
この連載では、アメリカのとあるQ&Aサイトに実際にあった質問と回答を取り上げ、よりリアルなアメリカ像を紹介しています。第2回のテーマは「アメリカの年末年始事情」。アメリカでは年越しの瞬間にキスする・・・?!などなど、日本とは異なるアメリカの年越しについて迫っていきます!
こんにちはSalahです。 前回はアメリカのニュースメディアの全体像 についてお話ししました。今回は、あるQ&Aサイトにあったアメリカの「 年末年始事情 」に関する質問と回答を取り上げます。今年は新型コロナウィルスの 影響 で、いつもとは少し違う年末年始となりますが、通常アメリカでは年末年始をどのように過ごすのでしょうか?日本の年末年始の慣習と比較してどんな相違点、共通点があるかについても考えてみたいと思います。
※Q&Aサイトとは、ユーザーの質問や悩みに対して、ほかのユーザーが回答するプラットフォームのことです。 Quora や Yahoo Answers など。
なぜ年越しの瞬間にキスをするのですか?
まずは今回ピックアップする質問と回答を英語で読んでみましょう。意味の理解が不安なところは日本語訳を参考にしてください(逐語訳ではありません)。
※紹介する英文は、Q&Aサイトの実際のものを基にアルクで作成したものです。
Ethanからの質問
Michaelからの回答
- Superstition . According to an old superstition , whatever you are doing at midnight sets the tone for * the year ahead. The best way to ensure a year full of affection and romance is to begin it by locking lips with the one you love.
On the flip side, if you do have a significant other and don’t start the year with a smooch, then you run the risk of breaking apart in the new year. Of course , it really is just superstition , and I know very few people who would ever take it seriously. But it sure makes for a great excuse to indulge in a good kiss as the clock turns midnight!
逆に、大事な人がいるのに新年をキスや抱擁で始めなければ、その年にパートナーと別れる かもしれない というリスクを犯すことにもなるんだ。もちろん本当にただの迷信ではあるし、本気でそのことを信じている人をほとんど知らないけどね。でも、時計の針が午前0時を指したときにキスをするいい口実にはなるよね!
Wayneからの回答
Well , it’s usually not a long, lingering kiss, is it? It’s hard to get truly into it when you are surrounded by your friends and family. Usually, the “kiss” ends up just being a symbolic little peck on the lips. But there are some people who use a little strategy to make sure they are well positioned near the person they are most attracted to .
Another custom is for everyone to gather together, cross hands and sing “Auld Lang Syne.” But these days, a lot of us end up in bars and drink far too much -- to the point where the magic moment comes and goes before we even realize it.
ほかの年越しの慣習としては、みんなで集まって手をつないでAuld Lang Syne(「蛍の光」の原曲)を歌うことだね。最近は、バーで飲みすぎて気が付いた頃にはその素晴らしい年越しの瞬間が過ぎていた、という人も多いけどね。
Ivyからの回答
At the stroke of midnight, the new year begins. And as previously mentioned, whatever you are doing at that very moment is said to set the stage for the entire upcoming year. So , of course , friends and families want to be together to share their love and happiness.
Around this time of year, people also make New Year’s resolutions , where they come up with promises to themselves to change bad behaviors or to achieve goals. They seldom succeed.
この時期は、みんな新年の抱負も決めるよね。悪い習慣をやめることや、目標達成の誓いを立てる。抱負のほとんどは達成されないけどね。
今回の注目フレーズ!
