Kayoがすすめてくれたそばを食べたよ!おいしかった。あと焼き団子も食べた。 ※お団子のジェスチャーをしてくれました。
私:天狗はどうだった?
彼:神秘的な像だったよ! ※スマホの写真を見せてくれました。
私はこのように、自分がおすすめしたことに対して彼がどうだったか?というのを、どんどん「簡単な英語」で聞いていきます。
すると、会話が途切れることなく盛り上がるのです(実際のところ、会話が途切れないよう気を付けているのではなく、単に、自分の伝えた情報で彼が満足してくれたかが聞きたいだけだったのですが・笑)。
その後も彼からはさまざまなリクエストをもらい、鎌倉や川越、築地、浅草&両国などをおすすめしました。そして帰ってくると「楽しかったよ~!」と報告を受けていました。
そうやって2カ月間、滞在した彼は、「今度は奥さんも連れてくるから、Kayo、友達になってあげてね!」と言いました。もちろん私はすかさず、次のように答えました。
Please tell her, we can enjoy chatting and having a lovely girly time together!
奥さんに、ぜひ一緒におしゃべりや女子同士の時間を楽しみましょう!と伝えて。
すると彼は、「I will.(そうするよ)」と言ってくれました。
その後も彼とはメールでやりとりし、「奥さんと一緒に○○に行ってきたよ!」と写真を送ってもらったりして、良い関係を保っています。
何から何まで要求してくる、ちょっと厄介なインド人の場合
彼女は20代後半くらいのエリート銀行員。入居したその日から私を部屋に呼び、キッチンのコンロの使い方や、洗濯機、エアコンなどの家電製品の使い方を端から聞いてきました。
冒頭にも書きましたが、ここは長期滞在の物件です。料理や洗濯なども自分でやってもらうところで、生活に必要なものは一通りそろっています。また、各部屋に家電の使い方や生活ルールについてのマニュアルブックが置いてあるので、いちいちコンシェルジュに尋ねなくても、自分でできるようになっています。
ですから、私たちコンシェルジュもよほどのことがない限り、滞在者の部屋に伺うことはありません。しかし、この女性はマニュアルブックには一切目を通さず、何かあるとすぐにコンシェルジュを呼ぶので、私たちコンシェルジュの仲間内でもちょっとした問題になっていました。
さらに、彼女の英語が聞き取りづらいのです。同僚の話によると、何回か聞き返すと「It's OK. / OK, forget about it.(もう、いいわっ!)」と怒って立ち去ってしまうとのこと。
でも幸いにも私はなんとか聞き取れたので、お客さまだと思って真摯に対応していました。すると彼女は、私がフロントにいるときを狙って聞いてくるようになりました。
例えば、次のような具合です。
I want to go to a nail salon. I know that Japanese nail technology is good!
ネイルサロンに行きたい。日本のネイルの技術はすごいんでしょ!
I want to have my eyebrows shaped at the facial salon. I don’t need a facial massage, just my eyebrows shaped.
フェイシャルサロンで眉毛を整えたい。フェイシャルマッサージはしたくないの、眉毛だけね。
I'm so tired. I want a body massage!
とても疲れたから、ボディーマッサージを!
20代の美しい女性の要求です・・・。私はその都度、英語対応ができる店を検索して、その店に「こういう人が伺うが対応できるか?」と電話で確認しました。
しかし、彼女が行きたい日時と店側の空き状況が合わなかったり、ようやく見つけて、その店の英語バージョンのウェブサイトを見せようとしたら、このように言われたりすることも。
Oh, sorry, I've made another appointment that day, so can you just forget it?
あっ、悪いけど、その日は別の用事を入れちゃった、やっぱりいいや!
「はぁ?」って感じですが、そこは仕事だから抑えました。
All right, if you need anything, please contact us again.
そうですか・・・、そしたら、また何かあれば言ってください。
そんなこんなで、彼女が滞在した1カ月半の間は、彼女に振り回されました。
そして彼女がようやく退去する日がやって来たのでした。「これで穏やかな日々に戻れるぞ~」と思いながら、朝、フロントに立ったところ、すぐさま彼女が来て、「Kayo、ちょっと部屋に来てくれる?」と言うのです。「え~~っ、最後の最後になんなのよぉ~」と心の中で泣きながら、彼女の部屋に行きました。
すると、部屋のテーブルには多くのフルーツやパンが並び、入れたてのチャイが用意されていました。私が「えっ?」と彼女を見ると、彼女はこう言いました。
During my stay, you’ve been so helpful to me, Kayo, so I’d like to have breakfast with you on my last day!
