英語力を効果的にアップするには、英語で創作活動を行うのがおすすめ。そして、英語創作活動の入り口として最適なのが、短くて制約の 少ない 川柳なのだそうです。アメリカ文学の研究や音楽活動を通じて、言葉で表現するための審美眼を磨いた、筑波大学の河田英介先生に、詳しく話を伺いましょう。
河田英介(かわだ えいすけ)
筑波大学人文社会系助教。コロンビア大学教養学部卒、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程 単位 取得 退学。研究分野はアメリカ文学、批評理論、美学・文体論。日本ヘミングウェイ協会運営委員・資料室長。オルタナパンクロックバンド CATSUOMATICDEATH でギター・ボーカルを担当し、国内外で活動する。
英語学習の原点は書くこと。特に「創作」がおすすめ
英語力を付けるには、どんな学習がいいでしょうか。
河田 言語を学ぶ原点は書くこと だと思います。音楽は楽器を実際に演奏してみて、曲の良さや魅力がわかるように、英語を習得したい人も、実際に英語を書いて表現してみると力がつきます。
書くことで、読み方も変わってきます。書くことと読むことはつながっていて、書くことで読んで理解する力が深まり、読むことで自分が理解していることを書く力もついていきます。
なかでもおすすめなのが「創作」です。 詩やショートストーリーを書いてみましょう 。人に読まれることを意識して、読み手に対して何をどう伝えたいか、どう面白がってもらいたいかを考えて書くことで、英語の表現力がつきます。
創作というと難しそうですが、短い詩なら割と簡単に書けます。中学レベルの英語でも可能です。2行から3行のセンテンスを書けば、詩になります。まずは1行書いてみることが大切ですね。
英語川柳で楽しくクリエイティブに英語を書く
12月16日に開催するセミナー は、「クリエイティヴ・ライティング」をテーマにしていますが、どういうものですか?"> 12月16日に開催するセミナー は、「クリエイティヴ・ライティング」をテーマにしていますが、どういうものですか?
クリエイティヴ・ライティングとは、言葉の 可能性 や性質を実際に書きながら学ぶプログラムです。言葉への美的感覚を磨くもので、 現代のアメリカ人作家の多くはクリエイティヴ・ライティングの学位を持っています 。
当日はクリスマスをテーマにした英文学の表現に触れるほか、書くことにも挑戦するそうですね。
皆さんに英語の川柳を即興で書いてもらいます。三行句の中で人間世界を味わい、それをうたい伝えるスタイルが「英語川柳」です。人間を中心とした世界観の中で、最低限の音節形式を守って、後は頭の中で浮かぶ情景を描けば、あなただけの立派な句が仕上がります。
欧米でうたわれてきた川柳は基本的に、 5・7・5の音節形式 で、計17の音節からなる英語詩です。とても短く、かつ俳句と異なり季語は不要ですから気軽に書けます。
●レッスン編
●レクチャー編 少ない 語数でも、表現できることは幅広い ことが実感いただけたのではないでしょうか。川柳は俳句と違って季語が不要。短い言葉で皮肉も効かせられるので、楽しんで書いてみてください。ここで私も一句、よんでみます。To become richer
People are happy risking
Everything they've earned
(リッチマン、なるためならばいとわない)
現代アメリカ文学の傑作『路上』を書いたジャック・ケルアックは、俳句も書いていてBook of Haikusにまとめました。非常に面白く、読みやすい作品です。リーディングの練習にもなりますし、自分で英語川柳や俳句を書く際の参考にしてもいいでしょう。
美的センスを使って「意味されていること」を読み取る
英語を習得する上で大事なことはなんでしょうか。
英語の習得には 美的センスや審美的な感覚を使う ことが大切だと思います。
私はアメリカ文学を研究していますが、文学作品には「書かれていないけれど意味されていること」がたくさんあります。それを理解するには、感性が必要です。「作者は何を言いたいのか」を感じるように心がけながら、読んでください。
英文テキストを和文に訳しながら読む人もいますが、辞書を引いて日本語の意味に置きかえる機械的 作業 にならないように気をつけてください。それでは読み込んでいることにはなりません。言葉の着せ替えごっこをしているだけです。 行間を読み込もうとする ことが大事なのです。
僕は姉の 影響 で中学時代に洋楽のコピーバンドを始めたんですが、そのおかげで英語のテキストを深く読み込む習慣がついて、読解力がつきましたね。
バンド活動で英語の読解力が伸びたのですか?
はい。いい音を鳴らすためには、楽譜を丁寧に読み込まないといけないんですね。ただ楽譜どおり演奏すればいい、というのではなく楽譜にある休止符や音符にどんな意味があるか。どこを強調して演奏すべきなのかを考えて演奏しないといけない。それをするようになったら、自然と 英文も楽譜と同じ感覚で丁寧に読みこむよう になりました。
例えば、「この文は現在 完了 形ではなく、なぜわざわざ現在 完了 進行形になっているのだろう」といったことです。小さなことも気になるようになり、 書き手が「意味しようとしていること」を感じる ようにして、読むようになりました。
自分の思いを表現できる英語力を目指そう
文学作品を読む時は、作者が「何を伝えようとしているのか」を感じながら読むことが大切なんですね。
さらに 読んだ文学作品の面白さをシンプルな英語で説明 してみると、ぐんと力が付きますよ。
声に出して読むのもいい でしょう。「黙読の時は暗い印象だった文が、音読してみたら文体のリズムが意外と明るい」ということに気づくこともあるかもしれません。作者が「本当に言いたいことは何なのか?」とさらに深く読み込んでいく きっかけ になります。
音読するときは、書き手が強調している部分、軽くさらりと書いている部分など、 意味の強弱に合わせて音読にも強弱をつける のがポイントです。
他にはどんなことが大事でしょう?
最近の学習法は機能的なものに偏っています。「おいしい」と伝えるときに、“This is tasty .”というフレーズを覚えて、いつでもどこでもどんな食事でも、この言葉だけ使えばよい……といった英語力を身につけようとしている。
でも本来はどうおいしいのか、その食事にどんな思いがあるのか、その意味を表現できる英語力が大事だと思います。
言葉をちゃんと感じながら、「意味を表現できる」英語力 をつける練習をしましょう。
12月16日開催!「クリエイティヴ・ライティング」入門
3回目の開催を迎える「ALC Learners’ Club」では、河田英介先生をゲストにお迎えします。タイトルは「『クリエイティヴ・ライティング』入門~クリスマスの文学とその表現を学ぶ・英語川柳ワークショップ~」。
文学作品をベースに「クリスマスの英語表現」についてご紹介いただくほか、英語川柳ライティングのワークショップでは、参加者の皆さんに 一味違うクリエイティブ・ライティングに挑戦 していただきます。
日時:12月16日(土)12:00~16:00<入退場自由>
会場:アーバンネット神田カンファレンス(地下鉄・JR神田駅)
定員:30名
受講料:アルク通信講座受講生および『ENGLISH JOURNAL』定期購読者の方とその同伴者…無料
上記以外の方々…1,000円
詳細のご確認、参加のお申し込みは下記のリンクよりお願いいたします。
第3回 ALC Learners' Club(ALC2) ゲスト:河田 英介先生
取材・文:原 智子
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