【サムライENGLISH】第7回:甲冑、刀…武将の魅力増し増しアイテム、大解剖!

今回のご担当

夏もいよいよ終盤ですね。本日は、夏バテ続きかもしれないあなたのために、オトナの夏期講習を開講します。メイン講師に伊達政宗様、ゲスト講師に片倉小十郎景綱様、真田幸村様、支倉常長様を迎え、戦国武将のマストアイテム、甲冑や刀について学びます。戦国武将の熱い思いに触れれば、元気になること間違いなしです!学んだ後は、復習テストがてら、仙台城跡近くの仙台市博物館へGO!実際に伊達家関連の甲冑や刀などを見て、さらに理解を深めましょう。

それでは夏期講習、1時限目のスタートです!

【1時限目】 強さ◎、アピール性◎の優れもの:甲冑

甲冑パーツ

これだけは覚えたい!甲冑のメイン・パーツ14選

  1. crest ⇒前立(まえだて)
  2. helmet ⇒兜(かぶと)
  3. sleeveless campaign jacket worn over armor ⇒陣羽織
  4. throat protector ⇒喉輪。喉や胸を守るもの
  5. cuirass ⇒胴。発音記号は【kwɪrˈæs】。胴を守るもの
  6. armored sleeve ⇒籠手(こて)。腕を守るもの
  7. hand guard ⇒手甲(てっこう)。手の甲や指を守るもの
  8. baton of command ⇒采配
  9. short sword ⇒脇差
  10. sword ⇒太刀(たち)
  11. tasset ⇒草摺(くさずり)。腰や腿(もも)を守るもの
  12. thigh guard ⇒佩楯(はいだて)。腿を守るもの。thigh(発音記号は【θάɪ】)は腿
  13. hakama pants ⇒袴
  14. greave ⇒臑当(すねあて)。足を守るもの

※パーツはそれぞれ固有名称なので、英語で説明するときは、下記のようにするとわかりやすいでしょう。
例) 喉輪の場合:Nodowa is(means) a throat protecter.

なお、刀や采配、陣羽織などは甲冑には入りませんが、戦国武将の必須アイテムとしてあわせて紹介しています。

また当時、戦場では革製の足(tabi socks)にわらじ(straw sandals)などを履いていました。伊達武将隊の武将の皆様は、演武やおもてなしの都合上、地下足袋( rubber‐soled socks)を履いているそうです。

Armor(甲冑)

The samurai wore armor to protect their bodies on the battlefield. The mask and helmet of Darth Vader, the famous character in the movie “Star Wars" was modeled after the black-lacquered armor with five pieced cuirass used by Masamune DATE.

  • armor ⇒一語で表すことが多いですが、兜(かぶと・helmet)と鎧(よろい・armor)に分けて「helmet and armor」、具足(甲冑の別称)一式が揃っているということで「a set of armor」と表記することもあります。
  • the black-lacquered armor with five pieced cuirass ⇒ the black-lacquered (黒漆塗り)+armor +five pieced cuirass (五枚胴)⇒黒漆五枚胴具足(くろうるしごまいどうぐそく)

 

伊達政宗わし伊達政宗と言えば「黒漆五枚胴具足」が大変有名じゃ。一度は見たことがあるじゃろう?映画「スター・ウォーズ」シリーズの人気キャラクター、ダース・ベイダーのモデルになったゆえ、海外からのお客人にも非常に人気があるのだ。

胴が五枚の板で作られておるので「五枚胴」だが、わしを始め仙台藩の歴代藩主や家臣団が着用したため「仙台胴」と呼ばれることもある。頑丈で、弓矢をそらし鉄砲をはじくのに大変優れておる。そのうえ装着しやすく、折りたたんで持ち運べるのだ!

この時代は秀吉様以降、舶来品(輸入品)も多く、全国的に派手好みの風潮であった。そんな中、黒一色に金をあしらったこの具足には、わし政宗の美意識とセンスが凝縮されておる。また、美しさと実用性、耐久性を兼ね備えた作りは、まさに伊達家ならではのものである!

