人生の一大事には誰しも緊張するもの。TOEICテストの受験でもそれは同じ、という人は多いでしょう。今回は「試験で己に勝つための秘法」を、TOEICスコアアップ200点請負人の Jay(ジェイ)こと早川幸治さんに教えていただきます。
スコアはどうやって決まるの?
緊張とは「失敗したらどうしよう」という不安と「成功するかも」という期待の間にあるドキドキ・ワクワクである。
そんな言葉があります。
聞いたことはないかもしれません。それもそのはず、今、私が作った言葉だからです。
でも、絶対成功するのであれば緊張しませんし、絶対失敗するという場合でも緊張しないでしょう。ちなみに、脳はドキドキとワクワクの違いを判断できないともいわれています。今回は、当日の緊張が足を引っ張る原因ではなく、実力を発揮するため程よいエネルギーになるためのお話です。
TOEIC L&Rテストのスコアはどのように決まるかご存じですか?知らない方も意外と多いので、「スコアがどのように決まるか」から確認しておきましょう。スポーツやゲームにおいて点の入り方が分からなければ上手にプレーできないように、TOEICにおいても点の入り方が分からなければ上手に受験できません。
TOEIC L&Rテストは、10~990点を振り分けるテストのため、易しい問題から難しい問題まで、さまざまなレベルの問題が混在しています。しかし、問題の難易度によって、配点が上がったり下がったりするわけではありません。あくまで、リスニング100問、リーディング100問それぞれの正解数によって決まります。
「ドラクエ」などのロールプレイングゲームでは、倒した敵のレベルに応じて、もらえる経験値が異なります。スライムよりもメタルスライムの方がはるかに高い経験値がもらえます。しかし、TOEICではあくまで、正解数に応じてスコアが決まります。よって、同じテストであれば、80問正解よりも81問正解の方がスコアが高くなるというシンプルな基準です。この正解数に対して複雑な計算をすることで、リスニング・リーディング共に5~495点のスケールの中でどの位置かを示すスコアが算出されます。
極めてシンプル!ベストスコアの取り方
正解数によってスコアが決まるため、1問でも多く正解を出すことがテスト当日にやるべきことです。そのために重要なのは、テスト当日の英語力を基準として、実力で解ける問題に確実に正解し、実力を超える問題は適当にマークをすることで、時間を浪費せずに最後まで解き終えることです。テスト中に分からない問題に悩んだからといって、正解を導き出せるわけではありません。テスト中の「悩む」は、ただの「停止」。TOEICは「走れメロス」の「邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王」ではありませんが、止まっている時間はありません。「涙の数だけ強くなれる♪」という歌詞がありますが、「正解の数だけスコアは増える♪」のです。
「全然勉強できなかった・・・」とか「もっとやっておけばよかった・・・」という後悔はあるかもしれませんが、当日を迎えた今、既に身に付いている実力で勝負すればよいのです。テスト当日までの努力は報われますが、テスト中の努力は報われません。今ある実力で解けるものを確実に正解し、実力を超えるものは適当でOKです。1問でも多く正解を増やすことを優先してください!
集中力ではなく「夢中力」
ミヒャエル・エンデの児童小説『はてしない物語』では、主人公のバスチアンが本の世界に吸い込まれていきます。皆さんも映画を見たり、本を読んだりしているときに、ストーリーに夢中になり時間を忘れて没頭したことがあると思います。そのときって、意外と疲れていませんよね?しかも、ぐっと集中している感覚もありませんよね?
まさにストーリーに入り込んで夢中になることで、集中力がいらなくなるのです。そのため、疲労感も少ないのです。学校の授業でもそうです。楽しい授業はあっという間に終わりますが、それは授業に集中しているのではなく、夢中になっているからです。
TOEICにおいても、ぜひ夢中になるために、テストに出てくる全てのシーンに対して、自分が関わる状況と捉えて聞いたり読んだりしてみてください。Part 2(応答問題)であれば、全て自分に対する質問や報告だと思って聞くことで、(A)から(C)のどれを答えれば相手が満足するのか、というコミュニケーション・ゲームに変わります。Part 3(会話問題)であれば、自分もその場にいて会話を聞いているという状況です。2人または3人のうちの誰かになりきってもいいでしょう。
Part 7も全て自分に宛てられた文面だと考えることで、「メンドクサイ」という思いが弱まり、「理解したい」という意識が発動します。単なる「テスト問題」を「自分宛てのもの」に認識を変えることで、無理やり集中しようとすることなく、『はてしない物語』のようにTOEICの問題冊子に入り込むことができます。でも、安心してください。TOEICは「はてしない物語」ではなく、たった(?)2時間で終わります。
知識問題で悩まない!
次の漢字を読んで10秒でなるべく多く正解してください。
宝籤 鎌鼬 然も 嘗て 纏める 翻って 凡そ 凸凹 蝸牛 西瓜 完璧 祝日
これらは、「知っている」と「知らない」に分かれ、「知らない」については「推測できる」と「全く見当がつかない」に分かれます。「知っている」に相当するものは一瞬で解答できます。「知らない」については一瞬考えた上で、推測できるものはすぐに出てきますし、全く見当がつかないものについては「停止」するだけです。「悩む」と「停止」をはっきりと分け、その停止時間をなるべく短くする必要があります。知らないもので停止してしまい、「祝日」を読む時間がなかったというのが最もモッタイナイ状態です。
ちなみに、正解は以下の通りです。
たからくじ かまいたち しかも かつて まとめる ひるがえって およそ でこぼこ/とつおう かたつむり すいか かんぺき しゅくじつ
TOEIC L&Rテストでいえば、Part 5が知識問題に相当します。Part 5は「知っている」か「知らない」かの二択です。知っていれば四択ではなく、迷わず一択です。「知らない」場合、推測できる場合はすぐに選んでください。「全く見当がつかない」場合も、停止することなく、すぐに適当に選んで次に進んでください。こうすることで、Part 7(読解問題)の長文を読む時間が確保できます。時間切れを防ぎ、実力で解ける問題に正解すればよいのです。
試験前に己に勝つ
最後に、あまり教えたくありませんが、せっかくなので私が試験当日に気合を入れるために行っている儀式をご紹介します。試験が始まる前に試験官が受験票を回収します。その際、受験票を切り離すようにアナウンスが流れます。「受験票AとBを切り離して・・・」というアナウンスが流れた瞬間、会場の誰よりも早く、誰よりも大きな音を立てて「ビリッ」と切り離すのです。どうしても緊張してしまうという方は、受験票自体を「あなたが持っている緊張だ」と思ってもよいでしょう。AとBを切り離すことによって、緊張を切り捨てるのです。
「孫子」の兵法の一節に「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」という言葉があります。「彼」とはTOEICのこと。「己」とは自分のこと。まさに、TOEICの兵法は「彼を知り己を知れば二百問殆からず」です。「孫子」との違いは、全勝ではなく実力で解けるものに確実に勝利すればよいのです。
ベストスコアに向けて、いざ出陣!
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