イギリスのハロウィーンは「エコ」がトレンド【LONDON STORIES】

イギリスのハロウィーンは「エコ」がトレンド【LONDON STORIES】

「多文化都市」と呼ばれるイギリスの首都ロンドン。この街で10年以上暮らすライターの宮田華子さんが、日々の雑感や発見をリアルに語ります。

街並みに映えるオレンジ色のカボチャ

イギリスの秋は本当に一瞬で終わってしまう。日々気温が下がり、どんどん日も短くなる。私自身は「イギリス生活の醍醐味は寒い季節にあり」と思っているので、寒くなるほどうれしい。しかし一般的には「寒い季節になると気持ちが暗くなるよね」と言うのが秋のあいさつ代わりである。そんな短い秋にやって来るのがハロウィーンだ。9 月後半からカボチャ色のディスプレーが街を彩る。人々の装いが黒っぽくなっていく時期だけに、オレンジ色はまるで「差し色」のように街並みに映える。

ハロウィーンの起源は古代ケルトのドルイド信仰に基づく収穫祭「サウィン」にあるというのが定説だ。となるとアイルランドやイギリス周辺から始まったことになるのだが、その後複雑な経緯をたどって世界に広まっていったこの習慣をわかった上でハロウィーンを祝っている人はほぼいないだろう。現在のイギリスにおいて、ハロウィーンは「アメリカから来たもの」という印象だ。根っこをたどれば宗教にひも付くので、何らかの宗教の敬けい虔けんな信者は「異教の祭り」として嫌うという話も聞いたことはある。しかしこの辺をキリキリと言及する人に会ったことはない。子どもにとっては「コスチュームを着て楽しむ日」であり、若者にとっては「パーティーをする理由」、そして多くの人にとっては「にぎやかなイベント」だ。

イギリスのハロウィーンは「エコ」がトレンド【LONDON STORIES】

ロンドン郊外にあるGarsons Farm(ガーソンズ・ファーム)のカボチャ畑。

ハロウィーンの飾り付けとカボチャの廃棄問題

私がロンドンに来た2000 年代初頭は、まだ子どもが「Trick or treat!(お菓子をくれなきゃいたずらするよ!)」と言って近所を回るのがハロウィーンのメインだったと記憶している。その後、10月末日(ハロウィーン当日)直前の週末に若者がパーティーをするイベントとしても定着した。日本では路上で騒ぐ若者が問題になっているが、こちらではハウスパーティーがうるさくてご近所迷惑ということはあっても、路上や地下鉄で大騒ぎ、というのはあまりない。

クリスマスほどではないものの、みんなが「なんとなく」楽しみにしているハロウィーンなのだが、昨年から話題になっているのがハロウィーンの「エコ化」である。注目されている点は二つあり、一つ目はプラスチック削減の観点だ。例えば子どもたちの仮装用コスチューム。子どもは成長するものだし、キャラクターのはやり廃りもあるので使い回しが難しい。そこを見込んで1 ポンドショップ(イギリス版「100 円均一」的なお店)やスーパーが、数百円レベルで購入できるコスチュームをこの時期は大量に販売する。

またハロウィーンの飾り付けグッズもこの時期よく売れるが、ガーランドやランタン、スケルトン*1のおもちゃもプラスチック製品がほとんどだ。エコ意識の定着が進む中、こうした部分にいよいよ疑問が出始めた。コスチュームはなるべくプラスチック不使用の物を購入し、グッズは「使い捨てにしない」方向に向かい始めている。子どものコスチュームを徹底的にエコ化しようとすると保護者の負担が多そうだが、こういった声が大きくなることで商品そのもののプラスチック含有量が減るだろうと期待されている。また、小学校ではハロウィーンの飾りを紙で手作りしながらエコを教える試みが行われ、今後は子ども世代から「使い捨ての飾り」を避けるようになっていくはずだ。

もう一つはカボチャの廃棄問題。ディスプレー用にカボチャを買ったはいいが、ハロウィーンが終わると6 割ものカボチャが食されることなく廃棄されているという(クノール社と環境保護団体Hubbub 調べ)。このニュースは昨年大きな話題となり、各メディアがカボチャ料理のレシピを紹介するなどして廃棄を減らすよう訴えた。

イギリスのハロウィーンは「エコ」がトレンド【LONDON STORIES】

私が購入した中サイズのカボチャは、スープ、グラタン、ローストと3 回で食べ切りました。

エコ化したハロウィーンを楽しもう!

わが家にも昨年初めてハロウィーン用の黄色いカボチャがやって来た。イギリスではカボチャのことを総称して「squash(スクワッシュ)」と言う。最も一般的なカボチャは細長い形の「バターナット・スクワッシュ」。すでにカット済みの半調理品も売られており、イギリスではよく見掛ける野菜の一つだ。ハロウィーン用の黄色いカボチャは「pumpkin(パンプキン)」と呼ぶが、スクワッシュの一種という立ち位置。どちらも日本のカボチャとは異なり、水分と繊維質が多く、甘みはあまりない。スープにするか、オーブンでローストするかが代表的な調理法で、最近はリゾットにするのも人気だ。水分が多いのでほくほく感はないが、繊維のザクザク感を楽しめて食感は軽い。買ってはみたものの巨大な1玉を食べ切れるか心配したが、手早くスープが作れ、また大盛りのグラタンにしてもあっさりおいしく食べ切れた。このカボチャの食べ切りは、友人たちに聞いても「意外と完食できたね」と楽しみながらやっていたようだ。

今年はハロウィーンのエコ化2 年目なので、さらなる進化が見られそうだ。「エコの指導」が入ることで、面倒なこともないわけではない。しかし楽しいイベントの過程におけるエコなので、創意工夫しながら取り組むのは「それもまた楽し」だ。今年もプラスチック製のグッズは買わず、しっかりカボチャを食べ切り、子どもたちに渡すお菓子は紙袋に入れて、エコで楽しいハロウィーンを過ごそうと思う。

イギリスのロンドンってどんなところ?

イギリスの首都ロンドンはイギリス南東部に位置し、さまざまな人種・文化・宗教的背景の人たちが住んでいる「多文化都市」。ビッグベン、大英博物館など観光スポットも満載。

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年11月号に掲載した記事を再編集したものです。

*1:人間のように動く骸骨のモンスター。

宮田華子(みやた はなこ)ライター/エッセイスト。2002年に渡英。社会&文化をテーマに執筆し、ロンドン&東京で運営するウェブマガジン「matka(マトカ)」でも、一筋縄ではいかないイギリス生活についてつづっている。