英語が苦手な人も、勉強が嫌いな人も、ひたすらたくさん勉強すれば上手になると信じていませんか?そんなあなたにおすすめなのが、連載「イングリッシュ・ドクター 西澤ロイの英語お悩み診療所」。最終回は、英語学習によくある病気「英語骨粗しょう症」の治療法をお教えします。
リーディングに必要なのはボキャブラリーか文法力か?
「英語は読めるけど話せない」と感じる人が多い反面、例えばニュースのような難しい英文や、数十ページにわたる英語の文章を読むとなると、後ずさりをしてしまう人も多いのではないでしょうか。
今回のテーマは「リーディング力」です。長文が読めるようになりたい場合に、あなただったら次のどの学習方法を取りますか?
「多読」は中~上級者向け
「多読」という言葉があるように、英文をたくさん読むのも大切なことです。日本人は「英語に関するインプット量が絶対的に足りていない」と 指摘 する人もいますし、実際にその通りだと思います。
ただし 初級者の方が、いきなり【a】のように「たくさん読むことで慣れよう」とするのは、無茶だと言わざるを得ません。「ノウハウ(know-how)」という言葉が「やり方を知っている」ことを意味するように、慣れる前に「やり方」、つまり最低限の読み方やコツを知っておく必要があるのです。
また、「多読」を本当の意味で生かせるのは、ある程度の知識と経験を兼ね備えた中、上級者です。初級者の方が大量にインプットをするのは、まるで大量の水を小さなコップですくおうとするようなもの――。大部分をすくえないまま、結局、 捨てる ことになってしまいます。
また、【b】や【c】のように、ボキャブラリーや文法力を 強化 しようとする人もかなり多いと思います。 ただし 、ただ英単語を覚えたり、文法の勉強をしたりしても、リーディング力につながらないケースが多く、注意が必要です。
その 原因 を、私は 「英語骨粗しょう症」 という英語病に分類しています。
ボキャブラリーが最も重要だと思っていませんか?
もちろん、ボキャブラリーは重要ですし、多いに越したことはありません。しかし、英文を読むのに時間がかかったり、難しい英文が読めなかったりする理由は、ボキャブラリーが 少ない ことではないのです。
英文の意味を理解するときに、単語の意味よりも優先しなければいけないものがあります。それは品詞や文型などの「文構造」です。つまり、必要なのは「英語の骨格」をつかめるだけの文法力なのです。
次の英文を見てください(英文および図は『 イングリッシュ・ドクターのTOEICRL&Rテスト最強の根本対策 PART5 』(実務教育出版)より引用)。
The company which has provided credit to their customers for over decades can no longer do so due to its financial condition caused by the recent economic stagnation in Europe.あえて難易度の高い英文をお見せしましたが、下の図のように文構造をつかむことが大切です。
』(実務教育出版)より引用)">
英文の中で「骨」に当たるのが、下線部の「名詞」です。また、語句の修飾関係を点線矢印が表しています。 そもそも 英文は、名詞を並べ、つなげていくことによって作られます。そのときに、文の「主要な骨格を構成する骨」もあれば、重要度の低い「小骨」もあります。
上記の英文において、主要な骨格として残るのは“The company can no longer do so .”だけで、それ以外はすべて修飾語にすぎません。
ここで必要となるのが 小骨をうまく取り除き、主要な骨格をつかむスキル なのです。このスキルが弱いと、いくらたくさん英文を読んでボキャブラリーを増やしても、リーディング力そのものが高まりません。そんな状態が「英語骨粗しょう症」なのです。
この症状の方は、知っている単語の意味を並べて、全体の意味を推測していたりします。そのような読み方をしていては、いつまでも「なんとなく」でしか英文が読めません。ボキャブラリーよりも 先に 、文法力が必要なのです。
文法知識をただ増やしてもダメ
ただし 、文法力が必要だからといって、【c】のように文法の本を1冊やるような学習方法もあまりおすすめできません。なぜなら、文法書で仕入れた知識を、英文を読む際に実際に活用できるとは限らない(むしろ、使えていないケースが圧倒的に多い)からです。
文法の本は、ぜひ 辞書と同じような使い方 をしてください。英文を読んでいて、分からないところがあったときに、その文法項目について調べ、理解を深めるのです。そうやって、実際に英文を読むときに使える知識に昇華させなければ、 いくら文法を学んだところでリーディング力にはつながりません。