Kayoには滞在中にとてもお世話になったから、最終日の朝食をKayoと一緒に取りたいと思って!
予想もしていなかった出来事に、私は目頭が熱くなりました。本当は彼女の用意してくれた朝食を一緒に食べたかったのですが、なにせ勤務中でしたので、丁重にお断りしました。
私:Ah, thank you so much for asking. Unfortunately, I'm working now and I can't leave the front desk. I’m touched that you asked.
彼女:Can’t you just have a little bit?
私:Sorry, no …
私:本当にありがとう。でも仕事中だから私はフロントを離れるわけにはいかないの。そう言ってくれてとてもうれしかった。
彼女:ちょっとぐらい、いいでしょ!
私:ごめんなさい、無理なの・・・。
すると、「Then, eat these at lunch!(じゃあ、これをランチのときに食べて!)」と、たくさんのフルーツをくれました。
その後、彼女は身支度をしてチェックアウトをしにフロントに来ました。目を潤ませながら、「Can I give you a hug, Kayo?(Kayo、ハグしていい?)」と言うのです。
わがままで厄介な滞在者だと思っていたのですが、彼女にしたら、私は日本に来て唯一心を開いた存在だったようです。相変わらず聞き取りづらい英語でしたが、彼女の素直な気持ちは十分に伝わってきました。
彼女への対応はとても大変でしたが、最終的に快適に過ごしてくれたことが分かり、コンシェルジュ冥利に尽きました。
日本を紹介する際のお役立ちフレーズ
日本の良いところや誇れるものを大いにアピールする際に欠かせない言葉が、very Japaneseです。
「とても」や「非常に」という意味のveryですが、そこにJapaneseを付けると「日本っぽい/日本らしい」という意味になります。
It’s very Japanese!
これって、日本っぽいのよ!
このフレーズは、日本らしい景色、例えば神社や寺、今回の高尾山の天狗像、田舎の風景、都会のビル群、満員電車、渋谷のスクランブル交差点・・・と、特徴のある景色を見せながら言えます。また、商品や文化、料理などにも使えて、さまざまなシーンで活用できます。
このvery Japaneseの他にも、私がよく使うのが次のフレーズです。
This is Japanese hospitality!
これが日本のおもてなしよ!
これは、海外の人が日本のサービスに感動しているときなどに使います。
日本の製品や技術に驚いていたら、このように言えます。
It’s Japanese technology!
これが日本の技術よ!
真面目に言うと自慢っぽく受け取られますが、カジュアルにウインクでもしながら言ったら、ぐっと会話が弾みます!
Kayoさんの本
▼「道案内」や「外国人とのちょっとしたコミュニケーション」ができるようになる一冊。中学レベルの短いフレーズでOK!「日常のあるあるシーン」から英語を楽しく学べます。オリンピック・パラリンピックを前に、ぜひ!
▼英語が超苦手だった著者が40歳を前にイギリスに語学留学を試み、学校で必死に書き留めたノートをまとめ上げたもの。「英語ができなかった人」が、できるようになった「秘密の勉強法」が載っています。
▼上記の赤いチェック柄の本をさらに「初心者向け」に作り上げた本です。時計の読み方、あいさつ、天気、食、乗り物など. 日常生活で役立つ「基本中の基本の英語」が学べます。

全くダメな英語が1年で話せた! アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』 とことん初級編
- 作者:重盛 佳世
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/04/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
▼ありとあらゆる「食」のシーンから楽しく英語を学んじゃおう!という一冊。食を通して「会話力」や「コミュニケーション力」を付けられます。「海外旅行」にも役立つと評判!
文・2点目イラスト:Kayo(重盛佳世/しげもり かよ)
40歳を前に長年勤めていた会社を辞めてイギリスのカンタベリーに語学留学し、現地での生活に引かれて、その後も滞在を繰り返す。その間、語学学校での学習を自分流にまとめた英会話本「アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』」シリーズを出しながら、同時に現地のガイドブック作りにも励み、電子書籍で出版。現在は執筆の傍ら、日本で外国人向けアパートメントのコンシェルジュとしても活躍中。
編集:GOTCHA!編集部