同時通訳者・横山カズに聞く!発信力を磨く英語の発想法

今年こそ、もっと英語で話したい。英語日記もつけたい。そんなあなたに、英語を話したり書いたりするときに役立つ「発想法」を伝授します。教えてくれるのは、同時通訳者・翻訳者の横山カズさん。毎日続けていけば、辞書を引いたり、自動翻訳に頼ったりしなくても、自分の力で英語を発信できるようになるはず!

受動態は能動態に言い換える

日本語の日常会話では、「髪型を変えたら褒められた」「友だちから風邪をうつされた」などの受動態をよく使いますね。しかし、そのまま英訳するのはなかなか難しく、混乱してしまいます。

英語を話したり書いたりするときは、できるだけ受動態を避ける のがコツです。

例えば、「あの人はみんなに好かれているなあ」という文を英訳するときは、受動態ではなく能動態にしましょう。

まず、次のように発想を変えてみます。

あの人はみんなに好かれている。

みんながあの人を好きだ。

すると次のような英文になりますね。
Everyone likes him.

あの人はみんなに好かれている。

こうしてみると簡単ですね!その上、この方が英語らしい表現なのです。

描写するより命令形を使う

お母さんが子どもに向かって、「顔が汚れているよ」「シャツがズボンからはみ出ているよ」と言ったとき、お母さんは何を伝えたいのでしょう?子どもの状態を描写したいわけではありませんね。「顔を洗いなさい」「シャツのすそをしまいなさい」と言いたいのです。

日本語では描写するだけでも意図が伝わりますが、そのまま英語に直訳すると上手く伝わらないことがあります。

えば、口をぽかんと開けてテレビを見ている子どもに、お母さんが「口、開いてるよ」と言ったとします。

直訳すれば、Your mouth is open. ですが、お母さんの意図をもっと明確にしましょう。要は口を閉めてほしいわけですから、こうなります。

Close your mouth.

口、開いてるよ。

また、後輩や 同僚 にちょっとふざけて「まだまだ青いね」と言いたいときはどうでしょう?

直訳すれば、You are still green. ですが、これもおかしな感じですね。

意図を 明確にする と、「まだまだ初心者っぽいけどもっと成長してね」ということなので、次のようになります。

Grow up!

まだまだ青いね。

状態を描写するより命令形を使ったほうが、より意図を明確に伝えられる ケースは結構あります。

「うまく意図が伝わらないな」と感じたら、描写するより命令形を使ってみましょう。

無生物を主語にする

「酒の勢いで言ってしまった」。これを英語で表現したいときはどうしますか?「私はたくさんお酒を飲んだ。そしてミスしてしまった」とかみ砕いてから英訳する方法もありますが、ぜひ覚えておいてほしいのが無生物を主語にする方法です。

「あんなことを言ったのは私じゃない。お酒がしゃべったんです」と考えると、次のように表現できます。

It's the wine talking.

の勢いで……。

wine の部分は、もちろん  beer でもsakeでもOKです。簡単な表現なのに臨場感が出てきたと思いませんか?

普段から無生物を主語にしていると、英語らしい表現に常に意識が向く ようになり、英語のセンスが自然に養成されます。

さて、無生物を主語にしてもう一つ。

The sweets are screaming, "Eat me!!"

どうしても甘いものが止められない!

コンビニやカフェで、大声で呼びかけられて困った人も多いのでは?

主語になるのは、飲み物や食べ物ばかりではありません。こんな表現もできます。

Logic cries.

理屈じゃないんだ!

「あのドラマは人気がある」「あの俳優は人気がある」などの表現を英語で言いたいときには、they や everyone などの代名詞を主語にするとうまくいきます。最初に出てきた「受動態は能動態に言い換えよう」と同じ考え方です。
They like it.

Everyone likes it.

そのドラマ、人気だよね。

They like him.

Everyone likes him.