その意味で、文法を学んでリーディング力をつけることは、独学でやるのはなかなか難しいと言えます。英語を学んでいると必ず出てくるのが疑問点であり、その都度しっかりと解消するのも大切なことです。文法的なことを教えてもらえる友人や先生などがいるとよいですね。
まずは文型を押さえよう
リーディング力を高めるには、まず「品詞(の分類)」と「文型」を押さえるところから始めましょう。この辺りの文法に苦手意識が強い人も多いかもしれません。しかし、学校で習うということは、それだけ重要だからなのです。
次の例文をご覧ください。
That sounds great.それは素晴らしいですね。このような英文を見たときに、“That sounds great.”の意味を「それは素晴らしい」だと暗記してしまう人が少なくありません。
しかし本来、英文を読む際には、 意味の前に文の構造をつかむべき です。また、全体の意味は暗記するのではなく、自力で解釈すべきものなのです。
このために、次の3つのステップを踏む必要があります。
ステップ1 単語の品詞と意味を押さえる
that は「名詞」で「それ(指をさすイメージ)」。sound は「動詞」で「聞こえる」。sounds となっているのは、現在形で三人称単数で s が付いているため。great は「形容詞」で「すごい、素晴らしい(good を強調した語)」。
ステップ2 文型を押さえる
まず主語(S)が that であり、動詞(V)が sound です。動詞の後ろにある形容詞 great が「補語(C)」に分類され、“That sounds great.”は SVC(第2文型)に当たります。この文型で重要なことは、S=C という関係が成り立つことです。つまり、sound は「S と C がイコールに聞こえる」という意味を持つことになります。
ステップ3 文の意味を解釈する
“That sounds great.”は、文字通りには「that=great に聞こえる(それ=すばらしい、というように聞こえる)」ことを意味しています。英文からその意味をしっかりと解釈します。
これが「英語を読む」 作業 です。いきなり意味を考えたり、提示された日本語訳をうのみにしたりするのではなく、 自力でしっかりと意味を解釈する ことが大切なのです。
今回の"処方箋"
リーディング力を高めるために必要な、英語の読み方のポイントを次にまとめます。
ステップ1 単語の品詞と意味を押さえるステップ2 文型を押さえるステップ3 文の意味を解釈する英文がスラスラ読めなかったり、難しい英文になると尻込みしたりしてしまうのは、英文の構造をつかむスキルが弱いことが 原因 なのです。ですからまずは、英文の骨格(「構造文法」と言います)を意識しながら読むようにしましょう。
文型などの文型に関する知識を見直したい場合には、拙書『 頑張らない英文法 』(あさ出版)をどうぞ。
また、構造文法への理解を本格的に深め、「英語骨粗しょう症」を根本治療するトレーニングをしたい場合には、『 イングリッシュ・ドクターのTOEICRL&Rテスト最強の根本対策 PART5 』(実務教育出版)を使ってみてください。
なお、先ほどもお伝えした通り、ボキャブラリーは多いに越したことはありません。ですから増やしたいとお感じならばぜひ増やしていくとよいでしょう。
なお、「頻出単語集」のような書籍が世の中にはたくさんありますが、 ボキャブラリーが最もよく身につくのは、実際に英文の中で出合ったとき です。英文に登場した知らなかった単語をしっかりと調べ、きちんとメモして覚えていくとよいでしょう。
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執筆:西澤ロイ
イングリッシュ・ドクター(英語のお医者さん)。
英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない 原因 である「英語病」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんな風に英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、「TOEIC L&Rテスト最強の根本対策」シリーズ(実務教育出版)など、計9冊で累計15万部を突破。メディア出演多数。木8(木曜夜8時)の知性を育む爆笑系(?)教育ラジオ番組「めざせ!スキ度UP」の他、コミュニティFMにてレギュラー番組・コーナーを4本オンエア中。
公式HP: https://english-doctor.co.jp/
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