現役の会議通訳者が教える英語のプレゼンに自信がつく5つのルーティーンとは?

6月21日発売になった『英語で説明・プレゼン・発信ができるようになる5つのルーティン』。英語を人前で話す機会がある方のための、通訳者養成メソッドをベースにしたトレーニング本です。東京外語大の授業でも、現在、このメソッドを使ってのクラスがあり、多くの学生さんが学んでいます。本書を執筆された、東京外国語大学非常勤講師で、会議通訳者でもある池田和子さんにお話しを伺いました。

聞き手:池田さんは、ふだんは会議通訳者としてご活躍です。お仕事についてお話しください。

著者・池田和子さん:会議通訳者として、あらゆる分野での通訳を経験させていただいています。以前は、銀行員だったため、その流れで金融分野の仕事が多い時期もありましたが、最近は、法律関係の通訳の仕事が多い印象です。

国際会議で、世界を動かしている人達の発言を訳させていただくのは、会議通訳者としての醍醐味を感じますね。また、通訳の準備のため、いろいろな知識を得ることができて、それも自分にとってプラスになっていると思っています。本番では、発言者が言いたいことを、言葉の深部のニュアンスまでとらえ、再現できるように心がけています。特に好きなのは、スポーツ選手のハレの舞台である試合の直後の会見や、日本独自の文化を世界に発信する場での通訳です。

聞き手:通訳者としてのお仕事のかたわら、東京外国語大学でも教壇に立たれています。この『英語で説明・プレゼン・発信ができるようになる5つのルーティン』は、主にその授業をベースに誕生したそうですが、経緯を教えてください。

池田さん:ひとえに、教え子たちのお陰です。私は2002年から東京外国語大学で通訳者養成法を応用した演習の授業を受け持っています。通訳者を育てるのではなく、その演習法をベースに、英語のリスニング力やスピーキング力を上げるという授業です。

5つのルーティンというのは、この度、書籍化のお話しをいただき、改めて編み出したルールです。自分が通訳者になるために受けた訓練や、プロの通訳者になってから、自分が通訳の本番に向けて勉強するステップを考えて、整理し直して、授業でも学生に被験者として試してもらい、微調整をしつつ、このルーティンに行きつきました。

聞き手:どういった授業で、どういう学生さんたちが、この「5つのルーティン」で学ばれているのでしょうか

池田さん:東京外国語大学は世界諸地域の言語・文化・社会に関する高等教育の中心となる教育機関です。主専攻として28言語、それ以外の外国語を含めると81言語も学べる大学です。

私は英語専攻の学生はもちろんですが、その他の言語を学んでいる学生の英語の授業も担当しています。主に3-4年生で、中には通訳者志望の人もいますが、大半は将来、英語を使った仕事をしたいという学生が、実践的な英語を学ぶために受講しています。

そんな彼らでも、ルーティンに慣れるまでは、日→英の部分がうまくいかない人もいましたが、今は慣れて、第2章のプレゼンの課題も難なくこなしています。授業中、学生の声を録音してもらって、その音声ファイルを宿題で聞き返し、どういう部分が課題かを分析させます。私からは改善のための具体的にアドバイスをしています。

聞き手:「5つのルーティン」の中で、一番気を付けてほしいルーティンはありますか?

池田さん:ルーティン1の、日本語と英語での「音読」でしょうか。日本語で知らないこと、説明できないことは、英語でも言えないので、しっかり音読して、まずは情報を入れることが大前提です。さらにルーティン2の「重要ポイントをつなぐ」で、メモやスライドを頼りに、ルーティン1でインプットした知識が、本当に頭の中に入ってるかを確認します。

ルーティン1で、口だけでなんとなく音読していては、ルーティン2ができません。単語やフレーズや構文だけではなく、何を伝えるかというところに目を向け、口に出して何回も言っているうちに、知っている知識が、自動的に使える知識に変わっていきます。

聞き手:まじめにやろうとすると、かなりハードな演習だと思うのですが、5つのルーティンで学習を続けるコツについて教えてください。

池田さん:学生は、繰り返し練習することで、だんだん次のルーティンがうまくいくようになる、と言っています。確かに、録音したものを聞くと、例えば、ルーティン4の「1文ごとの通訳」がうまくいかないのは、ルーティン3の「リピーティング」が不完全だった、ということがよくあるようです。

授業中は集中を切らさないよう、ルーティン1~5の演習を、一気にがんばってやってくれています。ですが、読者の皆さんは、くじけそうになったら、またモチベーションを維持するためにも、いったん演習を離れて、気分転換をするのもいいと思いますよ。

聞き手:読者へのメッセージをお願いします。

池田さん:皆さんは、それぞれの理由や目的があって英語を学んでおられると思います。南北アメリカ大陸と日本で育ってきた私は、いつも太平洋に自分が浮かんでいるような、どこにも属さないような心細さを感じていました。また、英語も日本語も身につけるのに苦労してきました。でも、会議通訳者になり、初めて自分の育ち方、語学力がプラスに働いたと感じました。自分のためではなく、誰かのために自分が身につけた語学力を役立てることができたからです。皆さんもぜひ、まずはご自身の英語の発信力を上げて、皆さんの語学力を必要としている人たちのために、生かしてください。

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講師:池田和子(会議通訳者、東京外国語大学非常勤講師)

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日程:8月15日(19:00−20:30)

『英語で説明・プレゼン・発信ができるようになる5つのルーティン』の著者の池田和子先生が、この本を使ってできる英語力の強化法をお話しします。主に通訳者、通訳者を目指す方、英語教育関係者、英語学習者を対象としたオンラインセミナーです。

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池田和子
池田和子

上智大学外国語学部、比較文化学科卒業。モントレー国際大学大学院、会議通訳修士。コロンビア大学大学院、英語教授法修士。外国資金為替ディーラーを経て、1993年よりフリーランス会議通訳者・翻訳者。スポーツから国際会議まで幅の広い分野をこなす。2002年より東京外国語大学非常勤講師として、通訳講座および通訳訓練法を応用した英語講座を担当。2021年より早稲田大学大学院でも教える。

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