superstition 迷信、迷信に基づき一般化している慣習superstition は「迷信」という意味ですが、迷信によって人々に信じられている「合理的ではないが広く受け入れられている慣習」というニュアンスがあります。ここでは、新年で最初にすることがその一年を決めるという考えを人々は迷信と捉えながらも、多くの人が実際にそのように思って行動していることを指しています。
set the tone for ~ ~の調子を方向付けるset the tone for ~ は「~の雰囲気を作る」「~の調子を方向付ける」という意味です。ここでは...sets the tone for the year aheadというふうに使われていて、「新年の方向性を決める」と解釈できます。
そのほか、 set a friendly tone(フレンドリーな雰囲気を作り出す)のように 「 set a/an 形容詞 tone」というパターンもあります。
significant other 大切な人、恋人、配偶者significant other は「大切な人」を意味し、「恋人」「配偶者」、または「パートナー」などとも表せる語で非常によく使われます。
significant other を使えば、boyfriend, girlfriend, husband, wifeなどの直接的な表現を避けることもできます。これらの語の言い換え表現としてぜひ覚えておきたい表現です。
make New Year’s resolutions 新年の抱負を立てるresolution は「決意」という意味で、 make New Year’s resolutionsは「新年の抱負を立てる」という表現です。新年によく使われる表現ですので覚えておきましょう。
Q&Aから読むアメリカのリアル
さて、ここからは質問と回答から見えてくる リアルなアメリカ像 に迫っていこうと思います。
年越しのキスは映画だけじゃない?
12月31日、大みそかの夜。年越しイベントでカウントダウンが始まり、
Three, two, one... Happy New Year!
と言って年越しの瞬間にキスをする・・・。
このようなシーンを誰もが一度は洋画などで観たことがあるのでないでしょうか?これは映画だけの演出だ、そう思っている方も多いかもしれません。
もちろん映画では過度な演出が加えられているときもありますが、この「年越しの瞬間にキスする」ことはかなり習慣化していて、アメリカで年越しイベントやパーティーに参加すると普通に目にする光景です。 恋人や夫婦などの significant other と呼ばれる相手とキスをしたり抱擁したりします 。これはアメリカに限ったことではありませんが、かなり一般的に受け入れられている文化と言えるでしょう。
midnight kissをするのは迷信を信じているから?!
今回の質問 Why do people kiss at midnight on New Year's Eve?にもありますが、 そもそも なぜ年越しの瞬間にキスをするのでしょうか?まずこの疑問について考えてみましょう。
Michaelさんが説明しているように、 「年越しの瞬間に何をしているかが、新しい年がどんな年になるかを決める」という迷信 が根底にあるようです。年越しの瞬間に愛に満ちた行動をしていれば愛に満ちた一年になる、そのことが「愛があふれる一年にしたいから愛する人にキスをして一年を始める」という考え方につながり、年越しの瞬間にキスやハグをすることが文化として定着したようです。
アメリカの年越しの定番とは?
アメリカの年越しは、家族や友人と過ごすか年越しイベントに出掛けるのが定番です。日本は年越しで初詣などをする人も多いですが、もちろんそのような慣習はアメリカにはありません。
アメリカで有名な年越しイベントはいくつかありますが、なんと言っても ニューヨークのTimes Squareのカウントダウンイベント が有名です。映画にもよく登場するので見たことがある人も多いでしょう。このイベントは大みそか23時59分に大きな玉が電光掲示板から下がり始め、下がり切ったところで年が明けるので The Ball Drop と呼ばれています。ニュースでもこの表現で出てくることが多いので覚えておきましょう。大みそかにはThe Ball Drop の様子が毎年生放送され、それを家族で見てゆっくり過ごすという家庭も多いようです。
ところで、このイベントをTimes Squareで生で見るには極寒の中5時間以上待たなければなりません。トイレにも行けないため、 オムツをはいている人も多い そうです。私も友人とこのイベントに行こうか迷いましたがそれを聞いて断念しました。
ちなみに 、アメリカは国土が広大で西海岸と東海岸などで時差があるので カウントダウンが複数回ある ことも日本との違いと言えます。
年越しの定番曲はAuld Lang Syne
Wayneさんは Another custom is for everyone to gather together, cross hands and sing “Auld Lang Syne.”と言っていますが、Auld Lang Syneは 「蛍の光」の原曲 のことです。“Auld Lang Syne”というのはスコットランド語で、英訳は“old long since ”ですが、スコットランド語のまま世間に浸透し、今では 年越しを祝うのに歌われる曲 として定着しています。
ロングマン現代英英辞典でも、“Auld Lang Syne”は a Scottish song that people sing when they celebrate the beginning of the new year at 12 o’clock midnight on December 31st と定義されていて、「年越しの曲」としての語義が定着しているのも読み取れます。一般的には/ˌɔːld læŋ ˈzaɪn/ や /ˌɔːld læŋ ˈsaɪn/と発音されます。
日本では「お店の営業時間終了時の曲」としてのイメージもある曲ですが、多くのアメリカ人にとっては年越しの曲で、私の友人で日本在住のアメリカ人は、「Auld Lang Syneはアメリカでは年越しのときにだけ聞く曲だけど、日本では毎日のように店で流れているから不思議だ」と言っていました。英語ネイティブスピーカーならAuld Lang Syneは誰でも知っている一般的な言葉なので覚えておきましょう。
Happy New Yearはいつまで言える?
