英語を学ぶ人にとって、永遠の課題とも言えるのが発音です。スピーキングだけでなく、リスニングでも発音の知識は必須。ぜひ読んでおきたい本を紹介します。
発音記号も音声もない「英語の発音」の本
こんにちは!ライターの尾野です。
ペラペラと流ちょうに英語を話す人を見ると、「いいなあ、自分もあんな風に話したい」と思わず憧れてしまいますよね。「たとえ発音が悪くても、文法的に正しければ英語は通じる」という意見もありますが、やはり発音がいいに越したことはありません。
「いかにも日本人」という感じのカタカナ英語を本物の英語に近づけるには、どうしたらいいのでしょうか?
発音記号を一つひとつマスターし、ネイティブの先生に矯正してもらって・・・というのが正攻法だと思いますが、時間もお金もない身にはなかなか難しいもの。
手っ取り早く英語の発音の全体像を 把握 したい人には、今回紹介する本『ピーター・バラカン式 英語発音ルール』がおすすめです。
その名の通り、英語の発音のルールを解説した本なのですが、ちょっと変わっています。舌の位置を示した口腔断面図や、いわゆる発音記号は全く出てきません。お手本の音声も付いていません。
やや辛口のエッセイ調の文章を読んでいくうちに、いつの間にか発音のコツがわかるという本 なのです。
本の冒頭には、著者のピーター・バラカンさんによる、こんな断り書きが。
日本人の英語の発音に何よりも危害を加えてきたカタカナを、本当は一切排除したかったのですが、日本人関係者全員の反対を押し切ることができなかったので、アルファベットの表記と併記することになりました。ただ、どうしても英語の音を表せないカタカナの場合は、色を薄く印刷していますので、なるべくなら無視していただきたいと思います。掲載した内容を「無視していただきたい」と書いてある本は初めて見ました。それに、「日本人関係者」の気持ちも分かります。どんなにいい本でも、やはり売れないとね・・・。
ともあれ、発音記号や音声CDはありませんが、この本には、バラカンさんの「こだわり」がぎっしり詰まっています。
「コロナウイルス」は英語でなんて言う?
思えば、今年もコロナとの闘いに明け暮れた1年でしたが、この「コロナウイルス」も日本語と英語の発音は全く違います。
本書によれば、英語での発音は「クロウナ・ヴァイラス」。赤字の部分がアクセントです。実際に口に出して言ってみると、かなりそれらしい感じになると思いませんか?
virus が「ウイルス」になるのは、日本語にはもともと「v」の音がないため。vをカタカナに置き換えようとすると、bやw、uになるそうです。この場合は、uが当てられ「ウイルス」になったのですね。
同じルールの例として挙げられているのが、vinyl。何だと思いますか?
これはなんと、「ビニール」のこと。「塩化ビニール」のビニール、「ビニール袋」のビニールです。これは、vの音にbを当ててしまった例ですね。
本書によれば、vinylの発音は「ヴァイナル」。これも口に出して言ってみると、vの音を体感できると思います。
そして、 「vの発音は、上の歯で下くちびるを軽く押さえるのがコツ」 とのこと。
こんな感じで、バラカンさんが解く発音のルールを意識しながら、口に出して言ってみると、かなり英語らしい発音ができます。
お金も谷も「伸ばさない」
もうひとつ、「なるほど」と思ったルールがこちら。 「語尾の-eyは[i]で、しかも短め」 です。
例えば、moneyは「マネー」ではなく「マニ」。語尾は伸ばしません。
valleyも「バレー」ではなく「ヴァリ」。IT産業の中心地、Silicon Valleyは、「シリコン・バレー」ではなく「シリクン・ヴァリ」となります。
monkeyは「マンキ」、テニスのvolleyは「ヴォリ」です。英語圏で「ボレー」といっても通じないとのこと。意識しながら口に出して言ってみて、ルールを丸ごと身に付けてしまいましょう。
本書では、こんな感じで英語の発音を44のルールに 整理 して解説しています。
どれも、 読んでから実際に口に出して言ってみると「なるほど!」と体感できるものばかり 。発音記号やお手本の音声に頼らなくても、英語の発音は磨けるんだなあと実感します。
知っておきたい、英語ネイティブスピーカーの本音
それにしても気になるのは、本書全体に、バラカンさんの静かないら立ちが感じられること。カタカナ英語や和製英語など、日本にあふれる間違った英語に対して、かなり思うところがあるようです。
そういえば、表紙のお写真もなんとなく表情が険しいような・・・。
どうもいわゆる「英語学習本」と勝手が違うぞと思い、 改めて バラカンさんのプロフィールをチェックしてみると、バラカンさんは音楽や放送関係の仕事をされている方で、いわゆる英語講師ではないのでした。
長年日本に住んでいる方なので、日本人英語に対する知識や理解はあっても、忖度(そんたく)しないのです。
そうであれば、「さあ、一緒に英語を頑張りましょう!」という雰囲気にならないのも、無理はないのかもしれません。 同時に 「私たちは、英語の先生に優しく励ましてもらうことに慣れ過ぎているのかも」とも思いました。
そういえば以前、外資系企業で活躍する日本人の方が、こう言っていました。
「日本人は、英語で仕事をするなんて大変だと思う かもしれない けれど、日本人の下手な英語に付き合わされるネイティブのほうも相当大変ですよ」
確かにその通り。英語講師や、日本人の英語に対して特別理解があるという人でなければ、「そろそろ、ちゃんとした英語を話してよ!」と思うのも自然なこと。もっと 厳しい 意見の人もいるかもしれませんよね。
そう考えると、 英語で仕事をする人、特にネイティブスピーカーと関わる人は、ぜひこの本をチェックしておきたいもの 。
バラカンさんは「小学生に読んでほしい」と繰り返し書いているのですが、小学生にはちょっと難しいかも・・・。しかし、親や先生が読んで、かみ砕いて話してあげれば、10年後、20年後の日本人の英語は大きく変わっているかもしれません。
集中すれば2~3時間で読めるので、まずは発音のところを声に出して読み、苦手な部分は繰り返し練習するのがおすすめ。
その後、英語を聞いたり話したりする中で気になる発音があれば、その都度、本書をチェックしてみるとよさそうです。
尾野七青子 都内某所で働く初老のOL兼ライター。
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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