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英語のリズムを意識した「伝わる英会話」―リスニング&スピーキング力UPの秘訣ー

リズムで学ぶ英語の世界

文法、語彙、発音などの影に隠れて、英語の「リズム」を習得する大切さは、多くの英語学習者の盲点となりがちです。英語という言語にとって「リズム」がいかに大切かについて、俳優そして英語教育者として活躍されている岩崎MARK雄大さんと一緒に考えていきましょう。

日本で国内旅行をするとします。普段生活している地域を遠く離れて、空気の違いや食の違いをのびのびと堪能する。そんな中、旅先のお店で、ふと店員さんから地元の言葉で話しかけられる。予期せぬ違和感に一瞬混乱したあなたは、咄嗟(とっさ)に息を留める。そして聞こえたと思われる言葉を反芻(はんすう)し、息を整えて標準語で答える。または聞き取れずに、聞き返す・・・。このような経験をしたことはありますか?

同じ日本語でも、地域によって話し言葉にはバリエーションがあります。言葉や語尾が変化しているところもあれば、高低のイントネーションが違うところもあります。ですが、上のような場面で混乱をひき起こす一番の原因は、実は、呼吸とリズムの違いなのです。

「リズム」を習得するとリスニング&スピーキング力がアップするワケ

慣れ親しんだ呼吸とリズムをもとに、人は会話を聞き取ります。そのとき「要として聞く音」と「繋(つな)ぎとして聞き流す音」を区別しています。少し前に「『お刺身失礼します』と言って毎日退勤しているが、たぶん誰も気づいていない」というツイートがバズっていましたが、よく耳にする言葉は、このように音の概形のみで区別したり、語感や語呂で判別していることがあります。そしてそのとき、聞いている人の呼吸は、自然と話している人の呼吸に同調しています。そのため、言葉のリズムが聞き慣れているものと違う場合、いつも無意識にしている区別がうまくいかず、聞き手は呼吸を乱されるのです。

英語の場合、この呼吸を決める「音の概形」を作っている大きな要素の1つが、強弱のリズムなのです。英語で会話をするとき、あるいは文章を書くときや黙読するときでも、ネイティブスピーカーはこの強弱のリズムを体内で刻んでいます。そして更に、このリズムは、前回の記事でお話した「心と呼吸」とつながっているのです。

基本的に、強拍のリズムは心が動いている言葉のところにきます。具体的に伝えたいイメージがあるので、それを伝えたいという思いが、前回でいう「あんたがたどこさ」のまりをつく動作のように、言葉を後押しします。逆に、弱拍のリズムは、その強拍の言葉同士の関係性を示す、つなぎの言葉のところにきます。これが、先ほどお話した、聞き手が「要として聞く音」と「繋ぎとして聞き流す音」に対応しています。強拍になる伝えたい言葉のところには「内容語(content word)」と呼ばれる言葉が入り、弱拍になるつなぎの言葉には、それ以外の役割を担う言葉「機能語(function word)」が入ります。

内容語(content word)

名詞、形容詞、動詞、副詞のように実質的な内容を表す言葉

機能語(function word)

代名詞、前置詞、接続詞、助動詞、限定詞(a, an, the, my, their)などのように、文法的な関係や話し手の事態のとらえ方を表す言葉

つまり、この英語のリズムは、文章で伝えたい言葉(聞き取ってほしい言葉=受け止めてほしいイメージ)と、その言葉同士の関係性を示す言葉(イメージのつながりを表す言葉)と対応して生まれるリズムなのです。

それを呼吸に合わせて、体の感覚として身に付けていきましょう。これができるようになると、聞き取るときにはイメージを受け取りやすく、話すときにはよりイメージを伝えるのが上手になります。もちろん聞き取ってもらいやすくもなります。必然的に、リスニングもスピーキングも上達していくというわけです。

リズム感に自信がない人でも大丈夫?

