既成概念に捉われないサービスを生み出す着想の源は?【ビズリーチ社長 南氏】

各業界のエグゼクティブに英語習得までの道のりや、英語力がどう人生に 影響 したのかをインタビューする「エグゼクティブの英語」シリーズ。第一弾は株式会社ビズリーチの代表取締役社長南 壮一郎さんの登場です。

外資系銀行、楽天イーグルスの創業メンバーを経て、ビズリーチを起業、管理職や専門職に特化した会員制転職サイトを立ち上げて一躍名を馳せた南壮一郎さん。その後も、人事・採用領域を中心に画期的なインターネットサービスを次々と発表、業界に風穴を開け続けています。

こうしたビジネス観はどのようにして培われたのでしょうか。これまでの歩みとともに、今の時代に求められる人材や能力について南さんにお話を伺いました。

株式会社ビズリーチ代表取締役社長 南 壮一郎氏

1976年、大阪府生まれ。99年、米国タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレー証券東京支社入社。2004年、楽天イーグルスの創業メンバーに。その後、株式会社ビズリーチを起業、09年、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」開設。同アジア版「RegionUp」をはじめ、新サービスを続々発表。14年には世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズ2014」に選出されている。

画期的なサービスを次々と打ち出す

日本で初めて、求職者に課金するスタイルの転職サイトを立ち上げ、ベンチャー界に名を馳せたビズリーチの南壮一郎代表取締役社長。ボリュームゾーンである年収700万円までの求人情報を扱っていれば十分に利益が上がっていた2009年当時の業界にあって、ローンチ当初の求人を年収1000万円以上に制限したことも注目を集めた。

着想の源は、自らの求職経験を通じて抱いた違和感だ――「なぜないのか」「あればもっと便利なはず」。

以降も、既成概念に捉われることなく、アジア版転職サイト「RegionUP(リージョンアップ)」、AI 技術を活用した戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)」、地図で仕事が探せるアプリ「スタンバイ」など、画期的なサービスを次々打ち出している。

「ビジネスを通じて課題解決の 仕組み を作ることが好き」と公言する南さんのモットーは「好きなときに、好きな人と、好きなことをやる」。こうした南さんのビジネス観はどのように培われたのか。

「空気を読む」日本から米国へ留学したが

父親の仕事の関係で、幼稚園の終わりから中学1年までをカナダで暮らした南さん。気づいたときには英語を話していたという。苦労したのはむしろ母語である日本語の習得だった。現地では日本人学校に通い、帰国してからは静岡県にある公立の中学校で「空気を読む」日本の文化に自らを適応させながら日本語を習得した。高校は静岡県の進学校に進んだが、日本の最高学府である東大が、世界の大学ランキングでは40位程度であることに衝撃を受け、今ほど留学情報が行き渡っていなかった時代に自らの手と足を使って情報を集めて米国タフツ大学に留学した。

会話ができたとはいえ、英語力自体は中1レベルで止まっていたので、ビジネスで使えるレベルの英語を身に付けられたのは大学に通ったおかげです」

こう語る南さんだが、米国留学で得たのは、語学よりむしろ多様な文化や価値観の中でのコミュニケーション力だった。数カ月前まで高校生だった南さんにとって、あいさつ代わりのハグでさえ戸惑いの対象。授業では、とにかく発言しなければ評価されない。「空気を読む」文化の日本から来た南さんは大いに困惑した。「相手の思いもよらないところで勝手に傷ついたこともあった」と振り返る。

「でも、壁を乗り越え、落とし穴に落ちながら前に進んで行くことが、自分の成長過程においては必要なことでした」

日本と自分を知るために米国の大学から逆留学

在学中、南さんは思い切った決断をする。第2外国語として中国語を学んでいた南さんは、1年間の中国留学の準備を進めていたのだが、ぎりぎりのタイミングで予定を変更、なんと日本への逆留学を決めたのだ。

「アメリカでは、自国の文化、経済、習慣など、日本や日本人について説明しなくてはいけない場面に数多く遭遇しました。日本では体験することがない機会だった。他の国からの留学生は、誇りをもって国や民族の代表のように自らのアイデンティティを語る。グローバルに活躍するなら、自身のルーツを知り、理解し、発信することはできて当然。自分自身や自分の周囲について学ぶ機会を持たずに社会人になっていいのかという思いが強くなったのです」

南さんは、大学3年時に上智大学に1年間 “留学”。日本と自身について大いに学ぶ機会を得た。こうして日本と米国に身を置き、自身のアイデンティティを作り上げていく中で、どんな環境においても自分の意見を持ち、それをしっかり発信する姿勢を身に付けていったのである。

異文化を受け入れ、理解しようとする姿勢が大切

大学卒業後は、モルガン・スタンレー証券東京支社に入社して投資業務に従事、次にはスポーツビジネスに携わる夢を叶えるべく楽天イーグルスの創業メンバーとなり、その後、自ら会社を起こした。

