ハーバード大学やスタンフォード大学など世界の名門大学の講義が動画で見られる時代。今回は通訳・翻訳者で英語教育の研究にも携わる佐々木南実さんに、イェール大学のオンライン講座を試していただきました。
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“re-skill”という言葉をご存知だろうか?希望の仕事に就くためには、1種類の学士号では十分ではなくなり、社会人が学位の再取得“re-skill”を迫られるという、近未来社会のキーワードだ。そんなニーズに応える仕組みがMOOC(ムーク)。日本語字幕に対応した講座も増えているようです!
イェール大学の講義を無料で!スマホで!
世界中の人に最良の学びを・・・と、どこかで誰かが作ってくれている無限の学びの楽園。そんなmassiveでopenなonline courses、すなわちMOOCを探訪する本コーナー。前回はedX経由でハーバード大学の講義を聴講してみました。
今回は宿命のライバル、イェール大学を訪ねてみるとしよう。
今回はスマートフォンアプリで受講!
東インド会社 (世界史に出てきましたね) 総督のイギリス人貿易商、奴隷商人にして当然大富豪のイェールさんという人の寄付で1700年頃に設立されたというイェール大学。若きクリントン夫妻が出会い(※1)、ブッシュ親子も青春を謳歌(おうか)したキャンパスに思いをはせながら、スマホでCourseraのアプリをタップしてみよう。
▼アプリはここからダウンロード
App storeやGoogle PlayからCoursera(コーセラ)で検索するとすぐにアプリがダウンロードできる。
サインイン/ログインしよう
PCでアカウント登録が済んでいれば、メールアドレスとパスワードでログイン。
アプリからのアカウント作成も可能。インターフェイスは日本語なので使いやすい。iPhone用のアプリには、気になったところを即座にメモと字幕と一緒に保存しておける「メモ」という機能もついている。(iPhoneアプリのみ)
雲と矢印のアイコンをタップすれば、すべての教材をダウンロードして、あとでゆっくりと視聴することができる。なお、ダウンロードしなくてもストリーミングで動画を見ることは出来るが、Wi-Fi環境の無いところでは多くの通信量がかかってしまう。環境によって、ダウンロードするか否かを 判断 してほしい。
1時限目:Moralities of Everyday Life
日常の道徳学 ポール・ブルーム教授
スマホからCourseraにログインすると、前日までPC で受講していたMoralities of Everyday Lifeという心理学の講義が自動的に画面に現れた。横スワイプで受講中の講義を次々と確認することもできる。そしてなんと、この講義には日本語字幕が付いている!
どこかで誰かが翻訳してくれているのだ。ありがとう!感謝しつつ画面を見ていると、先生の話に合わせて字幕の色が青に変わっていくので、音が聞きづらい電車の中などでも視聴できそうだ。聞き逃したと思ったら、文字をタップすれば即座にビデオがその箇所に巻き戻る。
有名大学の講義を聴講することの利点は、著作が豊富な教授が多く、和訳も手に入りやすい点だ。本コースの副読本はブルーム教授の著書「ジャスト・ベイビー」で、ありがたいことに和訳が出版されている。読んでいなくても聴講は可能だが、予習しておくに越したことはない。
読書がキツいという人は、ブルーム教授はTEDトークにも度々登場しているので、そんなビデオを見ておくだけでも、なんとなく教授の論調が入ってきやすくなるだろう。
アプリに表示される「コース終了まであと5時間」などの表示に励まされながら、聴講を進める。
教授が時折「あなたならこんなときどうする?クイズ」を挟んでくるのだが、そのたびにビデオが中断されて解答画面になる。ただ、これは答えてもいいし、スキップしてもいい。
「憎悪」や「愛らしさ」などのテーマを取り上げながら、道徳感情を心理学的に分析していく。話に出てくる具体例が、当然のことだがすべて欧米を舞台にしているので、最初はちょっとした価値観のずれを感じる人もいるかもしれない。
しかし、それこそが留学の醍醐味を疑似体験していることなのではないだろうか? そう思ったらほかの受講生の声を聞きたくなったので、「フォーラム」というタブをタップして、クラスメイトの集まるフォーラムへGO!期待を裏切らない、多様性に富んだ面々が、まじめにディスカッションを繰り広げている。
Courseraの特長として、mentorという先輩役の人が書き込みに対して返事をしてくれる、というのがある。ちなみに、この mentor役のボランティアを常に募集しているので、興味のある人はそんな関わり方も可能である。
予習のための推奨読書
2時限目:Introduction to Negotiation: A Strategic Playbook for Becoming a Principled and Persuasive Negotiator