あの人、人気があるよね。

「無生物を主語にすると、簡単で生き生きした表現になる」 と覚えておいてください。 they や everyone などを主語にした文も作ってみましょう。

英語日記やSNSでよく使う表現をチェック

ではここで、英語日記やSNSでよく使う表現をチェックしておきましょう。発想法を覚えておけば、応用がききます。

プチ贅沢

仕事を頑張ったからちょっとした贅沢をした」「自分にご褒美をあげた」。そんなときに使う「プチ贅沢」は、どう表現すればいいのでしょう。

「自分自身にごちそうする、おごる」と考え、 treat を使うと次のような表現になります。

I treated myself and  had dinner at Marriot Hotel.

マリオットホテルのディナーでプチ贅沢しちゃった。

I treated myself to the spa and dinner.

スパとディナーでプチ贅沢した。

「何かをした」という英語の後に as a little treat for とつなげて、「プチ贅沢」を表現することもできます。
I bought myself some lychees as a little treat for myself .

プチ贅沢でライチを買った。

have a little luxury も使ってみましょう。
We had a little luxury to buy a bottle of classy wine.

(高級なワインを一本買ってプチ贅沢をした。)

誰得(だれとく)

取り組む 意義が感じられない仕事を振り当てられたときなど、つい口からでてしまう「これって誰得なの?」。

かみ砕いて言えば「誰が得をするのか」となりますが、話し手の意図としては「誰も得をしない」「無意味」という批判的なニュアンスが感じられますね。

英語ではどう言えばいいのでしょうか。

まず、無生物を主語にする方法で考えてみましょう。

It is good for nobody.

誰にとっても役に立たない。

It is meaningless.

It is useless.

それ、無意味だよ。

代名詞を主語にするとどうなるでしょう?「誰も~ない」なので、theyではなくnobodyを使います。 
Nobody benefits from it.

誰にとっても得るものがない。

無限ピーマン

昨年の話になりますが、Twitterなどで「無限ピーマン」というレシピを見かけた人も多いのでは?

「作り方は簡単なのに、美味しくて食べるのをやめられないピーマンの料理」のことですね。これを英語で言ってみましょう。

「ドラッグみたいに止められない」という点を強調したいなら、こんな表現ができます。

This dish is just addictive.

この料理、中性がある。

単に delicious というよりも「無限」な感じが出ていると思いませんか。just を super に置き換えても使えます。

こんな表現もあります。

I can't get enough of this dish.

いくら食べても足りないくらいおいしい!

こちらは料理だけでなく、趣味や恋人にも使用可能です。
I can't get enough of you.

君とずーっと一緒にいたい。

感情を吐き出すように、こう言ってみてもいいですね。
Can't get enough!!
もちろん、英語学習についても使えますよ!

まとめ

今回は、「受動態は能動態に言い換える」「描写するより命令形を使う」「無生物を主語にする」という3つの発想法を紹介しました。何よりも実際に使ってみることが大事です。毎日の英会話や英語日記のなかで、どんどん試してみてください!

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文:横山カズ  @KAZ_TheNatural
関西外国語大学・外国語学部スペイン語学科卒。同時通訳者(JAL)、翻訳家、英語講師。高田学苑英語科特別顧問。エスコラピオス学園 海星中・高等学校英語科特別顧問。学びエイド、リクルート・スタディサプリENGLISH講師。英語を日本国内で独学し、航空・IT・医療・環境・機械・国際関係・文学など多分野で同時通訳者として活躍中。JAL(日本航空)グループ、楽天株式会社では英語力向上と社内公用語化に貢献。「英語4技能」・英語スピーキングのエキスパートとして日本全国で授業と講演を行っている。『スピーキングのための音読総演習』(桐原書店)、『英語に好かれるとっておきの方法~4技能を身につける~』(岩波ジュニア新書)、『おもてなし純ジャパENGLISH』(講談社)、『最強の英語独習メソッド パワー音読入門』(アルク)など。ジパングマネジメント株式会社・文化人枠 所属

編集:川浦奈遠子

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