「全大学生に留学をすすめたい。英語習得のメリットももちろんありますが、それより、異文化に触れ多様な価値観の中で生き残るためのコミュニケーション能力、アジリティ、柔軟性を学んでほしいと思います。バイリンガルより大切なのはバイカルチャー。異なる文化を受け入れ、理解しようとする姿勢です。言葉も民族もほぼ単一といっていい日本は世界の中でも稀な国。稀であることを理解することはグローバルに活躍するための第一歩です」

前提 ">世界が相手の仕事なら英語力の習得は大 前提

南さんは、14年には世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出され、世界のキーパーソンたちと交流をもつなど、今まさにグローバル・リーダーの一人として認識されている。南さん自身は、グローバル人材をどう捉えているのか。

「まず必要なのは基礎的なビジネスの力だということです。ビジネスで最も大切なのは価値を生み出すこと。グローバルもローカルも関係ありません。本質的な力がない にもかかわらず グローバルを叫ぶのは本末転倒。その上で、多様な価値観の中でも自分の意志を持ち、それをきちんと表現できるのがグローバル人材でしょう」

その 前提 として「世界を相手に活躍したいのであれば、英語力を持っていることは当たり前中の当たり前」だときっぱり。

「サッカーの技術がないのに選手になろうという人はいません。サッカーの練習をしますよね。英語が必要な仕事をするのに英語力がないなら、今すぐ身に付けるべき。チャンスが来たらできるようになるなどというのは大間違いです。波に乗るには、サーフボードで沖に出ている状態でないと間に合わない。『波が来た、さぁ出かけよう』では遅いのです」

帰国子女だからこともなげにそんなことが言えるのだ。そう思う人がいる かもしれない 。しかし、これまでの南さんの軌跡をたどれば、帰国子女であろうがなかろうが、必要だと思えば最速最短の手段を自ら模索して すぐに 実行に移していたに違いない。実際、「もし幼少期に英語を身に付ける機会がなかったらどうしていたか」と問うと、即座にこんな答えが返ってきた。

「簡単ですよ。朝みんなより早く起きて、レアジョブなどのオンラインサービスで英会話をし、夜は外国人ばかりいるバーに飲みに行き、週末は浅草に行ってボランティアで外国人相手の観光ガイドをします」

多様化する就業スタイル。働き方を考える時代に

南社長率いるビズリーチでは、16年にも新たなサービスをスタートした。それが、大学生が自らの大学のOB、OGと出会えるプラットホーム「ビズリーチ・キャンパス」だ。そこには若者たちに向けた南さんの思いがある。

「アメリカの大学で感じたことの一つが、日本に比べて学生と社会人を隔てる垣根が低いこと。一度社会に出た後、大学に戻って学び直す人も多いし、OBやOGが大学の教壇に立って自らの専門分野を教えるケースも少なくありません。学生は仕事の現場を知る機会に恵まれていました。社会人から現場の声を聞くことが学生にとってプラスになるのは明らかです」

サービス開始の背景には、時代の変化もある。

「インターネットの普及で、情報は早く安く大量に送れるようになりました。これによってビジネスモデルの賞味期限はどんどん短くなっている。変化する価値観に順応し続けることが必要な時代になったのです。生き延びるのは、強い人ではなく、変化し続けられる人。この時代に会社と運命共同体であり続けるのか、会社がどうなろうといつでもどこでも成果を残せる人材になるのか。画一的な就職観はもはやありません。これからは多様な働き方が当たり前になることを理解しておくべきだと思いますね」

情報でビジネスを 展開 している南さんならではの提言だ。さらにインターネットが生んだ情報格差にも言及する。

「時代の変化に対応するためには、情報を多面的、多角的に仕入れることが必要です。今の大学生を見ていると、情報量の面で二極化が進んでいる。自ら情報を得られる人とそうでない人の差はこれからどんどん広がるでしょう。情報量によって、生み出せる価値は大きく異なってきます。この点からも、情報量を飛躍的に増やせる英語を身に付けない手はありませんよね」

南さんの論旨は明快至極。世界に飛び出そうとする人への厳しくも力強いエールだ。

南さんからのメッセージ

僕は、世の中考え過ぎの人が多いと思います。周囲の目も気にし過ぎる。やりたいことがあるならやればいい。Just do it! =とにかく実行あるのみ、です。そこに理由など必要ありません。

逆に、やりたくなければやらなければいい。起業でも何でも理由をつけてやらないのは、結局はそれほどやりたくないからでしょう。心からやりたいと思うなら自ら積極的に取り組んでいるはずですから。

グローバルに活躍したい人にとって、英語が話せるのは大 前提 。本当にそういう働き方がしたいと考えているなら、どんな方法を使ってでも身に付けられるはずです。

No reason! 自分のしたいことにいちいち理由など考えなくていい。とにかくやってみましょう!

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www.bizreach.jp br-campus.jp www.careertrek.com
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文:佐藤淳子 写真:遠藤貴也 編集:GOTCHA! 編集部

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