英語が話せない理由がわかる!『ラジオ英会話』でおなじみ大西泰斗先生の本【ブックレビュー】

「英会話を続けているけど、あんまり成果が出ない」そんなあなたに、ぴったりの1冊を紹介します。特に、大西泰斗(おおにし ひろと)先生の『ラジオ英会話』を聞いている方なら、かなりの相乗効果を感じられるはず。

朝ドラでも話題!ラジオ英会話

こんにちは、ライターの尾野です。

このところ、NHKの朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が話題になっていますね。

昭和・平成・令和に渡る、祖母・母・娘の三世代の暮らしを描いたファミリーヒストリー。そしてどの世代にも、ラジオの英会話番組が深く関わっています。

このコンセプトを聞いたとき、私なぞは「語学番組出身のディレクターがNHK内で偉くなったのでは」「しかしドラマとして面白いのかね」などと、あれこれ妄想してしまいましたが、今では、連日ほぼ泣きながら見ています。

それにしても驚いたのは、 ラジオの英会話番組の歴史の長さです。放送開始は、なんと1925年(大正14年)!

100年近くも英語を学んできたことになりますが、どうして多くの日本人が英会を苦手としているのでしょうか?

「話すための英文法」とは?

その答えがみつかるのが、この本『それわ英語ぢゃないだらふ』です。

著者の大西泰斗先生は、現役のNHK『ラジオ英会話』講師

本書によれば、日本人が英語を話せない 原因 のひとつは、いわゆる「学校文法」の 影響 だそう。

確かに、学校で習う英文法は、用語が難しい上に理屈っぽく、しかもせっかく覚えても頻繁に例外があってやっかいです。

大西先生は、英語を話すためには「学校文法」とは別のものが必要だと言います。

(中略)話し、書くための文法はできうる限りシンプルで心理的に妥当である必要があります。特に「話す」ためには、頭のなかにコンパクトに納めることができなければなりませんし、心理と操作が直結していなければ反射的に使うことはできません。会話では頭のなかの「規則集」を参照している時間はないからです。
例えば、苦手とする人も多い「時制の一致」。「主節の動詞が過去形なら、従属節の動詞も過去形になる」というあれです。

とにかくすべて時制をそろえればいいなら悩まないのですが、いくつも例外があって分かりにくいんですよね。

ネイティブスピーカーも、「ここは一致させよう」「ここは例外だ」と考えながら英語を話しているのでしょうか?そんなはずはないと思いますが・・・。

本書では「時制の一致」を次のように説明しています。

I think he is right .

私は、彼は正しいと思います。

この文でthinkが過去形になるとisも過去形になりますね。
I thought he was right .

私は、彼は正しいと思いました。

なぜこうなるのでしょう?本書では、次のように説明しています。
この文は「私が思った」と言った後、思った内容を「彼が正しいと、ね」と説明していることになります。つまり、thoughtが「箱」だとすればhe was right はその「中身」の関係にあるのです。
本書に言わせれば、 主節が牛乳パックで、従属節はその中身の牛乳 。牛乳パックに「2019-10-20」と印字してあったら、牛乳パックが古いだけでなく、中身の牛乳も古いと考えて間違いありません。

だから、ネイティブスピーカーは、「主節が過去形なら従属節も過去形」と、パッと 判断 できるというわけです。

しかし、 箱は古くても中身は古くないという場合もあります 。その際に、「時制の一致」の例外が起こるのです。

Don’t you remember I told you that the earth is round?

私が地球は丸いと言ったことを覚えていないのですか? 

本書の解説はこちら。
この文で話し手は、自分の発言内容を単にリポートしているわけではありません。the earth is roundが「今も成り立っている」ことに焦点を当てているのです。意訳すれば「『地球は丸いのだ』と教えてあげたのに、覚えていないのですか?」と言っています。単なるリポート以上の意味が加わっているのです。
社会人の方なら、職場の経理担当者などから、「請求書の締めは毎月20日だって、前にも言いましたよね!」と言われたことはありませんか?あの感じですね。

「言った」のは先月だから過去のことですが、請求書の締め日が毎月20日「である」ことは、「今も成り立っている」。

話し手が「これは今も成り立っている」と意識すれば、「時制の一致」が破られる というわけです。

機械的に時制をそろえるのではなく、話し手の意識がどこに向かっているかによって、時制が 一致する かしないかが決まるんですね。

本書にはこんな文も挙げられています。

The front desk informed me that you are dissatisfied with your room.

