日本人初のBBCリポーターが語る、人に伝える技術と英語学習

『ENGLISH JOURNAL』2021年12月号から、BBCアジア経済特派員、大井真理子さんのインタビューの音声をスクリプトと和訳を併せてご紹介します。

大井真理子さんは、日本人初のBBCリポーターです。2006年にBBCに入局し、現在はシンガポールを拠点に経済番組のキャスターも務めています。大井さんは、16歳でオーストラリアに留学するまでは英語を熱心に勉強していなかったものの、滞在中にジャーナリストになる夢を抱いたそうです。

バブルの外を遊軍取材した東京オリンピック

大井さんはこの夏、東京オリンピックを取材するために活動拠点のシンガポールから日本を訪れました。

My official role was a roving reporter. So, because of the COVID-19 restrictions, all my colleagues from the UK or Singapore, anywhere else, had to stay within the IOC bubble. So they could only go to the Olympic venues, and their hotels and their cars in between. And so we have one correspondent who’s based in Tokyo. And because I hold a Japanese passport, I could quarantine for 14 days at my parents’ house and then go outside of the bubble to speak to the Japanese public.

So, basically, all my colleagues who were inside the bubble did all the sports stories, and I was the one who, you know, when someone won a gold medal in skateboarding, for example, you know, I was the one who would go out and get the reaction from the public, or we got to go to, for example, Miyagi, where they were allowing qspectators. So that was my official role.

「私の公式な役割は、遊軍記者でした。新型コロナウイルス感染症に伴う制限のため、イギリス、シンガポール、その他の場所から来る私の同僚たちは皆、IOCのバブル内にとどまる必要がありました。彼らが行くことができたのは、オリンピック会場と滞在ホテル、そしてその間の車内だけでした。ですから、東京に拠点を持つ担当記者を1人使っているのです。私は日本のパスポートを持っているので、14日間両親の家で(自己)隔離することができ、その後、日本の市民の皆さんとお話しするためにバブルの外に出ることができました」

「基本的に、バブル内にいた私の同僚たちみんなが全てのスポーツ関連の報道に携わって、私は、例えば誰かがスケートボードで金メダルを取ったら、街頭に出て皆さんの反応を取材したのが私で、例えば観客を入れていた宮城に行くこともできました。それが私の正式な役割でした」

何より大切なのは「平易に話すこと」

東京オリンピックを取材する上で、「日本のことをよく知らない海外の視聴者にとって十分分かりやすい説明を心掛けると同時に、日本に住む人たちにとって当たり前のことを言っているように聞こえない」ことに留意したという大井さん。コミュニケーションを取る上で、英語学習者の私たちの役に立つテクニックについても、アドバイスを頂きました。

They always say, when I’m talking to the camera, you know, talk to the camera as if that’s your grandma or your uncle, you know, who’s sitting in your living room. And he goes, “OK, so what’s happening in Afghanistan?” And can you actually explain in a way that he would understand? And that, to me, really helps.

And in a way, because my husband is a golfer , so doesn’t really have a lot of interest in business news. So when I’m doing business news, I usually ask him and go, “Do you understand this story?” And he goes, “No.” Or, you know, “I kind of I understand it, but I don’t really know why I should care.” And that’s the moment I go, “OK, I need to actually explain this more clearly.”

So I think that’s a tip that I think everyone could use . Because at the end of the day, no matter how smart you might sound by using all the difficult words, if the person sitting in front of you doesn’t understand it, then there’s no point . So, yeah, that would probably be my tip.

「いつも言われるのが、カメラに向かって話すときは、カメラが自宅のリビングに座っている祖母や叔父であるかのように話し掛けなさい、ということです。叔父に『オーケー、それでアフガニスタンで今何が起きているんだい?』と聞かれたとします。そして実際に、彼が理解できるように説明できますか? 私にとってそれがとても役に立ちます」

「私の夫はゴルファーなので、ある意味ビジネス関連のニュースにはさほど興味を持っていません。だから私がビジネスニュースを扱うときは、よく夫に聞くんです、『この話、分かる?』と。すると夫は『いいや』か『なんとなく分かるけど、なぜ関心を持つ必要があるのかまでは分からない』と言います。それこそが、『よし、もっと明快にこれを説明しなくては』となる瞬間なんです。

「これは誰もが使えるヒントだと思います。詰まるところ、難しい言葉を使ってどれだけ賢そうに聞こえたところで、目の前に座っている人が理解できなかったら意味がないのです。それが恐らく私からのアドバイスです」

BBCリポーターになるための英語学習

大井さんはとても美しいブリティッシュイングリッシュを話します。非英語話者としてどのようなトレーニングを行ったのでしょうか。

I think over the years, I was listening to . . . The easiest way to absorb accent to me is listening to a lot of radio, or now podcasts. When I first got to Australia, that’s what I did. You know, I was just listening to radio all the time so that my ears were used to listening to English. Because you could read and write, but if you can’t understand when someone says something to you, then there’s no point.

So I was listening to a lot of that. And so I used a similar method by using a lot of BBC’s Radio 4 podcasts, because they tend to be very British in terms of accent, whereas if you listen to BBC World Service, it’s a lot more international. So you can listen to, like, African accent, to Singaporean accent, to Malay accent. So I could fit into World Service, but if I wanted to change my accent to British, then I just listened to Radio 4.

「多分長年にわたって聞いていたのが……。私にとって一番口調を吸収しやすい方法は、ラジオ、もしくは今だったらポッドキャストをたくさん聞くことです。初めてオーストラリアに行ったときにやったことが、それです。とにかく常にラジオを聞いていました、英語を聞くことに耳が慣れるように。なぜなら、読んで話すことができても、誰かが何か言ってきたときに理解できなければ意味がないからです」

「ですからたくさん聞いていました。BBCのラジオ4ポッドキャストを多用することで、同じ手法を取りました、ラジオ4はアクセントという点では非常にイギリス的だからです、一方、BBCワールドサービスを聞くともっと国際的です。例えばアフリカなまりから、シンガポールなまり、マレーなまりまで聞くことができます。ですから私(の英語)はワールドサービスだったら違和感がなかったかもしれませんが、自分の話し方をイギリス風に変えたいと思ったので、とにかくラジオ4を聞くようにしました」

BBCリポーターへの道のり

『ENGLISH JOURNAL』12月号では、大井さんが、英語が全くできなかったところから、どのように英語を身に付け、BBCリポーターにまでなることができたのかを詳細にお話しくださっています。ぜひ、本誌でお楽しみください。

取材:知夏七未、翻訳:春日聡子、写真提供:BBC、写真(4枚目):安宅雅美(EJ編集部)

大井真理子(おおい・まりこ) BBC アジア経済特派員。慶應義塾大学環境情報学部の1 学年終了時に、オーストラリアRMIT 大学ジャーナリズム学部に入学。2006 年にBBCワールドニュースに入局し、シンガポールを拠点に日本人初のBBCリポーターとして時事ニュースなどを報道する他、特集番組の制作など幅広く担当している。2013 年にニューヨーク支局、2014 年にロンドン本社でもリポーターを務めた。2021 年10 月より特派員に就任。

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