通訳者ってもうかるの?「今夜明かされる、通訳者の生態!」イベントレポート

マイクさん(左)と Jun さん

2019年2月23日(土)、東京下北沢にある「 本屋B&B 」で、トークイベント「関根マイク?Jun 今夜明かされる、通訳者の生態!」が行われました。関根マイクさんの新刊『同時通訳者のここだけの話』発売記念イベント兼、ENGLISH JOURNAL(EJ)連載陣同士のバトルトークイベント(?)ということもあり、EJ読者をはじめ、関根さんのファン、Junさんのファンで会場は満員御礼。今回はそのイベントの模様をレポートします。

関根マイクさんって?

政府系国際会議や法廷の通訳をはじめ、羽生善治さん(将棋棋士)、イーロン・マスクさん(実業家)、ハリソン・フォードさん(俳優)など、並み居る要人たちの通訳を引き受けてきたプロ会議通訳者。カナダ、ブリティッシュコロンビア大学在学中から通訳アルバイトを始め、卒業後 すぐに 2000年「九州・沖縄サミット」(第26回主要国首脳会議)で翻訳・通訳の仕事に従事。以降ありとあらゆるジャンルの通訳、翻訳をこなしています。現在、自らが設立メンバーでもある日本会議通訳者協会の理事を務められ、通訳者同士の横のつながりや後進の育成にも力を入れています。2019年2月、EJ誌上の連載「通訳の現場から」をまとめた、単行本『同時通訳者のここだけの話』を刊行されました。

同時通訳者のここだけの話
  • 作者: 関根マイク
  • 出版社: アルク
  • 発売日: 2019/02/18
  • メディア: 単行本

Junさんって?

大人気ポッドキャスト「勝手にENGLISH JOURNAL!」(以下「勝手にEJ!」)のパーソナリティー。英語音読学習管理アプリ RepeaTalk  開発者。「勝手にEJ!」では毎回、 英会話教室スパルタ英会話さん からネイティブ講師(a.k.a. 刺客)を招き、「英語×日本語」のバイリンガルスタイルで、EJ最新号で扱っているトピックについて「勝手に」おしゃべりを繰り広げています。社会情勢やカルチャーに関する豊富な知識と、「イケメンボイス(イケボ)」が、リスナーのハートをつかんでいます。現在、EJ誌上にも同名の連載を持ち、最新のカルチャー事情について、独自の視点で考察を繰り広げています。

「チャンピオンは後から入場するんじゃないんですか?」

大会場でのお仕事 に関して は百戦錬磨の関根さんと、初トークイベントで緊張気味のJunさん。「関根さん→Junさん」の順で壇上に呼び込まれたことをネタに、まず関根さんが「普通、チャンピオンは後から入場するんじゃないんですか?」とジャブを繰り出します。「お手柔らかにおねがいします!!殴らないでください!!」と即座に返すJunさんに、会場爆笑。

緊張もほぐれたところで、前半は「職業としての通訳者」にフォーカスしてトークが進行しました。「同時通訳と逐次通訳の違いは?」といった基本的な質問から、「ぶっちゃけ、儲かるの?」「何歳まで働けるの?」など、きわどい質問にもジョークを交えながら的確に、インテリジェンスあふれる回答を返していく関根さん。

関根さんは、日本では一般的な「通訳学校で勉強をして通訳者に」というルートを通らず、大学時代に留学先のカナダで、アルバイトとしていきなり日本の林野庁調査チームの通訳をされたそうです。仕事の出来に打ちひしがれる一方、その報酬のよさに「これはいいぞ!」と直感し、以後、持ち前の好奇心と行動力で、国際会議、法廷、ゲームイベント、FinTech、原子力などなど、さまざまなジャンルの現場を経験してこられました。

現場主義を貫く「度胸のカタマリ」のような関根さんですが、実は昔は「豆腐メンタル」(メンタルが豆腐のように崩れやすい)だったとのこと。大学の生徒会でのもろもろの交渉や、通訳の実際の仕事を通じて、徐々にメンタルを 強化 してきたそうです。関根さんの意外な過去に、会場も驚いた様子でした。

前半の終盤、「通訳になりたい人へのアドバイス」をJunさんから求められると、「通訳は社会経験が重要」と答える関根さん。多岐にわたる業界への知識や、コミュニケーションスキル、ミスをした時のリカバリー能力など、通訳者に必要なのは「語学だけではない」ということがよくわかるコメントでした。

通訳者の「天下一武道会」とは?