説明した通り、この「英語のリズム」と呼んでいるものは、先にリズムがあってそのリズムに乗せて話しているわけではありません。伝えたい言葉をもっと伝えようとして、反動でつなぎの言葉が弱まった結果、自然に生まれるものなのです。ですから、リズム感がないから無理なのではないか!と心配している方がもしいたとしても、大丈夫です。まず試しにこの記事の最後まで一緒にやってみてください。

英語のネイティブスピーカーでも、いわゆるリズム感のない人はいます。ですが、そんな人でも英語を喋(しゃべ)ると、自然とリズムで喋(しゃべ)っています。伝えたい言葉を伝えようとするからです。そして、聞き取るときにも、相手が押してきている言葉を中心につないでいけば、自然と相手のリズムに乗っています。

それでは、実際に会話で使うときのリズムの仕組みがどうなっているのか、強弱のリズムの法則を見てみましょう。先週までの記事では、英詩で基本的な英語の強弱のリズムをご紹介し、それらを組み合わせたような、子ども向けの詩を使ったリズムの基礎練習で少し遊んでみました。ここまでは、リズム練習、いわゆる基礎を楽しく繰り返す「基本の型」でした。そしてここでは、その型の先にある、実戦的な法則を見ていきます。

実際の会話では、詩のように同じリズムの繰り返しには必ずしもなりませんが、文法に合わせて自由律の強弱のビートが生まれます。文法といっても、基本的な法則だけを見れば、とてもシンプルなものです。英語のリズムには強(ター)と弱(タ)があるとお話ししました。この強弱、日常会話では、基本的に強拍になる単語と弱拍になる単語に法則があります。先ほど、内容語と機能語、という考え方を紹介しましたが、より具体的にまとめた5つの法則がこちらです。

1. 二音節以上の単語では、単純にアクセント(第一&第二)がくる音節が強

2. 単語が一音節の場合、

S(Subject[主語=誰が/何が])
V(Verb[動詞=どうした/いる/ある])
O(Object[目的語=誰を/何を])
C(Complement[補語=いつ、どのように、等])
   

が強、それ以外が弱。

3. ただしbe動詞は基本的に弱

4. 否定のnot、疑問詞(5W1H)は強

5. 特に伝えたい単語がある場合、2〜4を無視してもそこを強拍にして、一番強く強調

基本的には、この5つの法則のみをまず考えてみてください。このS、V、O、Cは高校で習う基本5文型という考え方で登場する呼び名ですが、まずリズムにおいては先ほど紹介した「内容語」と同じ物を指していると考えて大丈夫です。

中学レベルの英会話フレーズを「リズム」の観点からおさらいしよう!

さて、仕組み先に説明しましたが、頭で仕組みがわかっても、実際に覚えて使うのは体であり呼吸です。ということで、中学校で習う英文の形を抜粋してみました。これらの文章のリズムを一緒に見て、深呼吸して、実際に呼吸を入れてみましょう。まずはbe動詞から始めます。

I am Lisa.

ター ター

You are a student.

ター タ タ ター

Paul is not from Canada.

タータータータタ

Are you and Mary friends?

ターターター

No, she is not.

ター ターター

My mother is in the park.

ター タータ タ タ ター

さて、ここまでの記事と違い、今回はタータターのところに、単語ごとにスペースを入れてみました。元々の区切り目をわかりやすくするためです。ところが、読んでみると間を詰めたくなった人もいるのではないでしょうか?そうなのです。英語は、書き出すときは単語と単語の間にスペースが入りますが、話すときは基本的に息は流しっぱなしで、単語ごとには止めません。なので、これらのリズムはどんどんつながっていきます。それで試してみると、今度は下線を引いた弱拍が連続する部分で、短いリズムが続いていて言いにくいのがわかると思います。こういうところで、リンキングやリダクションなどのリエゾンが起こるのです。

今は、厳密にリエゾンを追わなくても大丈夫です。まずは強弱のリズムに合わせて読んでいってみましょう。次は、一般動詞と代名詞、形容詞を使った文を見ていきます。

I speak Japanese.

ター ター ターター

They have a big dog.

ター ター ター ター

My son plays tennis with his friends.

ター ター タータ タ タ ター

※my, hisなど限定詞は機能語なので、特に強調したいとき以外は弱になる

That is an interesting book.

