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有名ミュージカルの「名シーン・名ゼリフ」を練習して英語のリズム感を鍛えよう!

リズムで学ぶ英語の世界

文法、語彙、発音などの影に隠れて、英語の「リズム」を習得する大切さは、多くの英語学習者の盲点となりがちです。英語という言語にとって「リズム」がいかに大切かについて、俳優そして英語教育者として活躍されている岩崎MARK雄大さんと一緒に考えていきましょう。

「あれ、この曲なんだっけ。」

ふと街で流れてきた曲のメロディーに気を取られ、口ずさんでみる。歌詞は分からないけど、

「タタータータタタタータータータタター」

思ったより先の方まで旋律を続けられる自分に驚く。よく耳にしているうちに、身体が覚えていたんだ・・・

このように、知らないうちに曲を覚えてしまっていた経験、皆さんにもあるのではないでしょうか?こういう耳から得た記憶には、いわゆる字面から「暗記する」こととは大きく異なる、無意識のうちに身についた身体的な感覚があるように感じられます。

言葉のリズムの習得に一番おすすめの方法は、この耳を使った身体的な記憶を、活用していくこと。つまり、繰り返し聞いて、繰り返し声に出すことです。

ミュージカルは、「繰り返し聞いて、繰り返し声に出すこと」と相性がとても良いので、英語のリズムを体得するための教材としても、バッチリです。もちろん今までミュージカルに触れてこなかった方でも、簡単に挑戦できるのでご安心を!

それでは早速、おすすめミュージカル曲を紹介していくので、一緒に見ていきましょう!

マネして覚えたい英語ミュージカルの「名シーン・名ゼリフ」

さて、ではどんなミュージカル曲で練習してみるのがいいのか。正直なところ、一番いいのはご自分でハマった曲、好きな曲で練習することです。「この曲が好き!」という曲がある方は、ぜひその一曲をマネして練習してみてください。

ですが、まずここでは、リズムの分かりやすさや、実践的な観点から、おすすめのシーン・セリフ(曲)三つをご紹介していきます。

1.「Seasons of Love」ーー『RENT』

まず一曲目は、1990年代の伝説的ミュージカル『RENT(レント)』より、超有名曲「Seasons of Love」です。『RENT』は、オペラ『La Boheme』のストーリーをモチーフに、ニューヨークのアーティスト街でAIDSと戦いながら生きる若者たちを描いた群像劇です。

初演キャストのオーディションで選ばれた新人たちは今や大スター。『アナと雪の女王』で世界的に知名度を上げたイディナ・メンゼルも、『RENT』の初演キャストでデビューしています。また、作家で作曲家のジョナサン・ラーソンがプレビュー公演初日前夜に急死してしまったことも伝説化に拍車をかけました。2005年にはほぼオリジナルキャストで映画化され、ミュージカル映画としても大ヒットしています。

すべての曲のメロディーが印象的で耳に残り、そのメロディーが強弱のリズムと自然に連動しています。ジョナサン・ラーソンは、言葉とメロディーを優しく合わせる天才です。

「La Boheme」など、スラングが詰まった曲もありますが、『RENT』の曲は基本的に言葉もあまり難しくなく、現代的で、込められた思いもシンプルでわかりやすくなっています。舞台版は、乱雑に散らかったセットの中で見立てを楽しむような作りなのですが、広く出回っている映画版はミュージカル初心者にもスッキリ見やすいです。

「Seasons of Love」はキャッチーなメロディーで広く愛されている曲ですが、リズムの強弱が分かりやすく、言葉の数も少ないので、初心者の方にもぜひチャレンジしてもらいたいです。

『RENT』より「Seasons of Love」

Five hundred twenty five thousand six hundred minutes

ター タータータタ ターターターター

Five hundred twenty five thousand moments so dear

ター タータータタ ターターター ター

Five hundred twenty five thousand six hundred minutes

ター タータータタ ターターターター

How do you measure? Measure a year?

