「やらなくていいことは、やらない」TORAIZ式、必要十分かつ科学的なハードワーク

専属コンサルタントのサポートの下、1年で1000時間の学習を行うコーチング英会話「TORAIZ(トライズ)」を提供する、トライオン株式会社の三木代表を『ENGLISH JOURNAL』編集長が取材。1000時間をブレイクスルーの目安にする理由、さまざまな受講生のニーズ、映画を教材に使う利点など、1年後に「海外出張でプレゼンと質疑応答をこなせる英語力」を手に入れられる秘訣を探ります。

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「英語で何をしたいのか」目的から逆算せよ

TORAIZの掲げる「 1年1,000時間の英語学習を通じてブレイクスルーを起こす 」というスローガンは、アルクの通信講座「 1000時間ヒアリングマラソン 」の考え方と同じです。「アメリカ人が日本語を習得する目安は2,200時間」という米FSI(Foreign Service Institute, アメリカ国務省付属の語学研修機関)のデータを「逆もまた真なり」と解釈し、日本人は大学卒業までに1,200時間程度は英語学習をしているので、あと1,000時間でブレイクスルーが起こるはずだと考えたそう。

サービス開始から5年経ち、 修了生の英語の伸びからも、間違っていなかったことが証明されました 。1,000時間というハードさにもかかわらず、継続率が91.7%というところは驚異的で、専属コンサルタントのサポート力を感じます。

三木雄信(みき・たけのぶ)/トライオン株式会社代表取締役社長。1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱地所㈱を経てソフトバンク㈱に入社。27歳で同社社長室長に就任。孫正義氏の下で「Yahoo!BB事業」など担当する。大の苦手だった英会話もソフトバンク入社後に猛勉強。仕事に必要な英語だけを集中的に学習する独自のやり方で「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスター。2006年にはジャパン・フラッグシップ・プロジェクト㈱を設立し、同社代表取締役社長に就任、同年トライオン㈱を設立。2013年に英会話スクール事業に進出、2015年にはコーチング英会話『TORAIZ(トライズ)』を開始し、日本の英語教育を抜本的に変えていくことを目指している。『超高速 PDCA英語術(日本経済新聞出版社刊 )』他、著書多数。

受講生のニーズに細かく応える

受講生の職業は、会社員、医師、会計士、建築家、俳優、映画監督などさまざま。数百種類の教材をストックし、受講生のレベルや目的に最適な教材を選ぶそうです。

印象的だったのが、映画を教材にすること。医師なら『スーパーサイズ・ミー』、弁護士なら『ザ・ファーム』など、職業と内容が近い映画を選び、 6カ月で全登場人物のセリフをシャドーイングする と聞いてびっくり。

「2時間の映画で約2万ワードです。人間が1日中話をすると約2万ワードなんです。 必要な表現は一通り出てくるし、音の変化も網羅できます 」と三木さん。納得です。

やらなくていいことは、やらない

TORAIZは、 ライティング、リーディングの学習は基本的に行わない 方針。三木さん曰く「読む、書く、は数年後にはAIが完璧にやってくれると思うのでそこに時間やお金を投入するのはもったいない」とのこと。

発音については「 拍数とイントネーションだけ合っていれば、カタカナ英語でもいい 」とキッパリ。ソフトバンク孫社長の秘書を務めていた三木さん曰く、「孫さんはネイティブのような発音ではないけれど、拍数とイントネーションはしっかり押さえていて、スティーブ・ジョブズと交渉もしたし、トランプ大統領とも交流できる。もう、それで十分じゃないですか」。確かに……。

ゴールは「英語で目的を果たすこと」

1年間で141回もあるネイティブ講師とのレッスンで習得を目指すのは「 コミュニケーション・ストラテジー 」。相手の英語が聞き取れなくても、聞き返す、あなたの発言はこういうことですか?と確認する、などを通じて 目的を果たせるようになること をゴールにしています。これはまさにEJの方向性と同じ。

改めて「『英語を学ぶ』だけじゃなく、『英語で何をするのかが大事』」というメッセージを伝えていきたいと感じた取材になりました。

英語学習に科学的な裏付けを

語学研究所所長  西牧 健太氏

TORAIZで忘れてはならないのが、独自の 語学研究所 の存在です。所長を務める西牧さんは言語心理学を学んだ語学習得のプロフェッショナル。「日本人が英語を話せるようになるにはどうしたらいいのかをずっと考えてきました」と笑顔で語ってくれました。

受講生をサポートする科学的なフレームワーク

語学研究所では 受講生の英語学習を科学的に分析し、学習効率を最大化 することを目指しています。各受講生の学習履歴や英語力の変化をデータとして集積し、相関関係を分析。導き出された理論を学習アドバイスとして受講生に還元するという良い循環が生まれています。「科学的なフレームワークがあることで、受講生の方々の抱える問題を見つけやすくなりますし、自信を持って解決方法をご提案することができるようになるのです」と西牧さん。約60人いる日本人コンサルタントに対して研修を行い、語学研究所の知見をTORAIZ全体で共有しているそうです。

英語学習に関する研究は世界各国で行われていますが、「英語の知識は十分あるのに、話せない、聞けない」という日本人の事例を集めた研究分析はまだ多くありません。TORAIZの 語学研究所による研究は、日本の英語教育全体に貢献する ものだと感じました。これからも引き続き、注目させていただきます!

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取材:水島 潮 『ENGLISH JOURNAL』編集長      構成・文・撮影:株式会社 REGION

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