読み書きよりもコミュニケーション重視?変わりゆく外国語学習の指導法

読み書きよりもコミュニケーション重視?変わりゆく外国語学習の指導法

「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌ENGLISH JOURNAL(EJ)の動画連動企画「Lecture」。「人はどのように言語を学ぶのか」をテーマとしたレクチャーの第2回目となる8月号は、「外国語の学習と指導の歴史」について言語学者の藤田 保さんに教えてもらいました。

時代によって変わる外国語学習の指導法

今回のレクチャーは、「外国語の学習と指導の歴史」についてお話しします。

第二言語もしくは外国語の学習の歴史は、何千年も昔までさかのぼります。当時、外国語を学ぶ主な目的は、書物を読んで、新たな知識を得たり、英知を獲得したりすることでした。日本でもそれは同じで、多くの教養人が、孔子の著書のような中国の古典から学んでいました。

このように、かつては「読み・書き」中心だった外国語の教授法は、徐々に「聞く・話す」を重視する方向へと変わり、さらに現代では「コミュニケーション能力」に着目した学習に重きを置かれるようになっています。

ぜひ動画を見ながら、外国語学習の指導の変遷について学んでいきましょう!

1. 江戸時代末期~明治時代初頭:文法訳読法(動画01:12~01:52)

Toward the end of (the) Edo Period or at the beginning of (the) Meiji Period, Japanese people tried to learn about Western medicine, technology, philosophy or the legal system by reading books from such countries as Holland, England, France and Germany.

Since the main focus of learning a language, as I mentioned earlier, was reading and writing, people were studying grammar, memorizing vocabulary and translating texts from one language to another. As long as people could translate what they were reading, that was enough.

江戸時代末期から明治時代初頭にかけて、日本人は、オランダ、イギリス、フランス、ドイツといった国の書物を読むことで、西洋の医学、科学技術、哲学、法律制度を学ぼうとしました。

先ほども触れたように、当時の言語学習における主な焦点は読むことと書くことにあったので、人々は文法を学び、単語を覚え、文章をある言語から別の言語に翻訳しました。読んでいるものを翻訳できさえすれば、それで十分だったのです。

このような外国語教授法は、grammar-translation method(文法訳読法)と呼ばれます。外国語を母語に翻訳できるようになることを目標として文法を教える教授法のことです。

2. 19世紀末~20世紀初頭:自然[直接]教授法(動画2:00~2:48)

But toward the end of the 19th century and the beginning of (the) 20th century, with the development of transportation such as railroads and steamships, it got easier for ordinary people to move around for trading and other purposes, and people from different country[countries] began to interact with each other. As the people’s mobility increased, the demand for speaking a foreign language got stronger.

So, people started (to) teach how to speak foreign languages but in a very primitive way. Teacher(s) tried to imitates the way many parents were doing to teach their own children.

しかし、19世紀末から20世紀初頭にかけて、鉄道や蒸気船などの移動手段が発達すると、一般の人々が商売やその他の目的のために移動しやすくなり、さまざまな国の人が互いに交流し始めました。人々の移動性が高まるにつれて、外国語を話すことへの需要が高まりました。

そこで、人々は外国語の話し方を教え始めましたが、(それは)極めて原始的なやり方でした。教師たちは、多くの親が子どもに言葉を教えるときにやっていた方法を模倣しようとしたのです。

この指導法は、natural method(自然教授法)またはdirect method(直接教授法)と呼ばれます。学習者の母語を使わず、学習対象言語のみを使って教える教授法です。つまり、英語を教える教師たちは、学習対象言語である英語を使って教え、日本語への翻訳は特にしませんでした。

3. 20世紀半ば~:オーディオ・リンガル・アプローチ(動画3:28~4:15)

But in the middle of the 20th century, after the Second World War, an innovative teaching method called (the) audio-lingual approach was invented. And this was the first scientific foreign language teaching method. And it was based on the behaviorist psychology and structural linguistics. With structural linguistics, the structure of sounds, words and sentences of a language is analyzed. The sound structure of one language, for example, is contrasted with that of another so that we can see what is similar and what is different between the two languages.