黒漆五枚胴具足複製と伊達政宗

※今夏、東京・目黒雅叙園で開催された「和のあかり」での黒漆五枚胴具足複製と政宗様のツーショット。 複製のマスク部分は「面頬(めんぽう・英語ではvisor。サンバイザーのバイザーです)」という顔を守る防具で、五月人形などでもおなじみのパーツです。お隣の政宗様はエアー面頬中でしょうか…?(編集部)

 

真田幸村対して、わし真田幸村の具足は朱色の二枚胴である。胴の前後を二枚の板ではめるのだが、「桶側胴(おけがわどう)」というのが有名で、その名の通り、桶のように丸みがある。剣道の胴着のようなイメージじゃな。

ちなみに五枚胴と二枚胴を見分ける秘訣は、前方から見ることじゃ。わりと平たいのが五枚胴、丸みがあるのが二枚胴であることが多い。わしの胴と政宗殿の胴を比べてみよ。違いがわかるかのう?甲冑を真上から見ると、さらに違いが一目瞭然なのじゃが…まあ、見る機会はなかろうて。

なお、伊達と真田の甲冑で違うのはこの胴部分だけで、他の部分はほぼ同じである。

真田幸村

【2時限目】 ムカデからお札まで。武将の最強メッセージボード:前立て

伊達成実

Crest(前立て)

Maedate, or crest, is an ornament that is put on the front part of a helmet. Not only were they decorative, but they also served to bolster their "samurai spirit."

  • crest ⇒他にも鳥のとさか、紋などの意味もあります。例)family crest ⇒家紋
  • ornament that is put on the front part of a helmet ⇒兜の前面についている飾り
  • serve(d) to bolster their "samurai spirit." ⇒「サムライ魂」を奮い立たせる

 

支倉常長甲冑の中でもっとも目立つのが、兜に付いている飾り、「立てもの」であろう。中でも前方にあるものを「前立て」、左右にあるものを「脇立て」と呼ぶ。伊達政宗公の場合は、政宗公が生まれた日の晩に三日月が出ていたため、父君の輝宗公が前立てを三日月に決めたと言われておる。片倉家も八日月を前立てに付けているが、月は欠けては満ちることから「不死の象徴」として武将の間で神聖視されることが多かった。

※なお、上の写真で伊達成実様がかぶっているのは烏帽子(えぼし)。成人男性が日常的に着用していました。武家の男子の「元服の儀(今の成人式)」で、烏帽子をかぶせ、その男子の後見人となる役を「烏帽子親」と言い、成実様は片倉小十郎重綱様の烏帽子親を務めました。 重綱様には実父・景綱様、義父・幸村様、烏帽子親・成実様と、偉大なお父様が3人もいらっしゃるのですね。(編集部)

片倉小十郎景綱

片倉小十郎景綱わし片倉小十郎景綱と倅(せがれ)の重綱は、八日月とともに愛宕神社の「愛宕山大権現守護所」というお札を付けている(※)。 「愛宕山大権現」とは、かつて愛宕神社で祀られていた愛宕勝軍地蔵(あたごしょうぐんじぞう)のことで、戦勝の神として多くの武将から信仰されておった。あの有名な直江兼次の「愛」の前立ても、愛宕勝軍地蔵の頭文字だという説があるのじゃ。

※史実の片倉小十郎景綱の兜は現存しません。片倉小十郎重綱の兜は現存しており、その前立てには八日月と愛宕神社のお札がついています。伊達武将隊の片倉家の前立ては、この現存する兜の前立てを元に作られているそうです。(編集部)

片倉小十郎重綱

真田幸村鹿は神道でも仏教でも神聖な生き物で、神仏の加護を受けんがため、身に付けた武将が多い。また、伊達成実殿の付けているムカデや毛虫は前にしか進まず、「決して後にひかない!」という不退転の決意を表しておる。戦国武将にはこのような虫を前立てにした者も多かったのだ。(※)

虫を食べ、一直線に進むような飛び方の蜻蛉(とんぼ・英語では「dragonfly」)は「勝ち虫」と言われています。また、毛虫からさなぎ、成虫と「立身出世」する蝶も縁起が良いとされ、前立てにした戦国武将も多かったようです。(編集部)

真田幸村

伊達政宗ちなみに兜は紐で固定し、動いても外れないようにしておる。この紐だが、我ら伊達武将隊は各自が好きな結び方をしておるな。あごの上で結び、余った部分を飾り紐のように耳近くで幾重にも巻く場合もあれば、着脱しやすいように軽く引っ掛けているだけのこともある。じっくり見てみると面白いかもしれぬぞ。

【3時限目】 切り払うのは人ではなく、魔。武器を超えた存在:刀

伊達政宗

Japanese Sword(日本刀)

“Japanese swords” are the generic name for swords forged in an originally developed way in Japan. Some Japanese swords are valued not only as weapons but also as elaborate works of art.

They have long hilts and a sword guard called tsuba. Tsuba is at the base of the hilt to protect the owner’s hands and to push away the enemy’s sword.

