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タイムループにはまった2人が巻き起こす爆笑ラブコメディー!映画『パーム・スプリングス』

FILMOSCOPE【2021年5月号】

気になる新作映画について登場人物の心理や英米文化事情と共に真魚八重子さんが解説します。

今月の1本

『パーム・スプリングス』(原題:Palm Springs)をご紹介します。

※動画が見られない場合はYouTubeページでご覧ください。

舞台は砂漠のリゾート地、パーム・スプリングス。妹の結婚式で幸せムードになじめずにいたサラ(クリスティン・ミリオティ)は、一見お調子者だがすべてを見通したようなナイルズ(アンディ・サムバーグ)に興味を抱く。ところがナイルズを追って奇妙な洞窟に入ったせいで、一度眠りに落ちると結婚式の日の朝にリセットされる“タイムループ” に閉じ込められてしまった!しかもナイルズはすでにループにはまっていて、数え切れないほど同じ日を繰り返しているという。果たして2人は、本当に大切なものを見つけて永遠に続く時間の迷宮から抜け出すことができるのか―?

永遠に続く同じ日!?タイムループの中で見つけた大切なものとは?

主演のアンディ・サムバーグは、日本でもNetflixで配信されているコメディードラマ、「ブルックリン・ナイン-ナイン」(2013- )に主演する人気コメディアン。本作でプロデューサーも務める彼が作り出す作品は、面白さだけでなくロマンチックさや人間の切実さも表現していて見応えがある。

この映画は、主人公のサラが妹の結婚式の日を繰り返すタイムループにはまってしまう物語だ。彼女が式場で出会ったナイルズも、すでにタイムループに陥った青年であり、サラは彼に心引かれたのを発端に、この現象に巻き込まれる。

「繰り返す日」という枠組みはあくまで踏み台で、その状況でどんな心境に陥り、どのような行動を取るかがメインに描かれる。ナイルズはすでに諦めモードになっていて、「こんな状況もまあいいか」と諦観している。サラはこんな羽目に陥る前は酒浸りで自暴自棄な暮らしをしていたが、同じ日が繰り返される不条理に反発して、しゃにむにあらがっていく。そして2人は愛し合うようになるものの、実はタイムループのいたずらがあって……という、恋愛感情の純粋さや、恋愛よりほかのものを優先したい時期もある複雑な心理を描く。

タイムループは、前回やらなかったことをやってみたり、反省を踏まえて別の行動を選択したりすると、日ごとに細部を刷新していける設定だ。「自殺したらループから抜け出せるのではないか」など、思い浮かんだ案をナイルズとサラはいろいろ試してみる。また、この大変な経験から学ぶことによって徐々に成長し、サラは妹への自分の誤った行動を見つめ直したりする。

ナイルズが先にループにはまっていたのも、この作品のミソである。結婚式場で会うとわかっている女の子に、それも眠れば一日がリセットされるなら、男の子はどう振る舞うだろうか?その行為よりそれがバレたときの行動がまさにアンディ・サムバーグの映画らしく、必見である。

『パーム・スプリングス』(原題:Palm Springs)

『パーム・スプリングス』

(C)2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.
Cast & Staff

監督:マックス・バーバコウ/出演:アンディ・サムバーグ、クリスティン・ミリオティ、ピーター・ギャラガー、J・K・シモンズほか/4月9日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー/配給:プレシディオ

palm-springs-movie.com

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年5月号に掲載した記事を再編集したものです。

真魚八重子(まな・やえこ)映画著述業。『映画秘宝』、朝日新聞の映画欄、文春オンライン等で執筆中。著書『映画系女子がゆく!』(青弓社)、『映画なしでは生きられない』『バッドエンドの誘惑』(共に洋泉社)も絶賛発売中。