しかし、20世紀半ば、第2次世界大戦後には、オーディオ・リンガル・アプローチという画期的な指導法が生まれました。そしてこれは、史上初の科学的な外国語指導法でした。行動主義心理学と構造主義言語学を基礎にしていました。(この指導法では、まずは)構造主義言語学によって、ある言語の音声、単語、文の構造が分析されます。例えば、2つの言語間でどこが共通し、どこが異なるかの分析ができるように、1つの言語における音声の構造を別の言語の音声の構造と比べます。

文法的な分析をせず、学習者に学習対象言語の文章を反復して口に出させ、「型」を身に付けさせる教授法は「オーディオ・リンガル・アプローチ」と呼ばれ、世界中で大変な人気を博しました。しかし1970年代後半に、パターン・プラクティスが退屈になりがちだという課題が見えてきました。しかも、何度も何度も声に出して練習したところで、言語構造を機械的に練習するだけでは、必ずしも他者とコミュニケーションをとれるようにはならないという点もありました。

4.1980年代終わり~1090年代初頭 :コミュニカティブ・アプローチ(動画10:21~11:04)

But toward the end of the 1980s and the early ’90s, people began to think communicative competence was more important than the structures of a language per se. When someone comes into the room and say(s), “Oh, it’s hot in here,” it (is) usually more than just a description of the temperature of the room. For example, it could be a suggestion to open the window or turn on the air conditioner.

けれど、1980年代の終わりから90年代初頭になると、人々は、言語の構造そのもの(の正しさ)よりも、コミュニケーション能力の方が大切だと考えるようになりました。誰かが部屋に入ってきて、「わあ、ここは暑いな」と言ったとしたら、普通それには、室温についての単なる記述以上のものがあります。例えば「窓を開けて」とか「エアコンを入れて」といった提案かもしれないわけです。

コミュニケーション能力を育むことに重きを置く言語教授法は、「コミュニカティブ・アプローチ」と呼ばれます。例えば「ここは暑い」と誰かが言った場合、「窓を開けて」とか「エアコンを入れて」という隠された意味を理解するのは、文法をただ暗記しただけでは難しいでしょう。ほかの人と実際に交流し、現実的な意味がある文脈の中でその言語を使ってみる必要があるのです。

言語学にまつわる語句を要チェック!

「外国語の学習と指導の歴史」に関する英語レクチャーはいかがでしたか?動画の中で登場する、言語学にまつわる表現を下にまとめました。

    • acquisition:習得、獲得
    • interact with ~:~と交流する
    • imitate:~を模倣する
    • pattern practice:パターン・プラクティス、文型練習 ★言語における一定の型を反復して声に出す練習のこと。
    • substitution drill:置き換え練習 ★基本となる文章の一部を別の表現に置き換える練習のこと。
    • reinforce:~を強化する
    • description:記述、描写
    • context:文脈
    • get ~ across:~を伝える
    • fluency:流暢さ

 

皆さんもぜひ、これらの語句を使って「言語学」について人と話したり、説明したりできるようになりましょう!

この動画の全スクリプトと和訳はENGLISH JOURNAL 8月号で!

動画での学習は、視覚情報を伴い、英語でどんな内容を話しているかをより理解しやすくなるため、初級者の方にもおすすめです。レクチャー動画を実際に見ながら、「言語学」についてぜひ英語で学んでみてください!

英語レクチャーが充実! EJオリジナル動画はこちら

ENGLISH JOURNAL の連載「Lecture」ではこれまで、ロッシェル・カップさん(経営コンサルタント)に「英語での働き方」、ギャヴィン・ブレアさん(ジャーナリスト)に「Brexit問題」、ソンヤ・デールさんに「ジェンダー/LGBT」、勝又泰洋さんに「神話」、フー・ユィーングさんに「身近な医学」についてレクチャーしていただきました。ぜひこちらも併せてお楽しみください!

藤田 保(ふじた・たもつ)
東京生まれ。言語学者。日本全国で幼稚園、小学校、中・高、大学とあらゆる校種の英語教育やバイリンガル教育に関わり、文部科学省や東京都教育委員会等で各種委員を歴任。現在、上智大学言語教育研究センター教授、副センター長を務める。

写真・動画:田村 充
構成・文:須藤瑠美(ENGLISH JOURNAL編集部)