後半は、プロジェクターに次々と映し出される質問に即興で答えていくスタイルで進行しました。「ハリソン・フォードってどうでした?」「好きな映画は?」「明日J-waveで何話すの?」(関根さんはこの翌日、J-waveの番組「 ACROSS THE SKY」に出演)など、だんだんと質問の精度が甘く(笑)なっていき、緩く和やかな雰囲気に包まれる下北沢B&B。こんな雰囲気でないとできない裏話も頻発。

中でも関根さんが 所属 する日本会議通訳者協会が主催する「同時通訳グランプリ」の話題はひときわ盛り上がりました。日本中の「腕に覚えあり」の若手通訳者が集まり、「誰が一番強いかを決める」というこの大会。通訳者の「天下一武道会」(漫画『ドラゴンボール』に出てくる、最強の武道家を決める格闘大会)のようなものにしたかった、と楽しそうに語る関根さん。会場にはなんと「初代チャンピオン」の姿も。マイクをお渡ししてしばしお話しを伺いました。

なお、本大会は現在、絶賛エントリー募集中です。「俺の方が強いぜ!」「私の通訳が一番!」という腕自慢の方は奮ってご応募ください。

同時通訳グランプリ ? 日本会議通訳者協会

イベント終盤、「テクノロジーと通訳」というテーマでは、 今後 音声認識技術がさらに発達すれば、「話者の言葉の同時テキスト化」の精度が上がり、それを見ながら通訳する「サイトトランスレーション」の需要が増えるのではないか、という 予測 に加え、これから確実にトレンドになるであろう遠隔同時通訳(RSI)についても詳しく語ってくださいました。「若手であれば、そのようなテクノロジーに対応していくべき」との姿勢を 明らかにする 関根さん。時代の流れに敏感になって、その中で「自分のできること」を発見できれば、通訳者にもさらなるチャンスが待っていそうです。

「通訳者の将来」に絡めて「自分のスキルが落ちたら すぐに 身を引きたい」と達観したコメントも。プロの「仕事人」として、冷静に自分をジャッジする視点を忘れてはならない、という真摯なメッセージでした。

イベント終了後は、新刊『同時通訳者のここだけの話』サイン会が行われ、関根さんの前にはお客さんの長蛇の列。イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。

当日飛び出たパンチラインをご紹介!

ここで、爆笑&名言多発の当日のイベントから、関根さんのパンチライン(決めゼリフ)をご紹介します。当日の雰囲気を想像しながらお楽しみください。

「世界が動く場面を目にしてきたことがある」
「僕は仕事中は“自分が最強”だと思っている」
「ドナルド・トランプの通訳は僕が適任」
「たくさん泥水を飲んできたけど、忘れた。ただ、そういう経験は確実に力になっている」

当日の模様はこちらから聞けます!

いかがでしたか?ここで、「行きたかったのに行けなかった!」「このレポートを読んで、どんな内容だったのか知りたくなった!」という皆さまに朗報です。

このイベントの模様は「勝手にENGLISH JOURNAL!」にて絶賛配信中です(無料)。これを機会にぜひポッドキャストを登録してみてください。

勝手にENGLISH JOURNAL!
  • アルク / SPARTA英会話 / JUN
  • 言語コース

お二人が連載されている「ENGLISH JOURNAL」の最新号はこちら!

CD付 ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 2019年4月号
  • 出版社: アルク
  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: 雑誌

取材・文:水島 潮(ENGLISH JOURNAL編集長)

『ENGLISH JOURNAL BOOK 2』発売。テーマは「テクノロジー」

現在、ChatGPTをはじめとする生成AIが驚異的な成長を見せていますが、EJは、PCの黎明れいめい期からITの隆盛期まで、その進化を伝えてきました。EJに掲載されたパイオニアたちの言葉を通して、テクノロジーの歴史と現在、そして、未来に目を向けましょう。

日本人インタビューにはメディアアーティストの落合陽一さんが登場し、デジタルの時代に生きる英語学習者にメッセージを届けます。伝説の作家カート・ヴォネガットのスピーチ(柴田元幸訳)、ノーベル生理学・医学賞受賞のカタリン・カリコ、そして、『GRIT グリット やり抜く力』のアンジェラ・ダックワースとインタビューも充実。どうぞお聴き逃しなく!

【特集】PC、IT、そして、ChatGPT・・・パイオニアたちの英語で見聞する、テクノロジーの現在・過去・未来
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【スピーチ&インタビュー】カート・ヴォネガット(作家/柴田元幸訳)、ケヴィン・ケリー(『WIRED』創刊編集長、未来学者)、レイ・カーツワイル(発明家、思想家、未来学者)、ジミー・ウェールズ(ウィキペディア創設者)、アンジェラ・ダックワース(心理学者、大学教授)、【エッセイ】佐藤良明

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