英語の「形容詞」「副詞」に精通するための問題5選【大竹保幹の英文法パラダイス】

現役の高校英語教師、大竹保幹さんの連載「英文法パラダイス」。第3回は「形容詞」と「副詞」を取り上げます。学校で習ったのに忘れてしまった!そんなクイズ5問に挑戦して、英文法が楽しくなるパラダイスを目指しましょう。

パラダイス行き切符を手に入れる問題

英文法パラダイスではみなさんの「知っているつもり」が試されます。英文が正しい、または間違っている理由をしっかりと説明できますか?

次の(1) ~ (5) の英文について、正しいかどうかを判断してください。
正しい:〇  間違っている:×  ちょっと怪しい:△

(1) The price of this dress is too expensive!

(2) We have much time today.

(3) I am looking forward to meeting you three days later.

(4) Oh, this soup tastes too much salty ...

(5) Brian made less mistakes than before.

今回のテーマは「形容詞と副詞」です。この二つの品詞は修飾語なので、他の語に対して何かしらの意味を加えます。

形容詞は名詞がどのような色・形・大きさをしているのか、どのような状態にあるのかなどを教えてくれますし、副詞はどのように動作を行ったのか、いつのことなのかなど動詞の意味を補助したりするだけでなく、どのくらい大きいかなど形容詞の手助けまでしてくれます。

名詞と動詞だけでは単純で粗削りな感じの英文になってしまうところを、形容詞と副詞があるおかげでずいぶんと物事を細かく描写できるようになるというわけです。

みなさんはこの二つの品詞の使い方には自信がありますか?

解答と解説

(1)

答え:× The price of this dress is too expensive!

big(大きい)、small(小さい)など、形容詞はその意味さえ覚えてしまえば、あとは名詞に付けるだけですから使い方も比較的簡単です。そのためか、残念ながら学校ではたっぷり時間を取って教えることがあまりありません。しかし、英語において形容詞の学習で外してはいけない事柄があります。それは「コロケーション」と言われるものです。コロケーションとは単語の組み合わせの相性のようなものです。

単語同士の相性、コロケーションを考える

例えば、日本語ではページ数のやたら多い辞書のような本を「(×)太い本」ではなく「(〇)厚い本」と表現します。「いや、そんなの当たり前だろ!」と思うでしょうが、その当たり前を英語でできるようにするのが結構大変なのです。

これは形容詞に限った話ではなく、あらゆる品詞にコロケーションがあります。日本語だって将棋は「指す」のに囲碁は「打つ」ものですよね? 覚えた単語を好き勝手に組み合わせているだけでは自然な表現にはならないのです。

ここからは英語のを少し見ていきましょう。まずはcoffeeからです。

コーヒーの味を表現するために「濃い」「薄い」などの形容詞を使うわけですが、(×)thick coffee、(×)thin coffeeなんて言わないでくださいね。コーヒーが薄っぺらいってどんな感じなんでしょう。正しい形容詞はstrong coffee(濃いコーヒー)とweak coffee(薄いコーヒー)です。英語では味の濃さを強弱で表現するのです。お酒については日本語でも強弱でアルコール度数を表したりするので、ちょっとだけ似ています。

では問題にもありましたが、price(価格、値段)はどうでしょうか。

もちろん、値段の「高い」「安い」にはそれぞれexpensive、cheapなどといった語が使われるわけですが、(×)expensive priceという言い方はしません。というのも、expensiveにはすでに「値段」の意味合いが含まれているからです。   

(×)This price is expensive.
   この値段値段が高い
(〇)This bag is expensive.
   このバッグは値段が高い

意味が重複してしまうから、この組み合わせでは使えないということですね。

英語ではpriceにはhigh(高い)、low(低い)を使います。名詞と形容詞の自然な組み合わせを覚えるのは容易ではありませんが、たくさん声に出して言いなじむように繰り返すことが大切です。

修正例

This dress is too expensive!
このドレス、高すぎよ!

または

The price of this dress is too high!
このドレスの値段、高すぎるわよ!

(2)

答え:△ We have much time today.
 
「えっ、この英文のどこが怪しいの?」と思ってしまった人、いませんか? timeは数えることのできない不可算名詞だから、manyでなくmuchを使って「たくさん」を表しているし、他に一体どこがおかしいのか・・・。

manyやmuch:使用上の注意点

実はmanyやmuchは、veryやsoなどの修飾語句がないときは、主に否定文や疑問文などで使われる語なのです。意外ですよね。英語学習の初期に習うので、その使い方を辞書などでしっかりと調べたことがある人があまりいないからかもしれませんけど、ちゃんと書いてあります。

(〇)I don’t have much money.
   お金をあまり持ってません。

これは否定文ですから、文句なしに正しい英文です。肯定文でmanyやmuchが使われることももちろんあるのですが、普通は何かしらの修飾語句が付きます。例えばこんな感じです。

(〇)I have much time to do my homework.
   宿題をする時間がたくさんあります。

どんな時間がたっぷりあるのかまで言って初めて自然に聞こえるなんて、manyとmuchは案外使い方が難しいのです。そういう意味ではa lot of ~(たくさんの~)は名詞の種類も気にする必要がないですし、単純な肯定文にも使えるのでありがたい表現です。その分、口語的だとも言えますね。

修正例

We have a lot of time today.
今日、私たちは時間がたっぷりあります。

(3)

答え:× I am looking forward to meeting you three days later.

