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故ジョン・ベルーシの破天荒な生涯をたどる映画『BELUSHI ベルーシ』

FILMOSCOPE【2022年2月号】

気になる新作映画について登場人物の心理や英米文化事情と共に長谷川町蔵さんが解説します。

今月の1本

『BELUSHI ベルーシ』(原題:BELUSHI)をご紹介します。

※動画が見られない場合はYouTubeのページでご覧ください。

人気お笑い番組「サタデー・ナイト・ライブ」などに出演し、破天荒だが憎めないキャラクターで多くの人に愛された故ジョン・ベルーシ。アメリカ、イリノイ州で育ち、シカゴの即興コメディー劇団「セカンド・シティ」からキャリアをスタート。コメディアン、ミュージシャン、俳優として成功を収めるも、人気絶頂の1982年に33歳という若さで薬物の過剰摂取により亡くなった彼の、アメリカンコメディー界で輝き続けた嵐のような生涯をたどる。

希代のエンターテイナー、故ジョン・ベルーシの栄光と苦悩

アメリカでコメディアンがスターになる最も手っ取り早い方法は、1975年から毎週土曜日に生放送でオンエアされ続けている老舗お笑い番組「Saturday Night Live」(サタデー・ナイト・ライブ、以下SNL)のレギュラー出演者になることだ。もしこの番組で人気が出れば、番組卒業後には(場合によっては出演中から)テレビドラマやハリウッド映画からの出演オファーが待ち構えている。

近年ではクリステン・ウィグがたどったこうした成功ルートを開拓したのが、ダン・エイクロイドやビル・マーレイ、チェビー・チェイスといった番組創成期のレギュラーメンバーだ。中でも突出した人気を誇っていたのが、ジョン・ベルーシである。しかし彼は現在、他のメンバーのように大御所として業界に君臨していない。なぜなら1982年に33歳の若さで亡くなってしまったからだ。

『BELUSHI ベルーシ』はそんな彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画である。監督のR・J・カトラーは「SNL」や『アニマル・ハウス』(1978)、『ブルース・ブラザース』(1980)といった代表作の映像はもちろん、幼少期の写真、improvisational theater(即興劇団。簡単な設定だけを決めて演じるコメディー劇団のこと)、果てはベルーシの元妻が保存していた家庭用ビデオ映像や新たに作ったアニメなど、ありとあらゆる素材を駆使して不世出のコメディアンの素顔を浮き上がらせてみせる。

アナーキーでパワフルな芸風やドラッグのオーバードーズ(過剰摂取)で亡くなったことから一見、破滅型天才の典型に見えるベルーシだが、妻に宛てた手紙の文面からは、繊細でロマンチックな人間だったことが強く感じられる。そう、常人より感受性が強くないと、人を笑わせ続けることなんかできっこないのだ。親友だったエイクロイドをはじめ、既に故人である映画監督のハロルド・ライミスやペニー・マーシャルらのコメント自体が、アメリカンコメディー史の貴重な証言になっていることも意識しながら見てほしい力作だ。

『BELUSHI ベルーシ』(原題:BELUSHI)

『BELUSHI ベルーシ』

Belushi © Passion Pictures (Films) Limited 2020. All Rights Reserved.
Cast & Staff

監督・脚本:R・J・カトラー/出演:ジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイド、チェビー・チェイス、アイヴァン・ライトマン、ジェームズ・ベルーシ、ローン・マイケルズ他/公開中/配給・宣伝:アンプラグド

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年2月号に掲載した記事を再編集したものです。

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長谷川町蔵(はせがわ・まちぞう)ライター&コラムニスト。著書に『あたしたちの未来はきっと』(タバブックス)、『インナー・シティ・ブルース』(スペースシャワーブックス)、『文化系のためのヒップホップ入門3』(アルテスパブリッシング)など。