今ある英語力のままで、スピーキング能力を最大限に高める方法

イングリッシュ・ドクター(英語学習のお医者さん)こと西澤ロイさん。連載「英語で自在に表現するための日本語ほぐし法」(全3回)では、英語を使わない英会話トレーニング法を使って、あなたの英語学習を妨げている「英語病」を徹底治療します!今回は、「言いたいことを英語で表現できない 原因 」を掘り下げます。

英会話が苦手な人に欠けている「たった1つの力」とは?

英会話がうまくできないと思ってしまっている人には、 とあるスキル が欠けてしまっているケースが非常に多くあります。このために、英会話に挑戦しても言いたいことをうまく話せず、「私は単語や表現の知識が足りないんだ・・・」などと勘違いしてしまうのです。

そう、これは勘違いであり、私が 「アイキャント症候群」 と呼んでいる英語病の症状の1つに過ぎません。

前回の記事 でお伝えしましたように、皆さんにはもう、十分な英語力が備わっています。英語力を高めようとするのではなく、「今ある英語力をどう生かしていこうか?」という視点に立つことが大切なのでしたね。

ej.alc.co.jp

そこで欠けてしまっているスキルとは、 「すでに知っている単語で表現する力」 です。

知っている単語で表現することが欠かせない

英語の初心者であっても、中級~上級者であっても、共通する1つの原則があります。それは、 「知っている単語で表現するしかない」 ということ――。

当たり前のことに思えるかもしれませんが、それができていない人が 「自分は英語が話せない」と思ってしまう のです( 前回の記事 でお伝えしました通り、あなたの英語力はすでに相当高いのです)。

上級者が英語をしゃべっているのを見ると、ボキャブラリーが豊富だから言いたいことが言えているように見えるかもしれません。初級者であれば、知っている単語はそこまでは多くないですから、「言えないことがたくさんある」と感じるでしょう。

しかしそれでも、 知っている単語の範囲でしゃべろうとすることが重要であり、レベルに関わらず、それしかできない のです。

ところが、ここで「私は単語を知らないからしゃべれない」と言って、英会話を避けてしまう日本人が大勢います。そして、単語集などを買ってきて覚えようとするのです。

でも、冷静に考えてみてください。

すでに知っている英単語が結構あるのに、それを使ってしゃべれないのです。そんな人が、さらに単語を覚えることで、なぜしゃべれるようになるのでしょうか?

本当に必要なものは、「すでに知っている単語を使って話せるようになる方法論」と「そのトレーニング」です。ただ単語を覚え、ボキャブラリーを増やしても、それでは 「知識肥満症」 から抜け出すことは困難です。

日本語の話し方を解体せよ!

では、すでに知っている単語を使って英語がせるようになるためには、いったい何をすべきなのでしょうか?

イングリッシュ・ドクターとして私がおすすめする方法は、 「日本語の話し方を解体する」 ことです。

別の表現をするなら、 「頭の中にある日本語をほぐす」 こと――。それが、本連載でお伝えする「英語を使わない英会話トレーニング」のSTEP 2に当たります。

英語が話せないと思い込んでいる多くの学習者は、「英語は難しい」と思ってしまっています。しかし、実はそれは正しくありません。

本当は、難しいのは英語ではなく、皆さんの頭の中にある「日本語」だったのです。

「国際交流の仕事をしています」を英語で言えますか?

例えば、「私は国際交流の仕事をしています」という1文を、英語で表現できますか?

ここで多くの人がやってしまうのが、「国際交流」に当たる英語表現を探すことです。辞書を引けば international exchange といった表現が出てくるでしょうが、この時点ですでに、自分の知っている単語で話そうとしていないことにお気付きでしょうか。

これは英語病であり、 「アダルトトーク症候群」 と私は呼んでいます。日本語において、「国際交流」は大人らしい表現ではありますが、言葉として難しいのです。

前回もお伝えしました 通り、英語の日常会話で使われる単語の8割は、わずか1,000単語程度の中学英語です。つまり、「国際交流」がどういうことなのか、もっと簡単な言葉で「ほぐす」ことが大切なのです。

例えば「学生を海外に連れていく」のであれば、

We take students to foreign countries.

学生を外国に連れていきます。 

と言えるでしょう。対象者や行き先が毎年決まっているのであれば、もっと 具体的に
We take high school students to Taiwan every year.

毎年、高校生を台湾に連れていきます。

などのように言うこともできるでしょう。

こうやって 具体的に 考えてみると、「国際交流」という言葉がいかに抽象的だったか、おわかりいただけることでしょう。

まずは日本語を具体的で簡単な言葉にほぐすことで、誰でも知っているような中学英語で表現できる のです。

模範解答の英語を探してはいけない

また、多くの人が無意識にやってしまうのが、模範解答的な「正しい英語表現」を探すことです。例えば、「私は東京の郊外に住んでいます」と言いたいとき、英語でどのように表現すればよいでしょうか?

