台湾を留学先として選ぶ人が増えてきていることを知っていますか?国際教育事業コンサルタントの星野達彦さんが、台湾の魅力と台湾留学がおすすめな理由を3回にわたって教えてくれます。新型コロナウイルスの 影響 で今 すぐに 留学するのは難しいですが、未来の留学に向けて準備を始めてみませんか?
「ENGLISH JOURNAL ONLINE」をご覧の皆さん、初めまして、こんにちは!
国際教育事業コンサルタントの星野達彦です。留学やグローバル教育を 推進 する国内外の教育機関のコンサルをしています。今まで世界32カ国600校以上の海外の教育機関を視察してきました。そんな私がここ数年、注目している留学先が台湾です!そこで、これから3回にわたって、台湾で中国語、そして英語を学ぶことについて書いていきたいと思います。
1回目のお題である「台湾の魅力」について語る前に、「 そもそも なぜ中国語を学ぶべきか」にちょっとだけ触れておきたいと思います。詳しくは次回の記事で書きますが、中国語を学ぶべき理由は明快で、 今後の 世界情勢や世界における華僑も含む中国語話者人口を考えれば、中国語でのコミュニケーションができた方が絶対に得だし楽しいからです
AIによって多くの仕事が機械化されるだろうこれからの時代において、英語だけでなく中国語もできる人材のemployability(雇用され得る能力)は高まっていくと 予想 されています。この連載では、台湾で中国語を学ぶ理由を解説していきます。
さて、本題の「台湾の魅力」について紹介していきます。
親日家が多い台湾
東日本大震災で台湾から届いた200億円以上の義援金
今年2021年は東日本大震災から10年。震災が起きた当時のことを思い出したり、東北の復興状況について考えたりする方も多いと思います。
震災当時、台湾が200億円以上の義援金を日本に送ってくれたことをご存じですか?台湾の人口が約2300万人で平均所得が約210万円ということを考慮すると、この200億円以上の義援金は驚異的な額の支援だったと言えます。もちろんあのとき、台湾はお金だけではなく物資や人的な支援も最大限してくれています。
日本旅行が好きな台湾人
台湾がいかに親日かということをもう1つ紹介しましょう。
ここ数年、日本で台湾への旅行ブームが起きていて、2018年の調査では、 日本人が選んだ行きたい海外旅行先の第1位に台湾が選ばれていますが、 それでも 日本から台湾へ旅行する日本人は年間217万人(2019年)。それに対し、日本に旅行する台湾人は年間489万人(2019年) にも及びます。台湾の人口(約2300万人)を考慮するとこれは驚異的な数字だと言えるでしょう。
日本と台湾の歴史的つながり
台湾の魅力を語るときに、絶対に外してはいけないのは、「台湾の人たちの日本に対しての思い」です。そしてその思いの基を探っていくと、日本と台湾の歴史的なつながりにたどり着きます。
皆さんは1895年から第2次世界大が終わる1945年まで台湾が日本の統治下にあったことをご存じでしょうか?なんとなく知っている方は多いと思いますが、50年もの間、台湾が日本の領地だったということを 改めて 知ると、その期間の長さに驚く人が多いのではないでしょうか。この期間、日本一高い山は富士山ではなく、台湾にある新高山(標高3952メートル、現在の名称は玉山)だったのです。
日本統治時代の台湾は、アジアで初めて世界の列挙国への仲間入りをしようとしていた日本が、世界へ国力を示すためのショーケース的な存在であったと言われています。
台湾の近代化に貢献した日本人
台湾総督府土木部工務課に勤務していた八田與一(はった よいち)は、1930年の完成当時に東洋一の規模を誇るダムを台湾に作り、その功績は今でも台湾の教科書で紹介されています。
また、世界的に有名な『武士道』を書き、国際連盟で事務局次長を務めたことで知られる新渡戸稲造は、1901年に技師として台湾総統府に赴任しました。彼は台湾の殖産興業の要は製糖業にあると確信し、新型の製糖工場を台湾に設立、その後の台湾の成長に大きく貢献しました。
このように当時の日本政府は台湾近代化のため日本から第一級の人材を送り、大きな投資をしました。
日本とゆかりのある李登輝元総統
2020年7月にお亡くなりなった李登輝元総統(国家元首で大統領に当たる職位)は、「台湾の民主化の父」と呼ばれるとともに、日本とゆかりの深い人物です。
日本統治時代の1923年に台湾で生まれ、日本語で日本の教育を受け、京都帝国大学に入学、学徒出陣に志願して日本陸軍に入隊までした人物です。お兄さんはフィリピンで戦死し靖国神社に祭られています。1945年の終戦により、台湾の日本統治は終わりましたが、生まれてから22歳まで、彼は日本人として生きてきたのです。
そのため、李登輝元総統と同じ時代を生きた世代の台湾人には、日本を「心の祖国」と呼ぶ人たちも多いです。
蔡英文総統の「日本語ツイート」
このような時代的背景や歴史もあり、台湾の人たちは日本に対して特別な思いを持ってくれています。そして、日本に大きな災害などが起こるたびに、国民的規模での支援を行ってくれています。
