「not cut it」ってどういう意味?【映画で英語】

映画やドラマは生きた英語の宝庫。おすすめ映画・ドラマから、ちょっとおしゃれで すぐに 使える英語表現を毎回一つ紹介します!今回取り上げるのは、映画『TENET テネット』から、「~じゃあダメだ」「十分でない」という言うときの表現です。

今日のおすすめ表現

not cut it
~じゃあダメだ 」とか、「 十分でない 」などの意味のフレーズ「not cut it」をご紹介します。

英和辞典には「 cut it 」で「 うまくやる 」というイディオムとして載っていますが、否定形で使われることが多く、英英辞典では「 not cut it 」と否定形で載っているものが多いようです。

表現の出どころ

回のフレーズは、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』(原題:Tenet)から選びました。

ちょうどコロナ禍と劇場公開が重なってしまった本作品。イギリスでは、2020年7月17日から3度延期されて最終的に8月26日に、アメリカと日本では9月にそれぞれ公開されました。現在は、 ネットフリックス などで配信されています。

CIA(アメリカの情報機関)の特殊部隊で活動していた主人公(ジョン・デヴィッド・ワシントン)でしたが、未来からやってきた敵が仕掛ける第三次世界大戦を阻止するために、TENETという組織によるミッションに参加することになります。

時間が逆戻りするストーリーということもあり、劇場で見た人の中には、「複雑すぎて1度では理解できない!」と感じた人も少なくなかったのではないでしょうか?オンデマンドなら何度でも見られるし、好きなところで止めたり巻き戻したりできます。思う存分、堪能してくださいね。

ちなみに 、普通の映画では登場人物には当然ながら名前がありますが、本作品でジョン・デヴィッド・ワシントンが演じる主人公は名前が呼ばれることはなく、Protagonist(日本語の オフィシャル・サイト では「主人公/名もなき男」と紹介されています)で通されます。

表現の使い方

主人公は、イギリス情報機関のマイケル・クロズビー卿(マイケル・ケイン)と昼食の約束をしていたレストランへと向かいます。ロシア人大富豪の武器商人アンドレイ・セイター(ケネス・ブラナー)への接触方法を相談するためです。

ひとしきり情報を主人公に伝えたクロズビー卿は、突然話題を変えて、主人公に向かいこう言います。

Look, no offense, but in this world, where 1 someone is claiming to be a billionaire, Brooks Brothers won't cut it* .

いいかい、気を悪くしないでほしいが、この世界、億万長者だと言い張っている人がブルックス・ブラザーズは ないぞ

冒頭で言っている「Look」は、相手の注意を引く時に使う言葉。「いいかい」とか「あのね」といった感じです。

ところでブルックス・ブラザーズですが、この映画が公開される直前の2020年7月、アメリカ本社は経営破綻しています(現在は別オーナーが経営中)。創業1818年の老舗で、庶民にはなかなか手が出せないブランドだったようです。それでも、億万長者を演じるなら十分ではない(仕立ててもらった服を着なさい)、と言っています。

その言葉に、主人公はこう返します。

I'm assuming I'm on a budget.

予算 に限りがあるかと思って。

on a budget」とは、 予算 が限られている、とか一定額の 予算 内でやりくりしなければならない、という意味です。この後クロズビー卿は、次のように言ってクレジットカードを主人公に渡します。
Save the world, then we’ll balance the books.

世界を救ってくれたら帳尻を合わせよう。

ここでいうthe booksは帳簿のことで、 balance the booksで「帳尻を合わせる」「帳簿清算をする」という意味です。

まとめ

今回は、少し変わったテイストのスパイ映画『TENET テネット』から、「 not cut it 」をご紹介しました。

何度見てもなかなか理解できない・・・という場合、ネット上で見つかる解説記事の力を借りましょう!検索すればたくさん見つかりますよ。

絵画に隠された秘密や、登場人物の名前にまつわる話など、映画を数回見ただけではなかなか気付けなかったポイントを詳しく解説してくれているものもあります。ぜひそうした助けを借りながら、理解を深めてくださいね。

*1 :ネットフリックスの英語字幕はwhen someone...となっていますが、ネット上にあるスクリプトではwhereとしているものが多く、役者もwhereと言っているように聞こえるため、ここではwhereとしています。

松丸さとみ フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に 『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』 (日経BP)、 『限界を乗り超える最強の心身』 (CCCメディアハウス)、 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 (サンマーク出版)などがある。
Blog: https://sat-mat.blogspot.jp/
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