【シーラ・クリフさんインタビュー】着物に恋して35 年!自由な着こなしを楽しむイギリス人着物研究家

『ENGLISH JOURNAL』2022年9月号では、イギリス出身の着物研究家シーラ・クリフさんのインタビューを紹介。その中から一部を抜粋してご紹介します。

着物に恋して35 年、自由な着こなしを楽しむ着物研究家

シーラ・クリフさんは、イギリス出身の着物研究家です。日本在住37年、着物の魅力に気付いて35年というクリフさんは、大学で英語と着物文化を教えながら、着物の魅力を国内外に広める活動をしています。SNS では多くのフォロワーを持ち、インフルエンサーとしても活躍中です。色とりどりの着物を独自に着こなすシーラさん。ぜひSNSでその着こなしをご覧ください。

見たこともない深い赤色に一目ぼれ

シーラさんは24歳のときに初めて日本を訪れ、着物と出会いました。のみの市で偶然見つけた真っ赤な着物(後に長じゅばん[着物の下着]だと判明)に一目ぼれし、すぐに購入。それ以来、着物の魅力にはまったそうです。

I was just attracted to the huge range of bright colours. And the fabric was so soft and shiny. And there were beautiful patterns on so many of the garments ? woven patterns and also dyed patterns. It looked like painting on cloth. And it was so, just beautiful, and soft to touch.
And I was really attracted to the red in particular, because it was like the deepest red I’ve ever seen on cloth, dyed on cloth. (It) Was like a red red, ha-ha ? I don’t know how to describe it in English ? but just so incredibly red and deep. And I was really attracted to that.

ただその色とりどりの鮮やかな色彩に引かれました。その生地はとても柔らかくて光沢がありました。そしてその衣服の多くに、美しい模様が描かれていました―織り模様や染め模様もありました。まるで布に絵を描いているかのようでした。それはとにかくとても美しく、手触りが柔らかかったのです。
特に赤色に引かれました、染められた布では今までに見たこともないような深い赤だったので。赤の中の赤というか、ハハハ――英語でどう表現したらいいのか分からないけど――信じられないくらい赤くて深みがあったんです。私はそれをとても魅力的に感じました。

記録されていないファッション史

日本で洋服が普及したのは、明治時代。その普及の仕方は、現在のファッションの普及の流れとは全く異なっていたとシーラさんは話します。そして戦後の占領下になると、洋服が実用的だとして、日本人に受け入れられます。そうして初めて、一つの世代が洋服で育ったそうです。

But unlike (the) usual diffusion of fashion, the first wearers of Western dress are the people who are usually last in the diffusion of fashion. So, elderly men wear Western clothing, the government and then the administrative class and soldiers and the post office workers, and these people go into uniforms ? which is a political stance to join Western nations.
And women played with it for a little while in the Meiji period. But up, then up to the Second World War, most Japanese women were still wearing kimono. Western clothing was there, but the kimono line has not stopped.

しかし通常のファッションの普及の仕方と違って、洋服を最初に着た人たちは、大抵はファッションの普及の最後尾にいる人たちなのです。つまり、年配の男性が西洋の服を着て、政府、それから行政階級、そして軍人や郵便局員、これらの人たちが制服を着るようになります―これは西欧諸国に加わるという、政治的姿勢なのです。
そして明治時代には、女性も少しそれに加わりました。しかし第2次世界大戦に至るまでは、ほとんどの日本人女性がまだ着物を着ていました。洋服は存在しましたが、着物の流れは途絶えていなかったのです。

着物はまた盛り返してきている!

着物の最新のトレンドを聞いたところ、なんとネコの柄が女性の間ではやっているとのこと。また、ポリエステルの一種である「セオアルファ」という布地を使った着物や、洗える着物も人気だそうです。京都の丹後地方では常に新しい織り方を開発したりするなど、今でも着物は進化しています。ただ現代日本では、着物を日常的に着る人は少なくなりました。それでも以前に比べると着物は盛り返してきているようです。

And I really think the market is changing. I mean, a few years ago ? when I first came to Japan, for example, 1985 ? you only saw people going to weddings and people going to tea ceremony and ikebana. So, they were wearing it for a social function rather than because they liked kimono. But now those social functions are so few, but people are wearing it because they want to wear it. They’re wearing it because they like it.
And also, another thing that’s interesting is that when I first started teaching, everybody wore suits for graduation ceremony, but now everyone wears kimono. So, there are ways that kimono is coming back. Definitely coming back.

着物の市場は本当に変わってきていると感じています。何しろ数年前―例えば私が初めて日本に来た1985年は―結婚式に出る人、茶道や生け花の席に行く人しか(着物を着ているのを)見掛けませんでした。着物が好きだからというより、社会的な催し物のために着ていたんですね。でも今はそういう催し物がかなり少なくなったものの、みんなが着物を着たいから着るようになっています。好きだから着ているのです。
それともう一つ面白いのは、私が教員になったばかりの頃は、卒業式ではみんなスーツを着ていましたが、今はみんな着物を着ています。つまり、着物が戻って来ているんです。確実に盛り返して来ていますね。

着物を着てみたいけど、難しそう!と思うあなたへ

あなたは「着物は着心地が悪い、正しく着るのが難しそう」などと思っていませんか?「着てみたいけど、ハードルが高い・・・」と思っている方に、シーラさんからアドバイスをもらいました。

And everybody has to wear it badly first. So, even if you wear it badly, go ahead. Wear it. The only way to get better is to wear it a lot. And it’s OK.
Not everyone is gonna be a super fashionista in kimono. Just like there are only a few people who are super fashionistas in Western dress. So, just wear it, go ahead and do it.

誰でも最初は着るのが下手で当たり前です。ですから、着るのが下手でもいいから、挑戦してください。着てみてください。たくさん着るしか上達の道はないのですから。それでいいんです。
みんなが着物のすごいファッショニスタになるわけじゃないんですから。洋服のすごいファッショニスタが数人しかいないのと同じです。ですから、ただ着ればいいんです、とにかくやってみてください。

『ENGLISH JOURNAL』9月号でより詳しく紹介しています

最近ではテレビ朝日「徹子の部屋」に出演するなど、ますます活躍の場を広げているシーラ・クリフさん。『ENGLISH JOURNAL』9月号ではシーラさんの10分以上にわたるインタビューを、英語スクリプト、日本語訳、音声付きで紹介しています。着物だけでなく、日本文化が好きな方にはぜひ聞いてもらいたい内容です。

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シーラ・クリフ
シーラ・クリフ

1961年、イギリス生まれ。ロンドン大学卒業、リーズ大学大学院博士課程修了。十文字学園女子大学名誉教授。大学で英語と着物文化を教える傍ら、国内外で着物展覧会を企画・プロデュースしている。2002年、民族衣裳文化普及協会「きもの文化普及賞」を受賞。著書に『日本のことを英語で話そう』(中経出版)、『Sheila Kimono Style Plus シーラの着物スタイル プラス』(東海教育研究所)など。

取材:知夏七未 翻訳:春日聡子 写真提供:シーラ・クリフ

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