動詞の時制はざっくりと「いつ」のことなのかを表しますが、より具体的に時を表現するのに欠かせないのが副詞です。yesterday(昨日)、tomorrow(明日)、two years ago(2年前)などの語句が英文に添えられるだけで、相手により正確な情報を伝えることができます。

時を表す副詞は基本的には文末に置いておけばいいので特に語順を気にすることもないですし、意味さえ覚えておけばよいと思われがちです。ただし、later(後で)についてはちょっと気を付けなくてはいけない語法があります。

(〇)A few years later, Yuri got married to Naoto.
   数年後、ユリはナオトと結婚した。

laterはある時を基準にして「その~後」という意味を表します。数詞と一緒に使うことでいつ結婚したのかを具体的に伝えられていますね。ここまでは問題なしです。

過去や未来が基準となるlater

しかし、これが現在の話となると話が変わってきます。なんとlaterは数詞と使うときは「過去や未来」を基準にしなくてはならないからです。つまり、(〇)See you later.(またね)は良くても、(×)See you two days later.(また2日後にね)はダメということです。

言われてみればそんな英語を聞いたこともないのですが、知識として知っておくことは大切です。現在から見て「~後」と言いたいときはin ~ days(~日後)とか ~ years from now(今から~年後)といった表現を使うようにしましょう。

修正例

I am looking forward to meeting you three days from now.
3日後にお会いするのを楽しみにしています。

(4)

答え:× Oh, this soup tastes too much salty ...

「あまりにもしょっぱすぎる!」という気持ち、どうしてもtoo muchという語句で表現したくなるのですが、これはいけません。too muchという組み合わせがよく使われるのは、ある物がたくさんありすぎたり、何かをし過ぎたりするときです。

(〇)There’s too much pepper in this soup.
   このスープにはコショウが入りすぎてるよ。
(〇)You drank too much!
   あんた飲みすぎ!

muchは形容詞との組み合わせに注意

too muchは名詞に付けば「あまりにも多くの~」、動詞の後ろにあれば「~し過ぎる」というように、程度が予想を超えてしまっていることを表します。ここで使われているtooはmuchを強調するための副詞です。much pepper(たくさんのコショウ)やdrink muchたくさん飲む)が基になっていて、そこにtooが付け加えられているという仕組みです。

ところが、形容詞を強調するときは話が変わってきます。difficult(難しい)という語に対して(×)much difficultとは言えないからです。この場合、まずtoo difficult(難しすぎる)という表現に対してmuchを使います。

(〇)This question is much too difficult.
   この問題はあまりにも難し過ぎる。

ここのmuchはtooという形容詞を強調するために使われているから、こんな不思議な語順になるというわけです。問題の英文ではsalty(しょっぱい)という形容詞が使われているので、語順を修正しなくてはいけませんね。

修正例

Oh, this soup tastes much too salty ...
うわっ、このスープあまりにもしょっぱすぎる・・・。

(5)

答え:△ Brian made less mistakes than before.

いつもは違いを気にしているのに、比較級にした途端になぜがするっと抜け落ちてしまうものに、a fewとa littleの使い分けがあります。こう言えば、この英文をどう直せばいいか分かるという人も多いのではないでしょうか。

a fewとa littleの区別がなくなるとき

orange(オレンジ)、idea(アイデア)など可算名詞が少ないことを表すときにはa fewを使い、wine(ワイン)、courage(勇気)など不可算名詞の量が少ないときにはa littleを使うというのは、英文法ではかなり基本的なことです。

問題文のmistake(間違い)は可算名詞ですから、少ないならばa few mistakes(少しの間違い)と言わなければなりません。当然、その比較級の形はfewer mistakesになりますよね。

修正例

Brian made fewer mistakes than before.
ブライアンは以前より間違いが少なくなった。

と、ここまでは「厳密で正しい英文法」の話でした。

面白いのは、くだけた話し言葉などではfewerとの区別がなくなるということです。つまり、less mistakesやless studentsなど可算名詞と組み合わせてもいいのです。個人的には、こんなふうに英文法のゆるい姿がちらっと見える感じが非常に好きです。

でも、「それなら比較級はlessだけ使えばいいのか」なんて思わないでくださいよ。たまたま間違えてしまうのは良いとして、覚えることを減らして楽しようとしているうちはきちんとした英語なんて身に付きませんからね。

まとめ

形容詞や副詞は、文法としては手薄になってしまうことの多い分野です。でも、今までせっかくたくさん覚えてきたわけですからもっと気にかけてあげましょう。

特に形容詞と名詞の組み合わせは大切で、英語を自然に響かせる上で欠かせません。そんなに簡単に身に付くものではありませんが、意識している人とそうでない人の差はかなり大きいと思いますよ。

大竹保幹
大竹保幹

明治大学文学部文学科卒業。神奈川県立多摩高等学校教諭。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。著書に『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』『まんがでわかる「have」の本』(いずれもアルク)『APPLAUSE LOGIC AND EXPRESSION Ⅰ~Ⅲ』(開隆堂出版)など。

大竹保幹さんの本

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』では、「仮定法」をはじめとする、子どもが抱きそうな疑問・質問に対して、ある程度答えられるように英文法の基礎を学ぶことができます。英語を学ぶ面白さに触れられる雑学的な小話も随所にあり、楽しみながら英文法を復習できます。

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