Let'sの正体と短縮形のからくりとは?映画やドラマでリアルな英語表現を学ぼう

Let'sの正体と短縮形のからくりとは?映画やドラマでリアルな英語表現を学ぼう

教科書では目にしない「ちょっと奇妙な英語」にこそ、言語や文化をより深く学ぶためのヒントが隠れています。さまざまな映画やドラマ作品のセリフを通して、英語のからくりや背景にある文化を探っていきましょう。

はじめに

私は少年時代、洋画好きの祖父に連れられて、映画館に行くのがいつも楽しみでした。そして好きが高じ、今では英語教材としての映画の魅力を考える一介の英語教員になりました。

映画は、英語の発音、会話表現、英語圏特有のジェスチャーなど、さまざまな情報を私たちに与えてくれます。さらに映画には、教科書では目にしない「ちょっと奇妙な英語」が出てきます。でも実は、そんな奇妙な実例にこそ、言語や文化をより深く学ぶためのヒントが隠れているのです。

この連載は「字幕のムコウ」と題し、見過ごされがちな興味深いセリフにも光を当てながら、英語のからくりや背景にある文化を探っていきます。

まずはLet’sから始めよう

英語学習の早い段階から、I’mやIt’sのような短縮形と出会います。短縮形は発音がしやすく口語でよく使われますが、実は短縮形にもきちんとしたルールがあります。今回はLet’sを取り上げ、そのからくりの一端を見てみましょう。

Let’sの成り立ち

そもそもLet’sは、なんの短縮形かご存じでしょうか。「-’s」が見えますがisは無関係で、Let’sの非短縮形はLet usです。使役動詞であるletは、「let+目的語(O)+動詞の原形」(Oに~させてあげる)の形でよく使われます。つまり、もとはLet us dance.のような「許可」の命令文だったものが、徐々にそのletの意味が薄れ、usも省略されることで、「勧誘」や「提案」の意味のLet’sが生まれたのです。

Let us dance.

私たちにダンスをさせてあげよう。

Let’s dance.

一緒にダンスをしよう。

興味深いことに、このようなLet’sの誕生に伴い、「Let’s」自体をあたかも1語のように考える人も出ました。その結果、さらにusを加えたLet’s usという混交形もまれに観察されます。米国英語の略式体とされ、映画に登場することもありますが、非標準的ですのでまねはしないでおきましょう。

<非標準>Let’s us take breath then.

少し休もう。(「スパルタカス」シーズン3第3話より)*1

日本語の「~しよう」と英語のLet’s  

日本語の「(さぁ)~しよう!」を「Let’s ~!」と訳す人も多いですが、これには注意が必要です。次の例はすべて不自然です。

(1) レッツeco活動

(2) Let’s dance with us. (私たちと一緒に踊ろう)

(3) Let’s call us! (わが社にお電話を!)

(1)は、Let’s の直後に「動詞の原形」が来るルールを守っていません。(2)では、Let’s自体に「一緒に~しよう」の意味があるので、with us(私たちと一緒に)が余計です。(3)では、Let’s(私たちが一緒に~しよう)の後ろにcall us(私たちに電話する)を続けているので、「自分で自分の番号に電話する」という奇妙な行動になってしまいます。このように、安易に日本語の「~しよう!」を「Let’s ~!」に置き換えることは危険なのです。

短縮形Let’sにするということ

Let’sはLet usの短縮形ですが、letとusが隣り合っていれば、いつでも短縮ができるわけではありません。気を付けないと、文全体の意味や発音に大きな影響を及ぼしてしまいます。例えば、想像してみてください。ある学校のダンス部員たちが、ダンス部廃部を進める(ダンス嫌いの)校長先生に直訴する場合、次のどちらが自然でしょうか。

(1) (ダンス部廃部を取り消して・・・)Let us dance!

(2) (ダンス部廃部を取り消して・・・)Let’s dance!

(1)は使役動詞letの命令文なので、この状況下では「私たちにダンスをさせてください!」という自然な解釈になります。一方、(2)は「一緒に踊りましょう!」と相手を誘ってしまい、校長先生までも踊る必要が出るので不自然です。

ここでのポイントは、us(私たち)の意味に「聞き手」を含めるか否かです。つまり、Let usは聞き手(上例では校長先生)を含まない行動を表し、逆にLet’sは聞き手を含む行動を表すのです。

Let us:~させてください(聞き手を含まない)

Let’s :~しよう(聞き手を含む)

ただし、教会でのLet us pray.(さぁ祈りましょう)など、少し堅くて古風な用法では、Let usを「~しよう」に使うことも可能です。

Let us settle his claim in the ancient way.
古代のやり方で挑戦を受けようぞ。(『アクアマン』より)*2

発音の違い

意味の違いに加えて、発音の違いも生まれます。Let usではLetが、Let’sでは本動詞が強勢を受けて発音されます。

Lét us go! (私たちを放してください!)
Let’s ! (一緒に行こう!)