現総統の蔡英文氏も、日本で災害が起こったときや、新型コロナウイルス感染症が日本で感染 拡大 したときなど、何度も日本に向けたメッセージを送ってくれています。
今年に入ってからも、Twitterに日本語のメッセージを投稿しています。
この台湾の人たちの「日本を思う気持ち」(=親日感)がいちばん大きな台湾の魅力です。私は仕事で世界各国に行きますが、留学で3年近く住んだアメリカより、ほかの親日国と言われるどの国より、台湾がいちばん居心地がいいと感じるのもこの親日感が大きいと思っています。
世界の注目を集める台湾
ここ最近の台湾は、日本だけでなく世界でも注目されています。要因の1つは、新型コロナ感染対策の成功例として、2つ目はジェンダーフリー先進国としてです。
オーストラリアのシンクタンク、 ローウィー国際政策研究所(Lowy Institute for International Policy)によると 、台湾のコロナ対策の充実度は世界で第3位(1位ニュージーランド、2位ベトナム)で、日本の45位を大きく引き離しています。2021年3月3日時点の感染者総数は955人、死亡者は9人だけとなっています。
ジェンダーフリー に関して は、台湾の内閣である行政院が2020年1月3日に発表した 2020年度「性別図像(=性別図表)」 を見ると、台湾のジェンダーフリー 指標 は世界第9位だそうです。これはアジアではトップに位置します。 そもそも 国家元首である蔡英文総統は女性ですし、昨今日本でも有名になった台湾のデジタル担当大臣のオードリー・タン氏はトランスジェンダーです。
ほかにもこんなにある!台湾の魅力
もちろん上記以外でも台湾の魅力はたくさんあります。なぜ私が台湾を旅行先・留学先としてすすめるのか、その理由を挙げてみますね。
精神的な側面
- 台湾人の考え方(価値観や倫理観など)が日本人と近しいと感じられることが多い。
- 親日の人が多く、日本人が疎外感や違和感をあまり持つことがなく生活できる。
- おおらかで明るく親切な人が多い。
環境的な側面
- 気候が年中温暖で過ごしやすい。
- 食事が日本人の口に合う。日本食レストランも多い。
- 物価が日本より安い。
- 治安がいい。
- 漢字言語なので、意思の疎通がしやすい。
- 交通、下水、医療、通信、文化、教育など社会インフラが整っている。
- 温泉街がある(日本一の温泉旅館加賀屋が進出している温泉街もあります)。
- 民主主義国家である。
- 日本人は90日間以内の台湾滞在については、必要条件を満たせばビザが免除される。
- 日本文化を感じさせる場所や建物や街並みが多い。
- 日本の情報が入りやすい。
- 日本語を話せる人も多い(人口の約10%が日本語を話せると言われています)。
- 日本から飛行機で約3時間(成田から)で行けて、時差も1時間しかない。
日本より安い?台湾の物価
次に皆さんが気になる台湾の情報についてまとめました。まず気になる物価について紹介します。※台湾の通貨はNTD (New Taiwan dollar)。2021年3月5日現在で1NTD=3.88円。
- スターバックスのラテの値段 Short:110NTD(約427円)Tall:120NTD(約466円)Grande:135NTD(約523円)Venti:150NTD(約582円)
- マクドナルドのビッグマック(単品)の値段 80NTD(約310円)
- 普通の食堂での一般的なランチ代 70~120NTD(約271~466円)
- タクシーの初乗り運賃 70~100NTD(約272~388円)※各交通局によって初乗り運賃は違います。
- 映画のロードショー料金 270~340NTD(約1048~1319円)
日本のチェーン店が身近にある
最後に、私たち日本人にお馴染みの台湾に進出している日本企業やレストランについてもまとめてみました。
<コンビニエンスストア>
- セブンイレブン
- ファミリーマート
- 大戸屋
- 一風堂
- 吉野家
- かつや
- すき屋
- ユニクロ
- アースミュージックアンドエコロジー
- ニトリ
- 無印良品
- ドン・キホーテ
- 東急ハンズ
- QBハウス(ヘアカット専門店)
- JINS(メガネブランド)
どうでしょうか?皆さんはこれを見て台湾に魅力を感じますか?ここに挙げきれない台湾の魅力はたくさんあります。まだ台湾に行ったことがない方は、日本ともつながりが深い台湾に行ってその魅力を発見してみてください。
次回は「どうして今中国語を学ぶべきなのか?なぜ台湾で学ぶべきなのか?」について書きます。台湾で中国語だけでなく英語も学べることについても触れたいと思います。楽しみにしていてください。
次回は2021年4月7日に公開予定です。
中国語に興味がある人におススメの参考書はこちら!
星野達彦(ほしの・たつひこ) 国際教育事業コンサルタント。
1986年から留学事業のキャリアを積み、多くの大学・政府機関主催のイベントで講演をこなす。世界600校以上の学校を視察。著書に『こうすればなれる留学カウンセラー』(リーダーズノート社刊)、『英語はアジアで学べばうまくいく』(秀和システム社刊)がある。
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