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英語のリズムを身に付けるには?―子ども向けの詩を朗誦してみよう!

リズムで学ぶ英語の世界

文法、語彙、発音などの影に隠れて、英語の「リズム」を習得する大切さは、多くの英語学習者の盲点となりがちです。英語という言語にとって「リズム」がいかに大切かについて、俳優そして英語教育者として活躍されている岩崎MARK雄大さんと一緒に考えていきましょう。

あなたにとって一番「感情を乗せやすい言葉」は、なんでしょうか?ぐっと胸に突き上げてくる衝動を、勢いにまかせて飛ばすことができる言葉です。結果を勝ち取ったときの「よっしゃー!」でしょうか?惜しさを噛み殺してもらす「くそぉ!」、あるいは至福の「終わったーーーーーーーーーー!!!」でしょうか?

英語を学ぶときに、まず大前提として覚えておきたいこと。それは、英語というのは、ただの習い事の1つや学校の授業科目の1つではなく、人がコミュニケーションを取るために使われているツールだということです。

仮に、あなたが全く英語を喋れない状態でニューヨークへ旅行に行ったとします。なるべく入念にプランを立て、着いたらどこで食事を食べるかもあらかじめ決定。ところが、いきなり飛行機の到着が遅れて、やっとホテルに着いた頃にはお店はもう閉店。お腹が空いた、どこか食事ができるところはないか、ホテルの人に相談したい、そんな時、あなたはどうなるでしょうか?あー、えー、ジェスチャーをふまえて、オナカ、スイタ、食べる、ドコ?

いざ生活の中で英語を使う場面では、このようにまずコミュニケーションをとる必要があって、そのために言葉を使うわけです。言葉というのは本当に便利ですが、文法も単語も、あくまでコミュニケーションをとるための道具。そしてその手前には必ず、コミュニケーションをとる必要性を感じている、からだ、心(思考)、声と呼吸があります。このような生命の根源的な要求と直接結びついている要素の1つが、言葉のリズムなのです。

「音読」でリズムを感じるためのポイントは?

前回の記事まで、英語の「強弱」のリズムについて話をしてきましたが、そもそもこの強弱とはなんでしょうか。頭ではわかったと思っても、日本語では普段あまり使わないため、からだでは実感しにくいかもしれません。

正直なところ、わからないまま音まねをし続けてみて、やっているうちにわかる、でもいいと思っています。なぜなら、これはあくまで身体感覚なので、頭で理解すること以上にアクションが大切だからです。ですが、せっかくなのでちょっと先に行くためのヒントをご紹介します。「あんたがたどこさ」を思い出してみてください。そうです。まりつきをしながら歌う、あの歌です。

あんたがたどこさ

ひごさ

ひごどこさ

くまもとさ

くまもとどこさ

せんばさ

「あん」と「せん」はそれぞれ1音になり、各行末に休符が入り、きれいに七、三、五、五、七、三の日本語のリズムになっているのがわかります。乗りやすい日本語は、ちゃんと日本語のリズムになっているのが面白いですね。さて実は、この歌はまりをつくところの文字が強のリズムになっていて、その裏の、まりを受けるところの文字が弱拍になっています。

あん

せん

ちなみに、面白いことにこの続きの2行は入りが裏拍になっています。実際にまりつきをしていると、1拍捨て拍を間に入れないとリズムを崩されるところですね。

んー)せおっ

んー)そりょぽううっ

このまりをつく拍と、まりを受ける拍。この感覚を思い出してください。これが、言葉に強弱をつけるときの身体感覚です。もし時間に余裕がありましたら、1つ前の記事で紹介した英詩のリズムの例を、まりが手元にあるつもりで「エアまりつき」をしながら声に出してみてください。弱拍が2つ続くリズムでも、強拍でまりをつき、弱拍2つ分を使ってゆっくりまりを受けるつもりで読んでみれば、同様に「エアまりつき」が使えます。環境が許す限り、本気で、全身を使ってやってみてください!本気でやってみると、からだ、心、呼吸と声が、ちゃんと全て繋がってきます。