交渉術概論:理論的かつ説得力ある交渉人になるための戦略的プレーブック バリー・ネイルバフ教授
バリー・ネイルバフ氏はイェール大学ビジネス・スクールの名物教授。ネイルバフ教授の著書 Thinking Strategically: The Competitive Edge in Business, Politics, and Everyday Life(1991、日本語版『戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想』)は、わかりやすい具体例を利用し、ビジネスの戦略的思考を説明してくれる教科書として大ヒットした。
調べてみると、キャッチーな邦題からも想像できるように、この本は日本でもベストセラーとなっていたらしい。
この本でネイルバフ教授は、ゲーム理論を「ツール」として位置づけていた。その理論を一歩進め、ゲーム理論を「アート(技)」として捉え直したのが2008年に出版されたThe Art Of Strategy: A game Theorist's Guide to Success in Business and Life だ。
翻訳版が出ていないこの改訂版の内容をCourseraで学ぶことができるというわけなので、当然のことながら興味津々である。
ネイルバフ教授のキャラはなかなかのもので、ビデオにはちょっとしたコメディの寸劇のようなものやアニメーションが出てきたりもしつつ、テンポ良く「交渉術」の講義が進んで行く。
教授によれば、交渉において最も重要なのは「パイ」を見極めることだとか。お互いに「おいしい」部分はどこなのかをステークホルダーのあいだで明確に見極め、そこを均等分配できるように交渉する。ここに「匠の技」が効いてくるらしい。
上述のブルーム教授の心理学と同じく、実例が欧米の文脈なので、ここを自分なりにローカライズしながら聴講するといいだろう。残念ながら本講座には日本語字幕は今のところ付いていない。
予習のための推奨読書
翻訳書があるのは改定前の古い1991年バージョンだが、予習として日本語で読んでおくには面白いかもしれない。
どれもこれも面白そうなコースばかりで時間が足りない!
イェール大学の講義をいくつか聴講してみての感想は、面白すぎて本当に時間が足りない、ということに尽きる。
キャリアアップのためにMOOC留学したら、MOOCにハマって仕事がはかどらない!なんていうミイラ取り現象がビジネスパーソンのあいだで起こりそうだ。
お試し聴講がいくらでもできるのがMOOCのありがたいところ。最初は辞書なしでザーッと聞き流し、気に入ったものがあればじっくり聴講してみるのもいいかもしれない。
最初の何分間かで「やめる勇気」も大切かも! それくらい、豪華なネタがそろっている。
Courseraは中国進出も果たし、今やCoursera Appのダウンロード数はアメリカに次いで中国が世界2位とのこと。これはすなわち、中国とのビジネス・パートナーシップにより、中国語字幕や中国用コンテンツがどんどん充実していくことを意味する。
というわけで今回は、イェール大学の門を叩いてみました。次回以降もMOOCの向こうに無限に広がる知の世界を主体的に探究し続けますよ!
イェール大学が提供するその他のコース
The Global Financial Crisis (世界金融危機入門)
元アメリカ合衆国財務長官と、イェール大学ビジネス・スクールの教授が掛け合いで講義をしてくれるという、なんと豪華なティーム・ティーチング!
ここ200年のあいだで4回起こった、世界規模の金融危機について学びます。その時、アメリカ政府はどう動いたのか。日本の財務省OBが音声で何かコメントを付けてくれたら最高なのになぁ・・・ と妄想してしまう。
Financial Markets(金融市場概論)
先物取引、ストックオプションなど、金融市場の基本を実例と結び付けながら勉強していきます。金融関係機関に働いている、もしくは働いたことのある人なら、カタカナでおなじみの業界用語も出てくるので、英語がそれほど得意でなくても楽しめるコースでしょう。
今、われわれはfinancial revolution(金融革命)のまっただ中にいる!と教授は話しているので、バーチャル通貨などの話も出るのかもしれませんね。
The Science of Well-Being(心理学的幸福論)
幸せってなんだっけ?という命題に心理学で挑みます。そして、実際にやってみます!”Rewirement”と呼ばれるウェルネス・アクティビティを学生たちが体験してみることで、自分たちの「幸せ」に対する認識や、ありがちな「勘違い」を 再認識、再構築していくクラスです。
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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