実は月に行きたくないゴズリング?『ファースト・マン』来日記者会見

ライアン・ゴスリングさん(左)とデイミアン・チャゼルさん c 2018 Universal Pictures. All rights reserved .

人類初の「月面着陸」に挑んだ男、ニール・アームストロングの真実に迫る映画『ファースト・マン』がついに公開。昨年12月には主演のライアン・ゴズリングと監督のデイミアン・チャゼルが来日。記者会見の様子をレポートします!

『ラ・ラ・ランド』に続く、最強タッグの挑戦

まず登壇したのは主演のライアン・ゴズリングと監督のデイミアン・チャゼル。この組み合わせと言えば、あの話題作『ラ・ラ・ランド』が思い浮かぶ方もいるのでは。2016年以来の再来日だそうです。2人とも「また日本に来ることができてうれしい」と口火を切り、和やかなムードで会見は始まります。

チャゼル監督は、映画『ファースト・マン』を製作しようと思った きっかけ について、こう語りました。

Chazelle: When I first read the book that the movie’s based on , by Jim Hansen, it seemed in a way like an extension of a question I had grappled with in my earlier film Whiplash. And this question being what the cost of a goal is ? the cost of pursuing a goal, and looking at that process by which a goal is achieved. In some ways there’s no more famous goal in history than the goal to land a man on the moon. So it seemed like a kind of , a sort of iconic canvas upon which you could ask that question.
チャゼル監督:この映画の基となったジム・ハンセンの小説を最初に読んだときに、ある意味、自分が以前に製作した映画『セッション』(原題:Whiplash)で投げ掛けた問いの延長線上にある物語のように思えました。その問いというのは、“目的を達成するためにはどんな代償を払うのか”ということで――目標を追求することの代償を、そのプロセスを考察する中で、その問い掛けをさらに掘り下げられるのではないかと思います。ある意味では、歴史上で、「月面に人が降り立った」こと以上に有名なゴールはありません。ですからこれは、その問いを投げ掛けるのに象徴的なキャンバスの一つだと思ったのです。

しかし、監督のこの考えは、映画製作が進むにつれて変化していったと言います。

Chazelle: But after starting to work with Ryan on the movie and starting to really do more research, the project became a little different , for me at least . It became a little less of a story about a goal, and more a story about where Neil was coming from ? specifically the grief and loss of his life that I think perhaps helped propel him towards the moon. But I think it was always that balance between the space mission and the intimate emotional life of Neil and his wife Janet.
チャゼル監督:しかし、ライアンとともにこの映画に 取り組み 始め、より深く調査をし始めると、この映画の計画は、少なくとも私にとっては、少し違ったものになってきました。「ゴール」についての物語というより、「ニール(・アームストロング)がどこから来たのか(どのようにして月面着陸を成功させたのか)」という話になってきました――特に、彼の人生における悲しみや喪失が、おそらく彼を月へと駆り立てた 推進 力になったのではないかと思うのです。月面着陸というミッションと、ニールと彼の妻・ジャネットの親密で感情的な生活のバランスをいつも考えていました。

人類で初めて「月面着陸」に成功した男、と聞くと、輝かしい成功の物語を想像しがちですが、実際には華やかなことばかりではなかったようです。

映画では、月を目指す宇宙飛行士と彼らを取り巻く人々の複雑な感情が描かれています。

「月へ行くこと」への思い

来日イベントには宇宙飛行士の山崎直子さん(上写真左)、そして2023年に民間人として初めて宇宙に行く予定となっている、ZOZOTOWN社長の前澤友作さん(写真右)も登壇。それぞれの月に対する思いが語られました。

これから実際に月に行くことになる前澤さんに対し、チャゼル監督は「少し嫉妬する」と話す一方で、ゴズリングからは少し意外な発言も飛び出しました。

Gosling: As much as I thoroughly enjoyed every moment of making this film, especially the mission sequences ? the experience of being in the spacesuits and looking out the window of these meticulously crafted capsules, and seeing on an LED screen, the moon outside the window, as much as I loved that, I loved even more that when Damien said cut. I just, it was a set and I was stepping onto the Earth, I realized in those moments just how courageous and how much bravery it takes to do it. I have just tremendous respect for what you do, and for what you’re about to do, so . I think, I’ll be here on Earth, cheering you both on , and supporting you from down here.
ゴズリング:撮影中のどんな瞬間も本当に心から楽しく思いました。特に、宇宙ミッションの時間――宇宙服を着たり、精巧につくられたスペースシャトルの窓から外をのぞいたり、それからLEDのスクリーンに映る窓の外の月を見つけたり、といったことですね。そういった時間が本当に大好きだったのと同じぐらい、いやそれ以上に、デイミアンが「カット」と言うのが大好きでした。そこで(セットから)足を踏み出して地上に降り立ち、そんな瞬間に気付くんです。(宇宙に行く方々は)どれだけ勇敢で、(宇宙に行くためには)どれほどの勇気が必要なのだろうか、と。ですから、あなた(山崎さん)がなさっていること、それから、あなた(前澤さん)がこれからしようとしていることに、本当に大きな尊敬の念を抱きます。私はここ、地球にいて、あなた方のことを応援して、地上から支えていたいと思います。

なんと、まさかの「月に行きたいとは思わない」という気持ちを表明したのでした。

月の代名詞、ニール・アームストロング

そんなゴズリングも作中では、ひたすらに月を目指すニール・アームストロングを熱演。妻子を地球に残し、宇宙へと飛び立つ複雑な感情を繊細に描き出しています。

『ENGLISH JOURNAL』 2019年3月号の「EJ Interview 1」では、そんなゴズリングが最初にこの役を演じることが決まったとき、どんなことを思ったかなどについて語った、トロント国際映画祭の記者会見を掲載しています。

Gosling: Well , I think as soon as I learned what the moon was, I learned that a man named Neil Armstrong walked on it. So , he was always synonymous with the moon, but like the moon, I knew very little about him. When I met with Damien and he, uh, told me about, that he wanted to sort of uncover the, the man behind the myth ...
ゴズリング:まあ、月が何であるかを学ぶと 同時に 、ニール・アームストロングという名前の人がそこを歩いたことを学んだと思います。ですから、彼はずっと月の代名詞のようなものでしたが、月と同様、彼についてもほとんど知りませんでした。デイミアンと会ったとき、彼は、神話に隠された人物の、いわば覆いを取りたいのだと話してくれました。

ニールが幼少期に過ごした場所や、当時の彼の妻・ジャネットとの対面などを通じて役への理解を深めた彼のエピソードもとても興味深いものとなっています。

続きはぜひ、『ENGLISH JOURNAL』2019年3月号でご確認ください。

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ライアン・ゴズリングとデイミアン・チャゼル監督のインタビューに加え、EJ編集部によるJAXA(宇宙航空研究開発機構)見学など、『ENGLISH JOURNAL』2019年3月号には「宇宙の英語」が盛りだくさんです。

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構成・文:江頭 茉里
ENGLISH JOURNAL編集部員。夢は自分が編集した本ばっかりの本棚を作ること。 熱しやすく、冷めにくい。好きなもの・趣味が多すぎるのが悩み。

写真:山本高裕

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