バイリンガルSF小説家が実践! 英語のスピーキング力を劇的に伸ばす「リプロダクション」って?

リプロダクションのススメ

英語を聞いたり話したりする力をまとめて強化できたらいいな、と思ったことはありませんか? そんな効率のいい勉強法、実は本当にあるんです。それが「リプロダクション」。『天駆せよ法勝寺』で第9回創元SF短編賞受賞の著者、バイリンガル小説家の八島游舷(やしまゆうげん)さんが実践しているその方法をわかりやすく丁寧に解説します!

小説家の英語学習法

はじめまして。小説を書いている八島游舷です。

皆さんは、こんなふうに考えたことはありませんか?

  • 英語をもっと話せるようになりたいんだけど、どうしたらいいの?
  • ずっとシャドーイングをしてきたけど成果がなかなか出ない
  • 英語をもっと聞き取れるようになりたい

 

今回から7回にわたってスピーキング力を鍛える訓練法として「リプロダクション」を紹介します。

リプロダクションを練習することで、前述のような疑問や悩みの答えが見つかるはずです。なお、このコラムではTOEIC 550点前後、英検2級程度以上の英語力の方を念頭に置いています。

小説家がなぜスピーキングの訓練?

さて、私のような小説家がなぜスピーキングの訓練しているのか。理由の1つは、「英語で小説を書きたい」また「海外に向けて小説を書きたい」からです。

だったら、ライティングをもっと練習した方がよいのではと言われるかもしれません。それもごもっともです。しかし、海外の読者の心に響く作品を書くには、海外の読者と直接対話して彼らが何を考えているのかを知る必要があります。

小説家が英語を使う機会があるのかって? あります!

有名どころとして村上春樹は翻訳家としても知られています。彼の独特な翻訳調の文体は、最初に英語で書き、それを日本語で訳すことによって生み出されたと彼自身が『職業としての小説家』(新潮社)で述べています。彼の作品が世界各国で広く読まれているのもこのような書き方が貢献しているのかもしれません。

後の回でも紹介しますが、私はオンライン英会話の1つ、DMM英会話を6年間ほぼ毎日25分間続けています。これまで世界約50カ国、600人以上の講師と話してきました。

私がここ3年くらいしているのは、これまで書いた、またはこれから書く自分の小説の筋を英語で説明する、ということです。

私の作品は今のところSFが多いのですが、SFの世界では(ミステリーもそうですが)英語圏の小説家が大きな力を持っています。国内SFファンのイベント、SF大会では海外からのゲストと話す機会がありました。

世界規模のSFのイベントである「WorldCon(ワールドコン)」は、今年はニュージーランドで開催される予定でした。

conzealand.nz

toastmaster(乾杯の音頭を取ったり司会したりする役の人)は『ゲーム・オブ・スローンズ』原作者のGeorge R. R. Martinです。『ロード・オブ・ザ・リング』など数多くの映画のロケ地でもある当地を訪れるのを楽しみにしていました。

残念ながら、新型コロナウイルスのために今年はオンラインでの開催となります。それでも海外の小説家やファンと交流できる貴重な機会となりそうです。

私はイギリスの高校とシカゴ大学の修士課程に合計3年程度留学しました。英検1級、TOEIC満点、TOEFL 111点です。ただ、それだけでは私自身が満足できる英語力をなかなか身に付けることができませんでした。

文芸で必要となる英語力は、ビジネス英語とはまったく比較にならないほど高度なレベルです。その後、継続的に英語力を鍛えることで一定のレベルに達しましたが、語学学習に終わりはありません

とはいえ、そこに到達するために試行錯誤する中でひとつ、効果的と思える方法を見つけました。それがリプロダクションです。

リプロダクションとは?

リプロダクションとはなんでしょうか?

簡単に言えば「耳で聞いた内容をそのまま発声する」ことです。reproduceとは、元の内容を複写、またはそのまま再現するということです。

それではシャドーイングと同じじゃないの? と思われるかもしれません。

リプロダクションがシャドーイングと違う重要な点が1つあります。シャドーイングでは、音声を聞きながら音声を停止することなく、その後に続けて発声します。しかし、リプロダクションでは耳で聞いた後、いったん停止してその後発声します。

またリプロダクションでは、声に出して発声する前に、頭の中で発声します。これはわずかな違いのようですが、実際にやってみるととても大きな違いであることがわかります。

実際に試してみよう

まずはシャドーイングからしてみましょう。下の音声の再生を開始したら、音声を止めずに、すぐ後から発声してください。

※本連載で使用している音声は『指名が途切れない通訳ガイドの英語で日本紹介アイデアブック』(島崎 秀定:著)に収録されているものの速度を調整しています

次に、リプロダクションをやってみます。

リプロダクションをやってみよう

まずはリプロダクションの流れを確認しましょう。

1. 5から8語、または3秒くらいごとに区切りのよいところで一度音声を止め、今聞いた内容(かたまり)を頭の中で発声します。
2. 数秒たった後で、声に出して言ってみてください。
3. 慣れれば、この短いかたまりをまとめて、最初から発声することもできます。

では、実際にやってみましょう。

いかがでしたか?

実際に試すと、シャドーイングと比較してリプロダクションのほうが難しいということがすぐにわかります。リプロダクションでは音声の内容を一時的に記憶する必要があるからです。この作業のことをリテンションと呼びます。

シャドーイングでは記憶する必要はまったくありません。というより、口に出した先から聞いたことを忘れてゆきます。

今回のまとめ

  • リプロダクションとシャドーイングは似ているが、明確に違う点がある。
  • シャドーイングは、音声を聞いたらそのまま続けて発声する。
  • リプロダクションでは、音を聞いたらいったん止め、音声の内容を一時期的に記憶する。
  • 音声の内容を一時的に記憶すること、リテンションという。

 

次回から、リプロダクションの仕組みについて詳しく紹介していきます。

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八島游舷さんの本

Final Anchors (早川書房)

Final Anchors (早川書房)

  • 作者:八島 游舷
  • 発売日: 2018/08/15
  • メディア: Kindle版

 

おすすめの本

この連載で使用の音声は、こちらの書籍に収録。音声の英文や和訳も掲載しています。

※紹介の書籍のリンクはAmazonアソシエイトの商品ページです

文:八島游舷(やしまゆうげん)
小説家。英語での小説出版を目指している。『天駆せよ法勝寺』(東京創元社。九重塔が宇宙船となり彼方の星にある大仏を訪れる仏飛びSF)で第9回創元SF短編賞受賞。ダウンロード回数は1万を超える。『Final Anchors』(早川書房。2台のAI自動運転車が衝突寸前の0.5秒で対話する)で第5回日経「星新一賞」グランプリ、『蓮食い人』で同優秀賞をダブル受賞。https://yashimayugen.com