ター ター ター タータータ タ ター

In daylights,

ター

in sunsets,

ター

in midnights,

ター

in cups of coffee

ターター

In inches, in miles, in laughter and strife

タータ タ タータータ タ ター

In five hundred twenty five thousand six hundred minutes

ター ターターータ ターターターター

How do you measure a year in a life?

ター ター ター タータ タ ター タ タ ター

How about love?

ターター ター

How about love?

ターター ター

How about love?

ターター ター

Measure in love.

タータ タ ター

Seasons of love.

タータ タ ター

2.「Valjean's Soliloquy」ーー『Les Misérables』

二曲目は、もう少し語りに近い曲です。ブロードウェイ・ミュージカルの金字塔の一つで、今でも世界中で愛されている『Les Misérables(レ・ミゼラブル)』より「独白(Valjean'sSoliloquy)」。

『レ・ミゼラブル』はヴィクトル・ユーゴーによる同名小説をミュージカル化したもので、最初フランス語で作られた作品を、イギリスの王立シェイクスピア劇団(RSC)で英語化上演したところから世界的ヒットになり、現在も世界中で上演中。日本でも最近、日本語版の上演が全国ツアーを回っていました。

また、2012年にヒュー・ジャックマン主演で公開された映画版は、ミュージカル映画として初めてスタジオで前録りした歌に口パクで合わせるのではなく、撮影現場で生歌を録音して制作しました。この撮影方法により、より歌と演技に深みが感じられる名ミュージカル映画となっています。

物語は、貧しい生活の中、甥に食べさせるためにパンを盗んだ罪で服役中のジャン・バルジャンが仮釈放されるところから始まります。釈放されるや否や、厚意で匿ってくれた神父の元から銀食器を盗もうとしてすぐに捕まるバルジャン。ところが神父は、バルジャンを連行してきた男たちに、これはプレゼントしたものだと伝えます。そして、それなのになぜ一番高価な贈り物を置いて行った?と問いかけながら、バルジャンに更に銀の燭台を渡します。

そこで初めて人の慈悲に触れて心を打たれたバルジャンが歌うのが、この「Valjean’s Soliloquy」です。

『Les Misérable』より「Valjean's Soliloquy」

What have I done?

ター ター ター ター

Sweet Jesus, what have I done?

ター ターター ター ター ター

Become a thief in the night,

タータータ タ ター

Become a dog on the run.

タータータ タ ター

Have I fallen so far

ター ター タータ タ ター

And is the hour so late

ター タータタ ター

That nothing remains but the cry of my hate

タータ タタータ タ ター タ タ ター

The cries in the dark that nobody hears

ター タ タ タータータタ ター

Here where I stand at the turning of

the years.

ター タ タ ター タ タ タータ タ タ ター

スピードは少し速いですが、リズムは比較的追いやすい曲です。「一体どうしてこうなってしまったんだ」という想いを込めて歌ってみましょう。ご紹介した音声は初演キャストの方が歌っているものですが、インターネットで検索すると、ヒュー・ジャックマンによる映画版など、色々な方のバージョンが見つかります。同じ強弱でもどのようなバリエーションが出るのか聴き比べても面白いでしょう。

3.「My Shot」 ーー『Hamilton』

三つ目は、上級者向けの一曲。2015年に開幕してミュージカル界を激震させ、2016年にトニー賞を総なめ、グラミー賞も受賞した『Hamilton(ハミルトン)』です。今世界で一番大ヒットしているミュージカルと言っても過言ではありません。

難易度はかなり高いですが、とにかくカッコいい。ラップのスピードの速さがとても難しく感じさせるのですが、実はネイティブが日常的に喋るリズムとトーンに最も近かったりもします。