意味ではなく音の響きを楽しむ朗誦のススメ

そう、この「まりをつく」動作。この動作をするときの身体が、冒頭でお話しした、衝動に突き動かされて言葉を発するときの身体ととても近いのです。リラックスして、呼吸が深く、音が自然に響く身体の状態。この感覚がつかめてくると、そこから英語のリズムに乗る感覚が少しわかってくるかもしれません。慣れてきたら、まりつきの代わりに、踵でリズムをとったり、首を前に突き出してリズムをとったりしてみるのもいいでしょう。

いかがでしょうか?身体でリズムをとる楽しさ、少し実感できてきましたでしょうか?ここが、英語のリズムのスタート地点です。ネイティブの子どもは、物心がつくかつかないかくらいの頃から、言葉遊びや童歌のリズムをたくさん聴いて、まねをしながらこのリズムの楽しさに気付いていきます。そうして、英語のリズムのレパートリーをたくさん身に付けていくのです。

先ほどの「あんたがたどこさ」もそうですが、ここで大事なのは、中身ではなく、語呂やリズムです。日本語でいうと、他にリズムの要素が強めの童歌は「げんこつやまのたぬきさん」や「かごめかごめ」などでしょうか。そんな英語のリズムを楽しく身に付けていく旅の1歩目、リズムを楽しめる子ども向けの詩。では、そのなかで有名なものをいくつか、音の響きを楽しみながら一緒に朗誦してみましょう。

“Hickory Dickory Dock

Hick/o/ry/ Dick/o/ry/ Dock.

タータタタータタター

The mouse ran up the clock.

ターターター

The clock struck one, the mouse ran down.

ターターターター

Hick/o/ry Dick/o/ry Dock.

タータタタータタター

1つ目は時計のリズムをネタにした歌。「タータタ」と「タター」のリズムの組み合わせになっています。1、2、4行目の最後の言葉Dockとclockが同じ響き、ライムして(韻を踏んで)いて、3行目はoneとdownがライムしています。

"Row Row Row Your Boat"

Row, row, row your boat,

ター ター ターター

gent/ly down the stream.

ターターター

Mer/ri/ly, mer/ri/ly, mer/ri/ly, mer/ri/ly,

タータタタータタタータタタータタ

life is but a dream.

ターターター

2つ目は言葉の繰り返しが印象的なボートを漕ぐ歌。Merrilyの繰り返しが、rとlの行き来の難しい文の例で使われたりもしますが、実は「タータタ」のリズムを強めに刻むと言いやすくなります。こちらは、2、4行目の終わりでstreamとdreamが韻を踏んでいます。

“Five Little Monkeys”

Five lit/tle mon/keys jum/ping on the bed

タータータータ ターターター

One fell off and bumped his head

タータ タータ タータ ター

Ma/ma called the doc/tor, and the doc/tor said

タータータータータータ ター

No more mon/keys jum/ping on the bed!”

タータ タータ ターターター

Four lit/tle mon/keys…

Three lit/tle mon/keys…

Two lit/tle mon/keys…

One lit/tle mon/key jum/ping on the bed

He fell off and bumped his head

Ma/ma called the doc/tor, and the doc/tor said

No more mon/keys jum/ping on the bed!”

No lit/tle mon/keys jum/ping on the bed

None fell off and bumped his head

Ma/ma called the doc/tor, and the doc/tor said

"Put those mon/keys back in bed!"

