日本に在住して18年。北九州市立大学准教授であり、言語学者でもあるアメリカ人のアンちゃんが、英語に訳しにくいオノマトペを題材に例文や英訳ポイントを紹介します。「あの日本語、英語でどう訳す?」いろいろな表現を一緒に考えてみましょう。
今日のテーマ「擬音語」
オノマトペとは、「ドキドキ」「わくわく」など音や声、状態や動きなどを音で表した語のことです。前回、オノマトペは下の5つのカテゴリーに分けられるとお伝えしました。ちょっと復習です。
- 擬声語(動物と人間が出す音)
- 擬音語(自然と物が出す音)
- 擬態語(状態を表す音)
- 擬容語(動きを表す音)
- 擬情語(感情を表す音)
日本語のオノマトペが、このようにカテゴリーに分かれていることはバリ面白い!英語のオノマトペはこんなふうに分類しません。おそらく、日本語ほど単語の数がないからだと思います。
日本語のオノマトペの数はハンパないから、すべてを英語に訳すことができません。でも、それはオノマトペ以外の言葉にも言えることで、日本語に訳せない英単語は山ほどあります。それについては後日の記事に書くとして、今回は「擬音語」について解説します。
多くの擬音語は、英語のオノマトペに置き換えるのは難しいけれど、どんなふうに表したらいいか考えてみるバイ!さて、始めよう!
1. 雨がざあざあ降る(pour)
英語には「ざあざあ」を表すオノマトペはありませんが、このニュアンスを表現することはできます。
It’s pouring down rain.It’s pouring.It’s a downpour.日本語の「ざあざあ(と)」は副詞です。英語ではそういう副詞がありませんので、「激しく降る」という意味の動詞 pour を使うことが多いです。
あとは、
It’s raining cats and dogs!という言い方もあります。
「犬と猫がざあざあ降っている!」ではないですよ(笑)。 これで、「雨がざあざあ降る」「土砂降りの雨」という意味 なのです。
直訳したらバリウケるやろ?なんでこんな表現が生まれたのかは、いろいろな説があるけど、どれも確実ではありません。ただ、このフレーズが人気になったのは、1738年頃だったそうです。作家のジョナサン・スウィフト氏が、著書に “It will rain cats and dogs.”という表現を使って、それからはやり出したそうです。言葉って面白い!
clash , crash, clank, bang )">2. 皿がガチャンと割れる( clash , crash, clank, bang )
「皿がガチャンと割れる」などのガチャンも、当てはまる英語のオノマトペはありませんが、 clash を使います。
There was a loud clashing sound when she dropped the plate.彼女が落とした皿がガチャンと割れた。clank はたいてい、金属が出す音に使います。例えば、
When I dropped the frying pan, it clanked against the table.落としたフライパンが、テーブルにガチャンとぶつかった。bang は銃、花火などが出す音に使い、結構うるさい音を示す単語で、「ガチャン」より「バン!」が近いです。
He banged loudly on the door.彼はドアをバン!と叩いた。
3. 雷がゴロゴロ鳴る(clap of thunder)
英語では、稲妻は lightning、雷は thunder と言います。よくセットで thunder and lightning と使われます。
「雷がゴロゴロと鳴る」と言いたいときは、 a loud clap of thunder と言います。例えば、
There was a loud clap of thunder that scared my kids.雷がゴロゴロと鳴り、子どもがとても怖がった。(子どもがおびえるほどの雷鳴があった。)a loud clap of thunder は、雷が1回だけ鳴ったときに使います。「1日中ゴロゴロ鳴っている」と言いたいときは、名詞の thunder ではなく、 動詞のthunder(雷が鳴る)を使い、
It has been thundering loudly all day long.と言います。
ちなみに 、空腹でおなかがゴロゴロ鳴っているときには、
My stomach is growling.My stomach is grumbling.と言います。腹痛の場合は、My stomach is gurgling. が良いでしょう。
4. 風で窓がカタカタ鳴る(rattle)
「カタカタと鳴る」を英語で表したいときには、rattle を使うといいと思います。
The window is rattling in the wind.風で窓がカタカタと鳴る。
5. ボールをカキーンと打つ(ping)
この記事のおかげで、どんなに擬音語が難しいかということに、 改めて 気付きました。
特に、ボールをバットで打つ表現をいろいろ調べていたら、 金属バットと木製バットで打つときで、英語の音の表現が違う ことに、生まれて初めて気付いたバイ!
結果、金属のバットでボールを打つときの音に近い英語は ping で、木のバットのときは、crack がいいと思います。
There is no sound I like better than hearing the crack of the bat.バットでボールをカキーンと打つ音ほど好きな音はありません。
The ball pinged of the bat.ボールをカキーンと打った。
6. 小銭がじゃらじゃらする(jingle, jangle)
まず、英語の jingle と jangle ってかわいくない?日本語の「夏期休暇」と同じくらい響きがかわいくて好き!とにかく、「じゃらじゃら」を英語で表したいときには、jingle、 jangle、clink、clank と言います。例文を見てみましょう。
The coins are jingling in his pocket.彼のポケットで小銭がじゃらじゃらしている。
He is wearing so many kinds of bling *1 , that it clinks around when he walks.彼はアクセサリーを付けすぎて、歩くとじゃらじゃらする。
7. ガタンゴトンと電車が走る(rumble)
日本人はマジ電車が好きやん!だって、電車専用のオノマトペがあるやろう?英語でrumble という動詞があるけど、rumble は電車以外に、飛行機や車などにも使います。
The train rumbled along the tracks.ガタンゴトンと電車が線路を走る。
8. 鍋がぐつぐつ煮える(bubbling up)
英語ではあまりこういう表現はしないけど、する場合は次のように言います。
That bubbling hot pot looks so delicious!ぐつぐつ煮込んだ鍋がおいしそう。
9. 目覚ましがピピッと鳴る(beep)
英語で「ピピッと鳴る」と表したいときは、beep が一番いいです。また、「(目覚まし時計などが)鳴る」という意味の、 go off もいいですね。
The alarm on my smartphone was beeping for three minutes.スマホのアラームが3分間ピピッと鳴り続けた。
目覚まし時計が8時にピピッと鳴った。 My alarm went off at 8 a.m.けれど、鳥が「ピーピーと鳴く」ときの表現は違います。
The bird is chirping.と言います。
wring )">10. 布巾、雑巾をぎゅっと絞る(squeeze, wring )
「ぎゅっと」に当てはまる英語はないかも!と思ったけど、squeeze、 wring を思い付きました。
Make sure you squeeze/ wring all the water out of the dish towel.布巾をぎゅっと絞ってね!ハグするときも、「ぎゅっとする」と言うよね?この場合、 hug tightly を使います。
My mother hugged me tightly.お母さんが私をぎゅっとハグした。日本ではあまり知られていないと思うけど、こんな言い方もあります。
Come here! I wanna give you a big squeeze . おいで!ぎゅっとハグしたい!ハグの習慣がない日本人は、この文を使うことが 少ない かもしれない けれど、ハグが大好きな国もたくさんあるから、意味を知っておくといいよ!
まとめ
オノマトペは本当に難しいよね。日本人は小さいころからずっと使っているから、当たり前のように会話に出てくるけど、日本語学習者にとって当たり前ではありません。他の言葉はわからないけど、日本語ほどのオノマトペは英語に絶対にないバイ!こういうのは、覚えるしかないから、勉強して、覚えて、すぐ使ってみることが一番いいよね!次回もお楽しみに!
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アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語で綴るブログ「 アンちゃんから見るニッポン 」が人気。 Facebookページ も 更新 中!
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