アメリカ建国の父の中でも、業績の大きさの割に知名度が低かったアレクサンダー・ハミルトンの生涯を、ラップで描いていくミュージカル。後にディズニーアニメ『モアナと伝説の海』の作曲家としても活躍する鬼才リン=マニュエル・ミランダが脚本・作詞・作曲を担当、初演では主演も務めています。

日本では、映像化されたブロードウェイ初演キャストの上演をDisney+で字幕付きで観ることができます。

ここでは、ハミルトンが自己紹介的に歌い上げる序盤のラップナンバー「My Shot」をご紹介します。幼少期より苦労をしたハミルトンがニューヨークに渡り、出会ったばかりの若者たちの前で、俺は一度しかない自分の人生、チャンスを絶対に無駄にしない、と強い意志を断言する一曲です。

『Hamilton』の曲は全体的に難易度が高いので、一曲だけに絞って、集中的に完コピするのがおすすめです。

『Hamilton』より「My Shot」

I am not throwing away my shot

ター ター ター ターター

I am not throwing away my shot

ター ター ターターター

Hey, yo, I'm just like my country

ターター タ タ ター

I'm young, scrappy and hungry

ター タータ タ ター

And I'm not throwing away my shot

ターター ターターター

I'ma get a scholarship to King's College

ターターターターター ター

I prob'ly shouldn't brag, but dag, I amaze and astonish

ターターターター タ タター タ タター

The problem is I got a lot of brains, but no polish

タータ タ ター ターター ターター ター

I gotta holler just to be heard

ター ターターター タ タ ター

With every word, I drop knowledge

タータタ ターター ター

I'm a diamond in the rough, a shiny piece of coal

ター タータ タ タ ター ターターター

Tryin' to reach my goal, my power of speech unimpeachable

ターターターターター ターターター

Only nineteen, but my mind is older

ターターターターター

These New York City streets get colder, I shoulder

ター ター ター タータータータ タ ター

Ev'ry burden, ev'ry disadvantage

ター ターターターター

I have learned to manage, I don't have a gun to brandish

ター ターターターター ターター

I walk these streets famished

ターター ター

The plan is to fan this spark into a flame

ター タ タ ターターター ター

But damn, it's getting dark, so let me spell out the name

ターターターター ター タ タ ター

一曲だけの映像など、断片的なものはYouTubeでも見つけることができるかもしれません。 これをマスターできた人は、なかなかの達人なので、ぜひどこかで披露してください!

セリフの完コピを目指すべき?それとも?

『Hamilton』でハードルを上げてしまいましたが、ここまでのリズム練習の話、実は歌詞を全て追わなくても大丈夫です。たくさん並べた歌詞になぜ、わざわざ「タータ」の強弱をつけたのか。そうなんです、リズムの感覚を身に付ける練習としては、歌詞を歌えなくても「タータ」で歌うだけで、あるいは「タータ」を意識して聴くだけでも、しっかりリズム感の練習になります。そしてその感覚が身に付いてくると、他の英語を聞いたときにも、強弱のリズムが聞こえてくるようになります。

ポイントは、同じものを何度も聴くこと!サントラをかけ流しにする方が楽しいかもしれませんが、リズムの練習のためには、その中で特に気に入った一曲をリピート再生する方が効果的です。

まずは「タータ」のみでやってみて、何を言っているのか少し気になってきたら、短いフレーズだけでも歌詞を調べて、覚えてみてください。そこからは、覚えているところは歌詞で、残りは「タータ」で歌っていきましょう。徐々に「タータ」の部分が減っていけば、その分だけあなたの中で、英語のリズムが言葉としっかり結びついたということです!

今回は厳選して紹介しましたが、他にもたくさん参考にできるものはあります。これというものがある方はその曲で、もしない場合はぜひここに出てきたもので試してみてください。楽しむ心を忘れずに!

次回はいよいよ連載最終回。名ゼリフを使ったリズム練習をご紹介します。最後まで読んでくれてありがとうございました!Enjoy your rhythms!