「teriyaki」が海を渡ったら別モノに!?日本人が海外で注意する点とは?【世界のニホンゴ調査団】

「世界のニホンゴ調査団」の第26回は、カナダからライターの佐知ゆりこさんがリポート。今回のニホンゴは「teriyaki」。和食の「照り焼き」のことです。海外でも広く親しまれるこの味付け、日本人の期待する「あの味・あの姿」とは違う場合が多々あるそう。今回は、英語圏で「teriyaki」を食べる際のリアルな注意点について見てみましょう。

50余年の歴史。すっかり市民権を得た「teriyaki」。

高級和食店からファストフード店まで、海外の飲食店で頻繁に目にする日本的な味付け「teriyaki」。しょうゆをベースにした濃いめの甘辛味は北米でも大人気です。レストランのみならず、住宅街の一般的なスーパーマーケットでも調味料コーナーにはさまざまな「teriyaki」ソースがズラリと並びます。

こんなに種類豊富!スーパーではいろいろなメーカーの「teriyaki」ソースが売られています。

「teriyaki」の始まりは1950代後半~1960年代のアメリカ。日本のしょうゆメーカー「キッコーマン」がアメリカに進出したのがこの頃で、アメリカ人の「しょうゆ需要」を拡大すべく、「アメリカの食事(肉)に合うしょうゆの使い方」を提案。その中で和食の照り焼きをヒントにした「teriyaki」ソースが生まれたことが発端だといいます。「teriyaki」ソースが初めてキッコーマンから販売されたのが1967年でした。

それから50年以上が経ち、「teriyaki」はすっかり北米の人々に定着しています。日本人が海外旅行先で和食が恋しくなったときに日本食レストランに入り、寿司や刺身よりも味の当たりはずれが少なそうな「teriyaki」に目に留めることも多いでしょう。ところが、海外での「teriyaki」は、日本での「照り焼き」とは少し異なる点があるのです。

日本の「照り焼き」と海外の「teriyaki」の違い

日本語で「照り焼き」といえば、その名の通り、食材にしょうゆベースの甘辛いタレをつけて焼くことで、表面に美しい光沢(照り)を出す「調理法」のことを指します。鶏肉や魚などさまざまな食材で楽しむことができ、家庭料理としても老若男女問わず人気です。

日本の「照り焼き」はこんな料理ですね。こちらは魚のぶりの照り焼きです。

日本の「照り焼き」料理の一例。魚料理や鶏肉はもちろん、豚肉や牛肉を素材とした照り焼きもポピュラー。(Photo:pelican from Tokyo, Japan, CC BY-SA 2.0)

一方、海外で「teriyaki」というと、多くの場合もともとの意味である「調理法」ではなく、「テリヤキソース」のことを指しています。

レストランでの実を見てみましょう。筆者がカナダで実際に訪れた日本食レストランでオーダーした「Chicken Teriyaki」がこちらです。

「teriyaki」料理。カナダでは鶏肉の他、「Salmon(鮭)Teriyaki」がメニューに並ぶ店も多いです。

このように、素材を「照り焼き」しているのではなく、調理した鶏肉に後から「teriyakiソース」をかけている、という料理となっています。

写真で見ると「別に大差ないのでは?」と感じると思いますが、時としてこれが「決定的な違い」を生むので注意が必要なのです。

え?teriyakiが揚げ物・・・?

英語の「teriyaki」は「ソースのこと」を指すため、焼いてあるとは限りません。そう、「テリヤキ」なのに、「揚げ物」である場合が少なくないのです。

よく見ると・・・焼いているのではなく、揚げてある!