タータ タータ タータ ター

*はじめに戻る

最後の詩は手遊び歌です。左手の手のひらを上向きに広げてベッドに見立て、その上に、指が上をさすように右手をパーにして5匹の猿と見立てます。左手のベッドの上でこの猿たちをジャンプさせながら歌い始め、2行目で歌に合わせて指の猿を1本頭から落下させ、自分の頭を右手でトントンと叩きます。3行目では手を電話に見立てて耳元でゆらし、4行目で顔の前で指をチッチッと振りながら医者のセリフまで演じ、次の段落に進むときにはベッドの上ではねている手の指の数を減らす、という仕組みになっています。これはメロディーがある歌というよりは、リズムとライムだけを使った言葉遊びの詩になっています。

この3つの歌に出てくるリズムのパターンを、何回か遊びながら繰り返してみましょう。するとどうでしょう、普段日本語を喋っている時とはちがう、英語のリズムが少し身体になじんでくるのではないでしょうか?さらに、もし可能であれば、この3つの歌を毎日繰り返してみて、なんとなく暗唱できるくらいまで続けてみてください。そこまでやり遂げた時には、今までとは違う英語のリズム感がきっと身に付いているはずです。

俳優ならではの、おススメ英語リズム練習法

とはいえ、ただこれを繰り返していくのも、飽きそうですし、もったいないです!ということで、せっかくなので、ここで少し演劇的な遊びを提案させてください。

冒頭で、生活のなかで私たちが喋るときは、まず「コミュニケーションをとる必要」があって、そのために言葉を使う、とお話しました。はじめに心とからだと呼吸が触発され、それから言葉を紡いでいくのだ、と。実は、演技などで、決められた台詞を喋る難しさは、ここにあります。そこに書いてあるような言葉を人が喋るとき、本当はその前に身体で起きていることがたくさんあるわけです。そして役者の仕事の1つは、そこを自分で埋めることなのです。

さて、そんな言葉の前に来る身体の反応のなかで、今回は呼吸に注目してみます。人間は、実は心が動くと、息に変化がおこります。例えば、はっと驚くと、短く鋭いになり、怒りがふつふつと湧き上がってくると、深く熱い息を吸い込み、途端に目の前に壮大な風景が広がると、ゆったりと深い息となり、「うわぁー…」と感無量の声を上げます。

さらに余談なのですが、「息」という漢字は「自ら」の「心」と書きます。魂と訳される英語のspiritという言葉も、ラテン語のspiritus(息)が語源となっており、昔から息と心は関連するものだと東西で考えられています。

この心と呼吸が、リズムと相互に影響し合うのです。ということで、ここからは、英語のリズムを自らの心とつなげる練習として、色々な感情を先ほどのリズムに乗せてみたらどうなるかを試してみましょう。

例えば、時計が進むことに苛立ちを感じている人の"Hickory Dickory Dock"。

抱えきれない哀しみを讃えて川を下る"Row Row Row Your Boat"。

猿が跳ねるのが楽しくて仕方がない"Five Little Monkeys Jumping on the Bed"。

内容と関係なくとも、冒頭のニューヨークのホテルで訴えかけている、お腹がすいたときのHickory Dickory Dockも面白いかもしれません。

言葉の意味を考えなくてもできる、心と呼吸とリズムの遊び。いくつか紹介しましたが、これ以外にも、ぜひ色々な感情のパターンを考えて試してみてください!やってみると、楽しいですし、きっとたくさん発見があると思います。どうやら強拍は感情が乗せやすい、感情に合わせてリズムのスピードは変わる、などのことを感じながら、リズムと心の関係性に思いをはせてみてください。そして、ここでこの遊びを楽しんでおいていただけると、実はこの話が、次回のリズムと英会話の話につながっていくのです。Have fun! &どうぞお楽しみに!

岩崎MARK雄大

岩崎MARK雄大(イワサキ マーク ユウダイ)東京大学文学部(英米文学)卒業。NY出身。在学中より俳優として活動するほか、演劇や英語を利用した教育や国際的な社会活動にも意欲的に取り組み、通訳やイングリッシュコーチとしても活躍中。令和2年度神奈川県児童福祉審議会推薦図書『さくらまつ』(銀の鈴社)英訳。NODA・MAP『フェイクスピア』に出演。
https://kakushinhan.org/