ところで、年越しの瞬間はキスをしたりハグをしたり、Happy new year!と言い合うのが慣例ですが、このHappy new yearは日本語の「あけましておめでとうございます」 同様に 、1月1日以降にも言われることもあります。明確にいつまでHappy new year!と言えるかが決まっているわけではなく、1月の最初の週が終わるまでこのフレーズを使用する人や、もう少し先までHappy new year!と言う人など、かなり個人差もあるようです。
新年の抱負を決めることは日米共通
Ivyさんも言っているように、 新年の抱負を決めることは日米共通 です。アメリカでも「新年の抱負はある?」と聞くのは一般的なので、新年が明けたら聞いてみましょう。 Do you have any New Year's resolutions? というフレーズが使えます。
アメリカは正月休みなし?!
アメリカでは日本の「正月休み」という概念はほとんどない ため、1月2日から普通に会社が始まる人もいます。年末に大掃除をするという文化も特になく、年賀状も基本的にありません。私も大学院留学中に初めてアメリカの年越しを経験したときには、アメリカは年明けはずいぶんあっさりしているなと驚きました。
ちなみに 、日本ではクリスマスが終わるとクリスマスツリーを片付けることが多いかと思いますが、アメリカでは 年明けでもツリーが出ている こともよくあります。 クリスマスの12日後までをクリスマスシーズンと見なす考え方もある ようです。
ところで、日本ではクリスマスイブに外でお祝いをする人が多く、街もにぎわっていますが、アメリカでは12月25日が本番です。この日は閉まっている店も多く、街が閑散としていることも多いです。クリスマスは家族や友人と過ごすもの、という価値観が表れているのだと思います。
PDA「公共の場での愛情表現」の差
最後に、今回の質問のテーマだった大みそかのmidnight kissについて少し違う角度から文化の違いを考えてみましょう。前述のとおり、アメリカを含む欧米の多くの国では年越しの瞬間にキスをしたり抱き合ったりする文化があり、親が子どもの前でキスをしたり抱き合ったりすることも珍しくありません。
一方、日本では年越しの瞬間に子どもが、父親と母親がキスをするのを間近で見ることはあまり一般的ではありません。これは、アメリカと日本との間での PDA (Public Displays of Affection)の差 とも考えられます。 PDAは「公共の場での愛情表現」 を指す言葉ですが、日常的なレベルで日本のPDAの許容レベルはかなり低く、このことが年越しの文化の違いにも関係していると思います。
日本では、一般に公共の場でキスをしたり抱き合ったりすることは避けるべきという風潮があります。その一方で、日常的に愛情を表現する文化がある欧米では、大みそかのキスを受け入れやすかったのだと思います。
ちなみに 、年越しの瞬間に、 significant other でない「近くにいる人」とキスするという考えもあるようです。Wayneさんも ...there are some people who use a little strategy to make sure they are well positioned near the person they are most attracted to …と言っていますが、午前0時が近づくにつれて、意中の人のそばにうまく近寄るような計画をしている人もいるようです。まだ恋人でない人でも年越しの瞬間に近くにいれば距離が縮まるかもしれません。もちろん二人の関係によりますし、常識的態度で接するのは大切ですが。
今回の記事では、アメリカと日本の年末年始事情を見てきました。共通していることも大きく異なっていることもありました。今年はコロナの 影響 でいつもとは違った年末年始となりそうですが、いつかアメリカで年末年始を過ごす機会があればぜひこれらの文化の注目してみてくださいね。
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