以上のように、短縮の有無が文全体にいろいろな影響を及ぼすことがわかりますね。

映画で見る、相手を含むus

このような違いを確認するには、文脈や発音が明確にわかる映画が便利です。まずは次の会話をご覧ください。

Henry : Well, let’s find her.

ヘンリー:じゃあ、一緒に彼女を捜そう。

Emma : No, no, no, no. There’s no “let’s.” You cannot come with me.

エマ:ダメ、あなたは一緒に行けないの。(「ワンス・アポン・ア・タイム」シーズン1第4話より)*3

ここでは、Henryの「一緒に」行きたい気持ちをlet’sが表しています。その証拠に、自分一人で行動する予定だったEmmaは「“let’s”なんてダメ」と返しています。

映画で見る、相手を含まないus    

非短縮形の次のセリフではどうでしょうか。

You do your job, let us do ours.

君は君の仕事を、我々の仕事は我々に任せろ。(「サルベーション」シーズン1第7話より)*4

Mr. President, let us prove to you that RESYST is behind this attack.

大統領、RESYSTが今回の攻撃の犯人だと我々に証明させてください。(「サルベーション」シーズン1第13話より)

注目点は、You do your job(君は君の仕事をする)と、prove to you(あなたに証明する)です。これらの表現は、私たち(us)の解釈から聞き手(you)を明確に切り離しています。よって、いずれの例でもlet usをlet’sに置き換えることは、意味がおかしくなるので許されません。

2つの形式のコラボ      

最後に、レストランでの会話を見てみましょう。

Bruce : Let’s put a couple tables together.

ブルース:テーブルをくっ付けよう。

Harvey : I’m not sure that they’ll let us.

ハービー:お店が許してくれるかなぁ。(『ダークナイト』より)*5

let’sとlet usの両方が出ていますが、それぞれがきちんと使い分けられていることに、もうお気付きですね。Bruceは「一緒に」テーブルを付けようと提案しているのでLet’sを用い、Harveyのlet usは使役動詞let(~させる)の通常の用法というわけです。 

まとめ

今回はLet’sを通して短縮形の仕組みをご紹介しました。このほかにも短縮形にはいろいろな規則があるので、なかなか侮れません。また、書き言葉では短縮形は避けられる傾向がありますので、この点もご注意ください。

ちなみに、「マーダー・イン・ザ・ファースト」(シーズン1第7話)*6では、ある人物がshould not haveを、書き言葉では珍しい二重短縮のshould’t’veと記してしまい、事件の犯人が分かるというシーンがあります。短縮形に関する興味深い議論を刑事たちがするので、興味がある方はチェックしてみください。

次回も映画を通して、(一緒に!)興味深い英語の世界を旅しましょう!

Let’s discover the world of English through movies and dramas!

 

次回は2021年7月7日(水)に公開予定です。

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*1:原題「Spartacus: Blood and Sand」。アメリカで2010年より放送されたテレビドラマシリーズ。ローマ時代の伝説的な剣闘士(グラディエーター)であるスパルタカスの波乱の人生と死闘を描く。

*2:2018年公開のスーパーヒーロー映画で、DCコミックス原作のヒーロー・アクアマンを主役に描くアクション大作。監督は『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワンが務めた。

*3:アメリカで2011年より放送されたファンタジーテレビドラマ。記憶を失ったおとぎ話のキャラクターたちが暮らす街を舞台に物語が繰り広げられる。

*4:2017年よりアメリカで放送されたSFドラマ。「トランスフォーマー」「スター・トレック」シリーズの脚本家、プロデューサーであるアレックス・カーツマンが制作総指揮を務めた。

*5:クリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベール主演のアメリカ・イギリス共作映画。2008年公開。DCコミックスの人気ヒーローバットマンの誕生を描いた『バットマン ビギンズ』の続編にあたる。

*6:2014年よりアメリカで放送された犯罪捜査ドラマ。1シーズンを通して難解な殺人事件を捜査していく。

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飯田泰弘

飯田泰弘(いいだやすひろ)岐阜大学教育学部助教。趣味である映画鑑賞と、中学校から大学までの教員経験を活かし、映像メディアを活用した英語学習や英語教育を考え、発信している。とりわけ、一般の英語学習書には出てこない実例採取が大好き。言語文化学博士(大阪大学)。専門は英語学(統語論)。