フロントからお部屋にご不満であると連絡を受けましたが。

これはホテルのマネージャーの発言。きっと、フロント係から「お客さまはこちらの部屋はお気に召さないそうです」という連絡を受けたのですね。

連絡を受けたのが過去ですから(The front desk informed me)、その中身もyou were dissatisfied with your room と過去形にしてもよいのですが、大西先生は「もし私がマネージャーなら使うのはare」としています。

wereなら単にフロントの発言をリポートしただけのことですがareを置くことにより、「今ご不満なのですね」と客の不満を目の前に置いて発言していることが伝わるからです。(中略)わざと現在形を残すことによって、プラスアルファの意味合いが響くのです。
フロント係から連絡を受けたのは過去でも、お客さまが不満なのは過去のことではありません。areという現在形を使うことによって、「私はあなたの不満が今も続いているのを分かっていますよ」というニュアンスが出るわけですね。

こう言ってもらえば、お客さまの気持ちも少しは鎮まるかもしれません。

ややこしいように見える文法事項にも、その裏には血の通った人間の気持ちがある のです。こう捉えていくと、文法もすんなり覚えられるし、口に出すときもいちいち考えこまないで済みそうです。

日本語訳ではなく「イメージ」で考える

日本人が英語を話せない 原因 はほかにもあります。それは、単語を「意味=イメージ」ではなく「日本語訳」で覚えていること。

というより、単語学習と言えば、英単語とその日本語訳を対で覚えること、と思っていませんか?私はそうでした。

しかし、「日本語訳だけによる単語(表現)学習には低い限界がある」と大西先生。

こんな例を挙げています。

I reached Shibuya Station.

渋谷駅に着きました。

I arrived at Shibuya Station.

渋谷駅に着きました。

どちらも正しい英文であり、日本語訳も合っています。 reach もarriveも「到着する」ですよね。

しかし、ネイティブスピーカーにとっては、 reach とarriveは明らかに違います。

reach は「手を伸ばしてつかむ」という対象に直接及ぶ 動作 、ボクサーの「リーチ」を考えれば手に入るイメージです。
手を伸ばして、目的物をがしっとつかみ取るイメージです。上の英文で言えば、「渋谷駅にやっと着いたよ!」という感じでしょうか。
arriveは一方、「足を踏み入れる」という単なる行為。 従って 自動型で使われ、場所には「どこでその行為が行われたのか」を示すat Shibuya Stationなどが使われるということになります。 
「なるほど!」と思いませんか? reach とarriveのニュアンスの違いだけでなく、arriveだけがatを必要とするわけも、しっくり来た感じがします。

reach とarriveの「日本語訳」を丸暗記するだけでは、この使い分けはできません。英語を話そうとするなら、それぞれの単語の「イメージ」で考える必要があります。

単語の「日本語訳」を覚えているだけでは、自信を持って英語を話すことはできないのです。

『ラジオ英会話』のお供にぴったり

大西先生が講師を務める『ラジオ英会話』は、よくあるレッスンとは一味違います。

私が特にいいと思っているのは、「GRAMMAR IN ACTION  文法を実践で使ってみよう」というコーナー。

日本語でお題が出され、それを、お手本なしで自分の力で英語で言ってみるのです。

この4月から聞き始め、最初はなかなかうまく英語が出てきませんでしたが、最近ではだいぶスムーズに話せるようになりました。

これも、大西先生の文法解説のおかげ。 頭で理解するのではなく、ハートで納得できるという感じなので、あれこれ考える必要がなく、スーッと(行かないときもありますが)英語が口から出てくる 感じなのです。

本書は、英会話をやり直したいすべての大人に 有効 ですが、特に『ラジオ英会話』リスナーにはおすすめ。

番組で使われている、「英語は語順の言葉」「説明ルール」「指定ルール」といった独特な言い回しを復習でき、毎日の学習がより楽しくなりそうです。

年末年始のお時間のあるときに、ぜひ手に取ってみてください!

こちらの記事もおすすめ!

ej.alc.co.jp

尾野七青子 都内某所で働く初老のOL兼ライター。

SERIES連載

2024 04
NEW BOOK
おすすめ新刊
英会話は直訳をやめるとうまくいく!
詳しく見る
メルマガ登録