【光浦靖子さんインタビュー】50歳からの留学のススメ~誰も私を知らない町に住んでみたい

テレビやラジオ出演、コラム執筆など多岐にわたり活躍されているお笑い芸人の光浦靖子さん。実は英語学習に取り組まれていて、現在カナダ留学を計画中だそうです。今回は『ENGLISH JOURNAL』50周年を記念して、同じく今年50歳となられた光浦さんに英語習得への思いや、留学を思い立った きっかけ について伺いました。

光浦靖子  1971年、愛知県生まれ。プロダクション人力舎 所属 。幼なじみの大久保佳代子と結成したオアシズでデビュー。バラエティ番組、ラジオなどに出演するほか、コラム執筆など多岐にわたり活動。主な著書に50 歳になりまして 』、『 私が作って私がときめく自家発電ブローチ集など。

英語習得を目指してアラフィフ留学を決意

実は私、英語を勉強するために、2020年の春からカナダに留学する予定でした。新型コロナウイルスの 影響 で一時延期して、今は感染 拡大 が一段落するのを待っています。

いつか留学してみたいという気持ちは、高校生くらいの頃からずっとありました。 でも気が付くと社会人になっていて、仕事が忙しかったり、レギュラーの番組が休めなかったり。なかなかタイミングが合わないまま、実現できずにきてしまいました。最近休みが取れるようになったので、この際、思い切って1年間留学しようと決めたのです。

英語には、ずっとコンプレックスがありましたね。 中学校に入ったときから、こんなに英語を勉強してきたのに、少しもしゃべれないんだもの。世界には、非英語圏でも、学校で勉強していなくても、英語をしゃべる人が結構いますよね。日本と同じ、アジアの国だってそうだし。

でも私たち日本人は、たぶんなん千時間というくらい長い時間をかけて英語を勉強しているのに、しゃべれない人のほうが多くて、これ、おかしいですよね。しかも私はたまたま東京外国語大学に進学したせいで、英語が得意だと思われて、余計に「しゃべれない」って言えなくなっちゃった。

その英語を身に付けるために、50歳になった今、留学しようというわけです。もちろん日本でも英語の勉強はできますよ。でもそれだと、中学からずっとやってきたことと同じで私には無理なのかな、と。スパッと外国に行ってしまった方がいいのかな?と。

英語ができるようになりたいですよ。本気です。だって映画1本でも英語で理解できれば、字幕や吹き替えで観るのとは、比べものにならない情報量だと思うから。 今の情報社会で英語を身に付けたら、世界中からとんでもない量の情報が得られますよ。 すごいアドバンテージだと思いますよ。

今は芸能界にも、海外進出したい人がいっぱいいます。だけど 英語ができなきゃ、何も始まらない 。もし私に英語力があれば、自分自身が海外進出しなくても、台本を英訳して、 日本のお笑いを世界に届けることだってできるんじゃないかなあ? と思います。

「今さら英語?」って、ばかにする人もいる かもしれない けど、 英語ができるようになれば、いいことがいっぱいあるじゃない って、私は思っています。

バンクーバーで触れた、温かなカナダ人気質

留学 先に カナダを選んだのは、まあ、偶然です。

3年くらい前、知人がバンクーバーにお店を出そうとしてて、詳しくなったから案内をしてくれるって、で、遊びに行って。 都市の雰囲気やカナダ人の気質がとてもいいな と思って。

公共バスに乗ったときなんか、知らない人同士が自然にあいさつし合っているし、降りるときも、必ず運転手さんに「ありがとね」って言うし。そういう雰囲気がすごくいいなあ、と思いました。

以前ニューヨークへ行ったときは、私、早口の英語がわからなくて。焦ってアワワワとなっちゃうんだけど、ニューヨーカーはわりと冷たいというか、みんな知らん顔だったんです。でもバンクーバー では、私が英語に不慣れだとわかると、ゆっくり話そうとしてくれる人がいてびっくりしました。

バンクーバーという都市が、暮らしに余裕がある人が多い場所だということもあるのかもしれませんけど、 人間がギスギスしていないのはいいなぁ と思いました。

カナダに留学することにした きっかけ は、もうひとつありました。バンクーバーで、日本の知り合いにバッタリ会ったんです。息子さんがカナダに留学しているというその方から、「光浦ちゃんも留学すればいいじゃん。エージェント紹介しようか?」って言われて。「え、マジ?」というところから始まって、その気になったら、あとはトントン拍子でした。

誰も自分を知らない町に住んでみたい

留学=「外に住む」ということじゃないですか。

自分のことをまったく知らない人たちの間で、生活したい という気持ちもありました。これはすごく大きかったです。

芸能界のような世界にいると、「いい特別扱い」と「悪い特別扱い」、どっちにしても 「特別扱い」がすごく極端 なんです。悪い特別扱いでいうと、ある意味、芸能人は公の存在だから、どんなに悪口を言ってもいいんだと思われている。それこそ言いたい放題で、みんなの悪口の掃き溜めのようになったりして。

そうかと思うと、芸能人という理由で、普通よりちょっといい扱いを受けることもあります。そういう特別扱いに慣れっ子になると、知らず知らずのうちに、人間が横柄になってくるんです。

それに私は 「贅沢(ぜいたく)病」も怖かった 。私が思う贅沢病って、高いごちそうを食べるとか、そういうことじゃないんです。言い方が難しいんですけど、いい人たちにばかり巡り合い過ぎて、変なふうに目が肥えてしまうというか、高い 基準 が当たり前だと思って傲慢(ごうまん)になるというか。

例えば、仕事ができるスタッフに囲まれて仕事をしていると、仕事ができない人が来たとき、私はその人に、「なんでできないの?」って、一方的にキレちゃう かもしれない 。自分のことは棚に上げて、それはないですよね。でも特別扱いに慣れてしまうと、そういうおかしなことになる。 たぶん今の自分も、甘えているなと思ったんです。

そんなときに留学という形で日本を離れて、 自分のことを知らない人たちの中で、日本語の通じない環境で、一度自分を見つめ直したい とも思ったんです。今までどれだけありがたい環境にいたのか再認識できれば、それはラッキーだし、外国で暮らしてみて、自分がこれまで知らなかった、もうひとつのすてきな世界を発見できたら、それもラッキーです。 どっちに転んでもラッキーしかないのだから、躊躇(ちゅうちょ)していないで思い切ったほうがいい と思いました。

こうしていろんなことが、タイミングよく重なった結果が、1年間のカナダ留学。コロナが終息して、無事カナダに出発できる日を待ちながら、今はマイペースに英会話の練習を続けたりしています。

インタビュー後編は2021年5月28日(金)に公開!

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取材・文:田中洋子

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