接続詞butを論理的に正しく使えていますか?単なる逆接ではないbutの本質

問題なく英語を読めたり聞けたりしても、話したり書いたりするときには困ってしまう、という人は多いのではないでしょうか。そんな人のために、英語の瞬発力を鍛えて自分の意見をロジカルにアウトプットできるようになる方法をご紹介します。ポイントをつかんで、あなたの英語をワンランクアップさせましょう。

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butの正しい使い方

上記の記事を読んでくださった方は、言いたいこと(ポイント)とその説明(サポート)は、両方そろって1パッケージだということはおわかりになったと思います。次は、ポイントに対してサポートにならない情報や逆接を入れる必要がある場合にどうするかを説明しましょう。

そのときに活躍するのが「but」です。研修では次の質問をまず皆さんに投げ掛けます。

「仕事が楽しい」ことを伝えたい場合、butは下の文章の①、②のどちらに使いますか?

仕事は楽しいですよ。①でも、忙しくって残業も多いし、結構きついから週末もくたくただし、給料だってそんなによくないんですよね。②でも、仕事は楽しくていい経験をさせてもらっていると思います。特に、一緒に働いている人たちがすごい人たちなんです。彼らから学べることが多くて、ほかで働きたいとは思わないです。なので、仕事自体は楽しいと思いますよ。

答えは2です。butは、「本当に言いたい内容を際立たせる役割」の接続詞(旗印表現)です。butの直前まで言っていた内容を重要度1とすれば、butの直後は重要度9ぐらいで強調しているようなイメージです。これがbutの意味の本質なので、単に逆接だと考えてbutを使うと、聞き手の混乱を招きます。

例えば、仕事で「あるプロジェクトをすべきだ」と主張した直後に「でも、少ない予算しかないし、やるには人の配置転換もしなければならず、職場の士気も下がりそうなので、難しいことは十分承知しているんですが、でもやっぱり、やってみるだけの価値はあると思う」と言いたい場合、初めの「でも」にはbutを決して使わないことが肝心です。ここにbutを使ってしまうと、できないことを主張していることになってしまいます。

ここまで説明するとよく出てくるのが「ポイントから逆に外れるときには何を使えばいいの?」という質問です。その場合に使う旗印表現はたくさんありますが、よく使われるのは、certainly、yes、I realize、I know、you may say、you may thinkなどです。「確かに......」と先述の旗印で譲歩してから、butでメインポイントに戻る、ということになります。先ほどの「仕事が楽しい」ことを伝える内容を「certainly..., but...」のロジック構造を使って話すと次のようになります。自分のポイントから外れるときには、決してbutを使わない感覚を磨いてください。

I am having a great time working at this company.

Certainly , the current project I am working on keeps me extremely busy with a lot of overtime. The work is also quite intense, so I often get too exhausted to do anything on weekends. On top of that, my salary is not as great as I would like it to be.

But I am enjoying my work very much. It gives me a lot of invaluable experience for my career and growth. Also, I get to work with great co-workers. They are great people to work with. I have learned a lot from them.

So , I am enjoying my work. I wouldn’t trade it for any other job.

このパターンはいわゆる譲歩形と言ってもいいのですが、K/Hシステムでは「certainly... , but...」のロジック構造と呼んでいます。ただ、この形を使って話すときに、皆さんがよく陥る二つの落とし穴を挙げるので、下記に注意してください。

1. butの直後に、メインポイントをもう一度言いましょう

butの後にメインポイントをもう一度言うことで、本論の骨子に戻すようにしましょう。落とし穴の一つは、my salary is not as great as I would like it to beに対してbutで逆接を入れてしまうパターンです。例えば、butの後で「ほかの会社でももっと少ない給料の人たちがたくさんいますしね」などと言ってしまうと、「仕事が楽しい」という本題からそれて給料が高いか低いかの議論になってしまいます。

2. butの直後のメインポイントだけで終わらず、サポート情報を付けましょう

基本形を覚えていますか?「何か言ったら、必ずその後の説明とセットで一つのパッケージ」という考えはここでも生きています。“But I am enjoying my work very much.” で終わった気になってはいけません。特に「certainly..., but...」の形では、certainlyの後に譲歩したときの情報が入っているので、メインポイントのサポートにはこの情報を上回る強い情報を入れないと、説得力に欠けることになります。

Point 5

「でも」や「しかし」をすべてbutで代用していませんか?

言いたいポイントから外れるときの「しかし」にはbutを使わないこと。外れたところからポイントに戻ってくるときの「しかし」にはbutを使いましょう。

「反論」とその「立て直し」の両方に使える「certainly..., but...」構造

反論したり、反論されたときに立て直したりするのが難しい、という悩みをよく聞きます。その対策の一つを紹介しますが、p. 21で紹介した「Point 1」が最も大切なことを前提で説明します。

相手の論に「反論」するときも、反論されたときに自分の論を「立て直し」するときも、まずは相手の言い分で自分が納得できる部分を、certainlyやyesを使って話し始めると、話しながら自分の反論や立て直しを考える時間が稼げます。相手にしてみれば、自分の言い分に賛成している部分を聞かされているわけですから、黙って聞いてくれるでしょう。その後で、butで自分の反論や立て直しを「ポイントーサポート」の順序で論じます。

また、相手の言い分に納得できる部分がない場合でも、この構造は使えます。そのときは“I see your point.”や“I understand what you are saying.”と相手の意見を理解したことを示してから、“You are saying that...”と相手の言った内容を繰り返します。相手の気持ちに理解を示したいなら、“I see how you feel. You feel...”と繰り返す。それから自分の意見を「ポイント―サポート」のパターンで述べます。

いずれの場合も、自分の意見のサポートを十分入れることが重要です。ポイントの根拠がクリアになればなるほど、建設的な議論になるでしょう。

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国井信一/橋本敬子(くにい しんいち/はしもと けいこ)
国井信一/橋本敬子(くにい しんいち/はしもと けいこ)

1990年代にワシントンD.C.で同時通訳。2001年に英語・コミュニケーション力研修を提供するK/Hコミュニケーションズ株式会社を設立、現在に至る。厳しいが、きちんと成果が出るノウハウを開発し、大手企業のクライアントを中心に、現在までに受講者数は約2万人。ご質問やコメントはsupport@kh-system.comまで。

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