  • the generic name for swords forged in an originally developed way in Japan
    ⇒日本で独自に発展した方法で鋳造(ちゅうぞう)された刀剣の総称。
  • are valued not only as weapons but also as elaborate works of art ⇒武器であるだけでなく、芸術品としても価値のある
  • hilt(s) ⇒柄(つか)
  • at the base of~ ⇒~の根元
  • push away the enemy’s sword ⇒敵の刀を押しやる

 

伊達政宗戦国末期には鉄砲も普及し、戦いで刀を使うということはほぼなかった。だが、清められた刀を陣中に置くことで、魔を払ったり、験担ぎをしておった。存在そのものに大変大きな意味があったのじゃ。近年、ゲームなどでも大倶利伽羅広光(おおくりから・ひろみつ)という刀が人気じゃが、この倶利伽羅龍というのは不動明王の化身した姿と言われておる。かつて、この刀を常に陣中に置いていたのは、わしが不動明王を自分の一番のあるべき姿としていたためだったかもしれぬな。

ところで、刀も現在のファッションのように流行があったということはご存知かな。ある者の刀が評判になると、全国で、皆がこぞって、その刀鍛冶の刀を買い求めたのだ。ちなみにわしと字は違うが、「正宗」という名工は大変有名で、多くの武将が正宗の刀を持っていたと言われておる。もちろん、わしも持っておったぞ!

伊達政宗

片倉小十郎景綱政宗様から鉄砲のお話が出たが、伊達軍は鉄砲の研究にも非常に力を入れておった。伊達軍の騎馬鉄砲隊は大変優れた戦術を誇り、非常に強力であった。大坂夏の陣では真田幸村殿との戦いにおいても大活躍をしたのだぞ。

【4時限目】背にも注目!おしゃれとステータスと心意気の陣羽織

伊達政宗・陣羽織

Sleeveless Campaign Jacket Worn Over Armor (陣羽織)

Originally, the samurai wore this type of jacket on top of their armor to keep out the cold and rain on the battlefield.

Through time, the designs became bolder and the materials became richer to display the wealth and status of the wearer.

  • sleeveless campaign jacket worn over armor ⇒甲冑の上に羽織る袖なしジャケット⇒陣羽織。シンプルに「jinbaori vest」と言うことも。
  • keep out the cold and the rain ⇒寒さや雨を防ぐ
  • designs became bolder ⇒デザインはより奇抜で、大胆になった
  • display the wealth and status of the wearer ⇒身にまとっている者の財力やステータスを誇示する

 

 

伊達政宗わしの黒地に赤が鮮やかな「山形文様陣羽織」は、舶来品のマントを切って陣羽織に加工したものじゃ。今でいう「リメイク」であるな。本来、陣羽織は戦場で雨露をしのぎ、寒さを防ぐものであったが、前立てと同様、武将が自分の財力や存在を見せつけるため、高価な生地を使ったり、奇抜で派手なデザインにするようになっていた。目立てば当然、敵にも狙われやすくなる。前立て同様、命がけの自己アピールであったかもしれぬな。

伊達政宗・陣羽織

片倉小十郎景綱陣羽織は、ぜひ背中にも注目してほしい。前立て同様、各武将の心意気が表されておるのだ。

政宗様は「竹に雀」の家紋を入れておられる。これは、伊達の家名をしょって立つという強いお覚悟の表れである。

成実殿は、将棋の駒の「香車(きょうしゃ)」じゃ。どこまでも前進する攻めの駒で、敵陣に入れば、金将の駒と同じく、自身の王を守り、相手の王を追い詰める。前立てと共に、成実殿の猛将らしさが伝わるのう。

幸村殿は「六文銭」(※)である。これは三途の川の渡し賃で、いつでも死ぬ覚悟はできているという心意気を表しておる。

そして、わし片倉小十郎景綱と倅の重綱は「黒釣鐘」じゃ。これは、政宗様の乳母にして我が姉の、片倉喜多(きた)が考案した旗印なのじゃ。戦場で、家名を鐘のようにとどろかせるように、また、死んだ者達を弔うためにとの思いを込めておるのだ。

つねに死と隣り合わせの戦場に、武将がどのような思いと覚悟で臨んでいたのか…陣織の背を見れば、その背負うていた物の重みに思いを馳せることができるかもしれぬぞ。

※仏教では六道(りくどう)銭とも言います。死後に、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の六道を彷徨わぬようにと6枚の一文銭を納棺したそうです。(編集部) 

※史実の伊達成実、片倉小十郎景綱・重綱、真田幸村の陣羽織は現存しないと言われています。そこで伊達武将隊では、史実に基づく政宗様の陣羽織以外は、オリジナル版を着用しています。今期、一部デザインをリニューアルし、特に景綱様と重綱様のものが大幅に変わりました。

あなたは新旧の陣羽織、どちらがお好みですか?(編集部)

重綱・旧陣羽織

【重綱様・旧陣羽織】上品でシックなベースに、暖色系のアクセントが効いています

 

重綱・新陣羽織

【重綱様・新陣羽織】片倉家の青、真田家の赤を融合させた紫をベースに、より華やかな印象になりました

【5時限目】 いざ、最終仕上げ。テスト代わりに仙台市博物館へ!