ター タ タ ターターター

いかがでしょうか。リズムを感じながら読めましたでしょうか?次の応用ポイントとしては、弱拍の一音節の単語に注目してみましょう。この弱拍の一音節の単語、前か後ろ、どちらかの拍とくっつけたくなりませんでしたか?それが少し感じられたらお見事です。例えば、「ター」の後ろに「タ」が独立してあると、くっつけて「タータ」を作りたくなります。"have a"が「ハァヴァ」とくっついたり、"That is"が"That's"に縮められたりするのは、この感覚と一致します。

続いては、述語の修飾です。

I live in Tokyo.

ター ターター

We eat rice for breakfast every morning.

ター ター タータータータ ター

I go to work by bus.

ター ターターター

今回は強弱の2種類に限定してなるべくシンプルにお伝えしているのですが、実は強拍にも中と強の2種類の強拍があります。今回はあまり厳密には追いませんが、伝えたい内容がS(誰がそれをするのか)とV(何をするのか)どちらの方かによって、この2つの間で強さの塩梅が変わります。例えば、最後の"I go to work by bus."は、基本的にはV優位ですが、以下のようにS優位にも変化します。

(他の人は違うけど)私はバスで出勤します。

I go to work by bus.

続いて疑問文を見ていきましょう。疑問文では、聞きたい内容を疑問詞で問いかけているので、疑問詞を強迫で押し出します。

Why are you crying?

ターター タータ?

Whose pen is this?

ター ターター

How many children does she have?

ター ターターター ター ター?

※do, doesは文中にくると強(文のはじめだと弱)

お次は命令文。予想通りかとは思いますが、基本的に強拍が続きます。特にV(動詞)とO(目的語)が強くなります。

Be careful.

ター ター

Please wash your hands.

ター ターター

Let's go home.

ター ター ター

最後にまとめてもう少しだけ、中学の間に習う英文をご紹介します。見慣れた文章の強弱を味わいながら、弱拍がどこの拍とくっついていくのかにぜひ注目してみてください。

What day is it today?

ター ターターター

It is Thursday.

ターター

Can you open the window?

ター タータ タ タータ?

This is the email I sent her yesterday.

ター タ タ ターター ター ター ターター

I was too sleepy to watch the movie yesterday.

ターター タータ タ ターターターター

I have a friend who lives in Germany.

ター ターター ター ター ターター

いかがでしたでしょうか。同じリズムを繰り返していた英詩や子ども向けの詩とはまた違う、自由律のリズムと、その法則を少し感じることができたでしょうか?ここで紹介した文章をぜひ、何度も声に出して繰り返してみてください。ある程度、体が覚えてくると、他の英文を見たときにも、強弱がどこにくるか少しずつ予想できるようになってきます。また、最後にもう1つだけ、応用の練習をご紹介します。

ここにある英文を使って、1文の中でどの単語を一番伝えたいかで遊んでみます。いわゆるイントネーションアクセントです。それがS、V、O、Cと移動していったときにどうリズムが変化するのか、試してみてください。「伝えたい気持ち」と強拍の連動が感じられると思います。

1文だけ例としてパターンを紹介します。

This is the email I sent her yesterday.

このメール!他のメールではなく。)

This is the email I sent her yesterday.

(これがそのメールLINEとかではなく。)

This is the email I sent her yesterday.

(他の誰でもなく私が送った。)

This is the email I sent her yesterday.

(私が確かに送った。)

This is the email I sent her yesterday.

彼女に送った、他の人ではなく。)

This is the email I sent her yesterday.

昨日送った。他の日や時間ではなく。)

この連動を体が覚えると、一気に心とリズムがつながってきます。ぜひ、他の文でも遊んでみてください。その上で、次回は演劇作品の台詞を使って、意味とリズムで遊んでいきたいと思います。Thank you for reading, and enjoy your rhythms!

岩崎MARK雄大

岩崎MARK雄大(イワサキ マーク ユウダイ)東京大学文学部(英米文学)卒業。NY出身。在学中より俳優として活動するほか、演劇や英語を利用した教育や国際的な社会活動にも意欲的に取り組み、通訳やイングリッシュコーチとしても活躍中。令和2年度神奈川県児童福祉審議会推薦図書『さくらまつ』(銀の鈴社)英訳。NODA・MAP『フェイクスピア』に出演。
https://kakushinhan.org/