見た目には日本の「鶏の照り焼き」と同じように見えるこの料理、よく見ると「チキンの揚げ物」に甘辛ダレがかかっている、というもので、日本の「照り焼きチキン」を想像して食べるとかなりヘビーな食べ応えとなっています。

別のとき、某アジアの日本料理店(日本の和食チェーンのお店)ではこんな体験も。日本語と英語が併記されたメニューを見ながら「唐揚げ」と「鶏の照り焼き」で迷い、「揚げ物はカロリーが高いから、照り焼きにしよう」と「照り焼き」をオーダーしたところ、「唐揚げに甘辛ソースがかかったもの」が出てきたのです。カロリーを気にして「照り焼き」にしたのに、揚げ物の油と甘いソースでさらにカロリーアップ。味も正直微妙でした。これなら最初から「唐揚げ」を頼めばよかった・・・!という結果に。

このように、海外の日本食レストランでの「teriyaki」料理は、予期せぬ食体験となることも。ヘルシー志向の方が海外で「teriyaki」料理をオーダーする際には、思わぬカロリー摂取につながる可能性に留意する必要があるのです。

海外の「teriyaki」の味と用途の多様性

また、調理法だけでなくソースそのものの味も、日本の「照り焼きタレ」と異なる場合が少なくありません。一般的に、日本のものには入っていない香辛料が加わっていることが多く、少なくともニンニクやショウガはどのteriyakiソースにも入っている、という印象です。

市販の「teriyakiソース」の原材料名の例。しょうゆや砂糖の他、ニンニク(garlic)やこしょう(pepper)のエキス、そしてディル(dill)やエストラゴン(tarragon)といった和食には使わないスパイスも入っています。
別の「teriyakiソース」の説明文。「ケチャップやステーキソースの代わりに使えます」との記載があります。

このように、調理した素材に後からかけたり素材の加熱中に加えたりする用途が前提であるため、さまざまなスタイルでの料理に使われます。レストランで「teriyaki」と名の付いたメニューをオーダーすると、「肉入り野菜炒め」のような料理が出てくることも。

「Beef Teriyaki」の一例。野菜やナッツが入った炒め物です。
「Salmon Teriyaki」の一例。このように、「ごはん」と「野菜」と一緒にサーブされることが多いです。(Photo: JIP, CC BY-SA 4.0)

ヘルシー志向の人は注文時に要注意

そんなわけで、外ではチキンの「teriyaki」は「揚げ物」であったり「炒め物」であったりする場合が少なくありません。

日本人が「照り焼き」をオーダーする場合、シンプルで優しい甘辛味と、油を使わないヘルシーであっさりした味を求めている場合が多いと思いますが、海外ではその両方ともが異なる可能性も。特に、カロリー制限をしていたり夜遅めの食事だったりする場合、「油ものを避けてヘルシーに」と考えてteriyaki料理をオーダーしたいときには、メニュー写真を目を凝らして見るか、オーダー前に店員さんに確認するようにしましょう。

このメニューのように「Grilled」と明記されていればまだ安心!

日本由来の偉大な味付け「teriyaki」!

「teriyaki」は今や英語の辞書に載るほどに英語圏で定着した言葉。筆者が海外で知り合った友人にも、「sushi」や「sashimi」が苦手な人はいても「teriyaki」が嫌いな人はいないほどポピュラーです。そのため、海外で友人を家に招いて食事を提供する際に、最初のメニューは「チキンテリヤキ」と決めています。人種を問わず、大人にも子どもにも好評です。

先日は、カナダ人の友人を招いて「チキンテリヤキ」を目の前で調理したところ、「え?テリヤキソースって自分で作れるの!?」「材料は何?どうやって作るの?」と驚かれました。これから海外に行く予定がありホームステイや寮生活の機会などがある人は、ホストファミリーや友達に作ってあげたら喜ばれるのではないでしょうか。

海外に行ったらその地の「teriyaki」の多様性を食体験として楽しんでみてください。そして、日本由来の偉大な味付け「teriyaki」で、国際交流を深められたらいいですね。

海外書き人クラブ
文・写真:佐知ゆりこ

カナダ在住

海外書き人クラブ:https://www.kaigaikakibito.com/blog/

連載「世界のニホンゴ調査団」

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