仙台市博物館

Sendai City Museum(仙台市博物館)

This museum was opened at the site of Sendai Castle San-no-maru to preserve, exhibit and study the historical pieces donated by the Date family. It houses about 90,000 pieces of cultural and historical material.

    • at the site of Sendai Castle San-no-maru ⇒仙台城三の丸跡に
    • to preserve, exhibit and study ⇒保管、展示、研究のために
    • donated by~ ⇒~に(よって)寄贈された。ほかに寄付、募金などの意味も。
    • cultural and historical material ⇒文化的、歴史的な資料(美術工芸品など)

 

 

支倉常長ここ仙台市博物館は、伊達政宗公をはじめ、歴代藩主や家臣の甲冑、陣羽織、刀、書状など実に多くの伊達家関連の貴重な品々を収蔵・展示しておる。これまでの我らの説明を思い出しながら見てもらえれば、より楽しめること請け合いじゃ。

また、こちらには拙者の「慶長遣欧使節関係資料」も、ほぼ常設展示されておるぞ!中でも、黒い服で祈りをささげている拙者の肖像画「支倉常長像」は、日本人を描いた油絵としては最古のものと言われておるので、ぜひ見ていただきたい。

あわせて、全身を描いた大キャンバスの肖像画も要チェックじゃ!拙者がおもてなしで着ている着物はこの肖像画をモデルにしておる。この絵のもう一つの注目は刀の鍔(つば)じゃな。伊達家の家紋の一つ、九曜紋の透かし彫りが描かれていて大変美しい。気づかないお客人も多いが、これを読んでいるそなたは見逃すでないぞ!

支倉常長

仙台市博物館・看板

博物館は展示品以外にも注目ポイントがいっぱい!入口付近の五色沼は、日本フィギュアスケート発祥の地として、羽生結弦さんのインタビューなどでも有名です。また、博物館の色々な所で伊達政宗公を見かけます。まずは看板!

騎馬像

次に、裏庭の騎馬像。仙台城跡にある騎馬像の初代です。第二次世界大戦中、一度は金属供出のために撤去されましたが、胸から上の部分のみが難を逃れたのだとか。間近で見ると、その大きさとかっこ良さに驚きますよ!

仙台市博物館・入場券

そして入場券にも政宗公が。もちろん、入場券に伊達政宗様は付いてきません。念のため…。(編集部)

仙台市博物館へのアクセス

〒980-0862 仙台市青葉区内26番地

・バスの場合:JR仙台駅西口バスプール16番乗場にて「るーぷる仙台」乗車。「博物館・国際センター前」下車、徒歩3分
・地下鉄の場合:地下鉄東西線仙台駅から「八木山動物公園」行きに乗車。「国際センター駅」下車、南1出口から徒歩約8分
※博物館の展示は時期により入れ替えなどがあります。また、期間限定で展示されるものもありますので、詳細は公式サイトでご確認ください。

 

お知らせ~この秋、400年前に政宗公が着用した「黒漆五枚胴具足」が東京にやって来ます!~

秋9月10日より、東京・日本橋の三井記念美術館で「松島 瑞巌寺と伊達政宗」が開催されます。

第4回でご紹介した瑞巌寺の本堂の修理完成と、来年の伊達政宗公生誕450年を記念した特別展に、仙台市博物館所蔵の「黒漆五枚胴具足」や「山形文様陣羽織」も出展が決定

400年前に実際に政宗公が着用した甲冑&陣羽織を見られる絶好のチャンスです。お近くのあなたは、ぜひお見逃しなく!

詳細はこちら:三井記念美術館

次回予告

ご好評につき、超☆番外編の掲載が決定!
更新日:8月31日(水)
担当:伊達政宗様

美酒と過ごす至福のリラックスタイム。少しだけ、ご一緒させていただきましょう。

奥州仙台おもてなし集団・伊達武将隊

奥州仙台おもてなし集団・伊達武将隊(The Oshu Sendai Welcome Squad Date Busho-tai)

杜の都・仙台の魅力を広めるため、 仙台藩祖である伊達政宗公と家臣団などで結成。 仙台城跡を拠点に、日本国内から海外まで、仙台をPRするために日夜出陣中。 最新情報は公式サイトやTwitterにて随時配信。また、週2回の英語更新があるFacebookや、今すぐ仙台に行きたくなる美麗なInstagramも要チェック!

公式ホームページ

理桜

企画・構成:理桜
ご先祖は東北武士。今は東京女子。GOTCHA!プランナー

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