ここで「『郊外』ってなんて言えば・・・?」と疑問に思ってしまう人が多いでしょう。何通りかの表現がありますが、ウェブ検索をすると、例えば suburb(s) という単語を使った英文が出てきます。

I live in the suburbs of Tokyo.

私は東京の郊外に住んでいます。

そしてここで、in the suburbs of ~という表現を暗記しようとする人が後を絶ちません。これも英語病であり、私は 「オンリーアンサー症」 と呼んでいます。

英語が苦手な人は、無意識のうちに、以下のように思ってしまっているケースが多いのです。 「正解となる英語」がどこかに存在し、それを暗記することが英語学習だ と。

おそらく、学校でそのような英語の指導を受けてしまったことが 原因 でしょう。そのような受験英語からは、ぜひ抜け出してください。 英語はコミュニケーションのツールであり、自分の言葉で、言いたいことを好きに表現すべきもの なのですから。

もし「郊外」に当たる英語を知らなければ、その表現にこだわる必要はありません。これは○×で評価されるテストではありませんから、「郊外」を正確に表現する必要性自体、もはやないのです。

えば、

I live near Tokyo.

京の近くに住んでいます。

と表現するのも1つの手でしょう。また、郊外であっても東京都内なのですから、
I live in Tokyo.

東京に住んでいます。

と表現したってなんの問題もないはずです。

「正しさ」はあなたの中にある

講座で英作文の問題を出すと、参加者の方がよく「これで合っていますか?」「これで正しいですか?」などと質問をしてきます。しかし私は、それには答えず、逆に質問を返すことにしています。

「それがあなたの言いたいことですか?」と。

学校で教わる英語には、「間違い」が存在したかもしれません。でもそれは、「英文法」という狭い世界においての正しさに過ぎないのです。

現実世界で必要なのは、「コミュニケーションとしての英語」です。コミュニケーションにおいて大切なのは「意味が伝わること」ですから、「伝えようとする姿勢」こそが欠かせません。

そのときに、誰かが教えてくれて暗記をした「正解となる英語表現」は、ほとんど役に立たないでしょう。「えーと、○○って何だったっけ・・・?」と思い出せないケースが多いでしょうし、思い出せたところで、自分の言葉ではない「借り物の表現」に過ぎないからです。

重要なのは、自分の伝えたいことを、自分の言葉で表現すること――。 だからこそ、自分の頭の中にある日本語をほぐし、自分の知っている単語や表現で言い表せることが大切なのです。

少しくらい文法が間違っていようが、カタコト交じりの体当たり英語だろうが、英語の巧拙は全く関係ありません。 あなたの気持ちが乗った、生きた言葉は、相手も理解しようと努めてくれるはず です。

皆さんは普段、日本語で会話をする時に、自分の言葉で話していますよね。「正解となる表現」を探してしゃべったりはしていないはずです。

英語でもぜひ同じことをしてください。そうすることで、英語においてもの通ったコミュニケーションとなるでしょう。

英語学習者の皆さんがコミュニケーションのツールとして英語を活用され、「皆さんにとって正しいこと」、つまり、「自分が言いたいこと」を英語でも、自分の言葉でどんどん表現されていくことを私は応援しています。

★映画やアニメを通じて英語を学ぶためのおススメ参考書3選はこちら!

西澤ロイさんの本

▼これまでの英語学習を根本から覆す画期的な英語学習法を 提案する ベストセラー『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!』

英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!
  • 作者: 西澤ロイ
  • 発売日: 2020/08/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
▼西澤ロイさんの人気連載が電子書籍に!書き下ろしも豊富に追加。▼「話す」「聞く」「読む」「書く」という4技能 に関して 、無理なく上達できるやり方を解説したロングセラー『頑張らない英語学習法』
頑張らない英語学習法
  • 作者: 西澤 ロイ
  • 発売日: 2010/04/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

西澤ロイ イングリッシュ・ドクター TM。英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんなふうに英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、「TOEIC L&Rテスト最強の根本対策」シリーズ(実務教育出版)など、計10冊で累計15万部を突破。メディア出演多数。「西澤ロイの頑張らない英語」の他、コミュニティFMにてレギュラーを2本オンエア中。
公式HP: https://english-doctor.co.jp/
YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/user/990english

【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。

語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発

  • スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
  • 制限時間は6秒!瞬間発話力が鍛えられる!
  • 英会話教室の【20倍】の発話量で学べる!

SERIES連載

2024 11
NEW BOOK
おすすめ新刊
名作に学ぶ人生を切り拓く教訓50
詳しく見る