英国王室とマインドフルネス~大人の知的好奇心を刺激する英語絵本2冊

英語絵本の案内人木村千穂さんが、「ビクトリア女王」「マインドフルネス」など、大人の好奇心をくすぐる英語絵本を紹介します。

こんにちは。英語絵本の案内人、木村千穂です。今回は「大人ならではの、好奇心をくすぐる英語絵本」を2冊、選んでみました。

イギリスのヴィクトリア女王の海水浴にまつわる実話

Queen Victoria's Bathing Machine
 
by Gloria Whelan, Nancy Carpenter)">Queen Victoria's Bathing Machine( by Gloria Whelan, Nancy Carpenter)

ではさっそく1冊目。綺麗な水色の表紙には、ちょっと太目な女の人が水の中に潜っていく絵が描かれています。その頭上にあるのは、ん?王冠?そう、この絵本は 英国のヴィクトリア女王のお話 です。

4男5女、という9人の子どもに恵まれた女王は、イングランド南部に浮かぶ小さな島、ワイト島にあるオズボーン・ハウスを、女王一家の私な別邸として愛用していました。

ある暑い夏の日、ヴィクトリア女王はその窓から海を眺め、つぶやきます。「泳ぎに行けたらいいのに・・・」お付きの侍女は卒倒し、「ありえません!女王陛下がお顔と手よりほかを人目にさらすなんて」。

いつも着ているドレスのまま海に入ったら沈んでしまうし、私が海に入るのは諦めないといけないのね・・・とがっかりする女王さま。ならばその願いをかなえてあげよう!と、夫のアルバート公が愛する妻のために智恵をしぼって考案したのが、タイトルにもある、Bathing Machine です。

Bathing Machine は、女王陛下が人目にふれることなく海水浴ができるように作られた「特別な移動式の小屋」のようなものです。Bathing suit が水着、ですから、Bathing Machine は、まさに水にはいるための装置。

ヴィクトリア女王が人目にふれることなく水浴ができるように作られたBathing Machine

さて、それをどんなふうに作ったか、というのももちろん興味深いのですが、この本で私が好きな場面は、ずーっと模索していたアルバート公がある日の夜中に素晴らしいアイディアを思いついたところです。

アルバート公はもう、その思いつきがうれしくて、思わず女王と二人でベッドの上で飛び跳ね、ダンスまでしてしまいます。そして笑顔を寄せ合ってベッドで眠りに就く二人は、本当に幸せそのもの、に見えるのです。

さあ、グッドアイディアを実現するために、翌日からアルバート公と9人の子どもたちで制作開始!それぞれのページに9人の子どもたちがちゃんと登場していて、いかにも家族全員を合わせて、女王のために頑張る様子が出ているのが、またほほえましい感じです。

ラスト、念願かなって、人目を気にすることなく海の中を満喫した女王陛下をお迎えしたのはもちろん、アルバート公。これぞまさしく「お姫様抱っこ」のをぜひ、実際の絵本で見てくださいね。

ヴィクトリア女王は、「新しいもの好き」と言われていて、とても好奇心旺盛な人だったようです。 結婚式の白いウェイディングドレスを流行らせたのも、もともとドイツの習慣だったクリスマスを英国に持ってきたのも、ヴィクトリア女王 ですし、女王陛下なのに水泳を楽しんだこと、もその一つの現われかもしれません。

ヴィクトリア女王が海水浴をするときに、どのようにBathing Machineを使ったのかが分かるように作られた動画

かつて世界各地に植民地を築き、「太陽の沈まない帝国」と呼ばれた19世紀のイギリス。その時代に18歳で即位し、63年7カ月にわたって在位したヴィクトリア女王は、現在のエリザベス女王の高祖母(祖父母の祖母)にあたります。今年 2019年は、生誕200周年ということで、バッキンガム宮殿では特別展も開かれるほど、ヴィクトリア女王に再び注目が集まった年 でした。そういった意味では、この絵本はトレンドな一冊、といえるかもしれません。

いまでも英国で広く愛されるヴィクトリア女王は、その多彩なエピソードが数々の映画にもなっています。この絵本を きっかけ に、映画も見てみようかな、とか、イギリス王室にも興味が広がったりして。紅茶など飲みながら、大人ならではのそんな時間を過ごすのはいかがでしょう?

心が整う「マインドフルネス」のキーワードが絵本に!

ABC for Me: ABC Mindful Me: ABCs for a happy, healthy mind & body
 
by Christiane Engel)">ABC Mindful Me( by Christiane Engel)

さて、2冊目は、がらっと趣を変えて。「マインドフルネス」という言葉を耳にされたことはありますか?仏教の瞑想を発端としながら、シリコンバレーで発展し、いまや Google、Apple、Facebook といった時代の最先端を行く企業も、ビジネスの現場でその瞑想法などを取り入れていると話題のマインドフルネス。

この絵本は、マインドフルってどういうこと?その素朴な疑問に答えるヒントを、アルファベットのA~Zで始まる単語と、それを表す分かりやすい絵とともに紹介しています。例えば、

Aは、 Awareness (気付き) 

Bは、Breath(呼吸

Cは、Compassion(思いやり)

という具合でXYZまで。 ちなみに 、Yは Yoga ヨガ、Zは Zen 禅です。そして最後のページには What is mindfulness? として、

マインドフルでいる、っていうのは、今、この瞬間だけに注意を向けている、っていうこと。そうすると、心とからだが静かになって、平和や幸せを自分自身のなかに見出せるよ。
マインドフルネスは、散歩したり、呼吸したり、瞑想したりして実際にやってみることができるよ。
のように「マインドフル」でいるためのコツを、分かりやすい英語で教えてくれます。

マインドフルネスとは、脳のデトックス。 リラックスして、ただ「今、ここ」だけに意識を向けている状態。そんな心のあり方や、それを目指すためのプロセスのこと を言うようです。ストレスや考えていることに飲み込まれることなく、それをただ観察していく時間を持つことで精神的にも肉体的にも緊張が緩和されていくのだそうです。

絵本にあるアルファベットの頭文字で始まるキーワードをAから順番に思い浮かべるだけでも、マインドフルネスの世界に一歩近づくことができそうです。

今回の絵本が、大人のみなさんの好奇心をくすぐる きっかけ になりますように!

木村千穂さんの本

親子で楽しめる 絵本で英語をはじめる本
 

文:木村千穂
リリオブランコ英語教室を主宰。「一生楽しめる英語を身に付ける」をモットーに、英語絵本からはじめる英語、を提案している。年齢を問わず、教室に1500冊以上ある英語絵本の貸出をしながら多読のガイドをする、プライベートレッスンが好評。著書 『絵本で英語をはじめる本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

編集:増尾美恵子

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