TOEIC L&RテストのPart 2が難しいのはなぜ?「できない理由」を徹底解析!

『TOEIC(R) L&Rテスト Part 2 リスニング解体新書』の発売にあたり、著者の勝山庸子さんにPart 2対策について語っていただく本連載。第2回は、Part 2が難しいと言われる理由についてご解説いただきます。

みなさん、TOEIC L&Rテストの対策は順調に進んでいますか? 本連載では、7つあるTOEICテストのパートの中でも特にPart 2に焦点をあて、なぜPart 2が難しいのか、Part 2で高スコアを出すにはどうしたらよいのかを考えていきます。

Part 2は、TOEICテストのほかのパートと比べると一文が短く、しかも選択肢は3つだけです。Part 3の長めの会話やPart 4のトークよりも、ずいぶん簡単そうに見えますよね。でも、長年英語指導をしていても、なぜか「Part 2は得意です!」「Part 2ならまかせて!」という方にはほとんどお会いしたことがありません。特に2016年に現行の形式のTOEICテストが登場してからは、「Part 2が難しい」という声をよく聞くようになりました。その数の多さが書籍『TOEIC ® L&Rテスト Part 2 リスニング解体新書』を執筆するきっかけになったほどです。今回は、学習者の方々からお聞きした話や私自身の受験体験をもとに、Part 2が難しいと言われる理由を考えたいと思います。

1. 聞き取るのが難しい 

リスニングの問題では、音声を聞き取って理解することが重要です。Part 2は設問文の語数が4~15語程度、応答文(選択肢)は平均5語程度と、英文がとても短いのが特徴です。この英文の短さが、Part 2の聞き取りを難しくしていると考えられます。

Part 3やPart 4のように200語以上から成る会話やトークでは、会話のトピック、話し手の素性、会話が行われている場所などに関するヒントが複数個所に散りばめられていることが多く、すべてを聞き取れなくても概要を把握することが可能です。例えば、exhibition(展示)、paintings(絵画)、the gift shop(ギフトショップ)といった語句が断片的に聞き取れたら、「美術館での会話かな?」などと想像できますね。そしてこの程度の概要が把握できると、より詳細な状況を想像しやすくなるため、細部まで聞き取れていなくても話の大筋を理解できることがあるのです。

Part 2はその逆で、文が短いため、1語でも聞き取れないと内容が理解できなくなってしまうのです。

Part 2の聞き取りを難しくしているもう1つの要因は、その短い文の中に含まれるイディオムや熟語などの定型表現です。これらの表現は口語的なものが多く、受験者があまり見聞きしたことがない表現を音声だけで理解しなければならないため、戸惑う方も多いようです。定型表現は音変化が起こりやすく、音声で聞こえる発音と、綴りから想像できる発音との差異が大きいことも、さらに聞き取りを難しくしています。

2. 捻った応答が多い

Part 2が苦手な方々は、よく「正答がないように感じる問題がある(どの選択肢も不正解に聞こえてしまう)」と言います。これは、Part 2特有の「捻った応答」によるものです。

この「捻った応答」というのがどんなものなのか、まずは日本語で考えてみましょう。次のやりとりで、応答として「あり得る」ものをA~Cから選んでみてください。

この部屋は少し寒すぎませんか?

 A. 窓を閉めましょうか?
 B. エアコンが壊れているんです。
 C. ここにひざ掛けがありますよ。

いかがでしょうか。実はこの3つの選択肢、すべて正解になります。設問文を「寒いかどうか」を尋ねる「質問」だと考えると、「寒いです」「寒くないです」という直接的で素直な応答がすぐに思い浮かびます。ですが、それ以外にもA~Cのような「提案」や「説明」も、日常的な会話としては違和感がなく、応答としてあり得るのです。

このように、すぐには思いつかないような応答のことを、TOEICテスト対策本の解説などでは「捻った応答」あるいは「間接的な応答」と呼んでいます。「捻った応答」とはつまり、相手の意図を察して受け答えをする応答のことなのです。先ほどの例で説明すると、質問者は「寒いかどうか」を尋ねているのではなく、「寒いので何とかならないでしょうか」と訴えているのだということを察して、その解決策を提案したり、逆に質問をして状況を確認したりしている選択肢が正解となり得る、というわけなのです。

Part 2では、「捻った応答」が正解になる問題が25問中8問前後出題されており、特に後半に多く出題される傾向があります。設問文と正解の選択肢が聞き取れていても、「はたしてこれが本当に正解なのだろうか……」と不安になってしまうほど捻った応答が正解になる場合もあります。このタイプの問題の例や対処法はいろいろありますので、本連載で別の機会に詳しく説明していきます。

3. イギリスとオーストラリアの発音が苦手

イギリスとオーストラリアの発音が聞き取れない、という方も多いようです。日本の多くの英語教材がアメリカ・カナダなど北米出身のナレーターを主に使っているため、イギリス・オーストラリアの発音に慣れていないのが原因でしょう。Part 2では、25問中20問前後は設問文か応答文のどちらかをイギリス・オーストラリアのナレーターが読んでいるので、苦戦する方も多いようです。

4. 設問文の内容を忘れてしまいやすい

設問文をちゃんと聞き取れていたはずなのに、選択肢を聞き取ろうと必死になっているうちに設問文の内容を忘れてしまった……ということはありませんか? 前述の「捻った応答」が正解になるような比較的難しい問題もあるので、選択肢を聞きながら「一体これは正解になり得るんだろうか」などと考えているうちに、前に聞いた内容を忘れてしまうことが多いようです。さらに、数は多くはありませんが、まれに選択肢の間で(例えば選択肢AとBで)会話が成立しているように感じられる問題があり、それに惑わされてしまうこともあるのです。

5. 集中力を保てない 

Part 1には写真、Part 3やPart 4には問題冊子に印刷されている設問文や選択肢という、視覚から得られる情報があり、これらと音声を組み合わせて問題に取り組みます。ですが、Part 2にはそういった視覚情報が全くなく、ひたすら耳に頼るしかありません。そのため、やや単調でダレてしまいやすい、ということがあるでしょう。聞き取れないところでモヤモヤして考え込んでいるとどんどん進んでしまい、結局次の問題も聞き取れなかった、という体験談もよく聞きます。そうなるとフラストレーションが溜まってしまい、ますます問題に集中できなくなってしまうという悪循環に陥ります。

今回は、「Part 2が難しいと感じる理由」を挙げてみましたが、ご自身に当てはまるものがあったでしょうか。これまで「なぜPart 2が苦手なのかがよくわからない」と思っていた方はぜひ、『TOEIC(R) L&Rテスト Part 2 リスニング解体新書』をお手に取っていただければと思います。本書には「弱点診断テスト」を用意しており、このテストを受験して答え合わせをするだけで、自分の弱点を細かく分析できるようになっています。今回ご紹介したPart 2の特徴を踏まえて、次回からは多くの方が苦手とする部分を克服するための対策と学習方法を提案していきますので、ご期待ください!

勝山庸子(カツヤマ・ヨウコ)
勝山庸子(カツヤマ・ヨウコ)

TTT 11期生。カリフォルニア大学大学院にて社会学を学び、帰国後は大学と英会話学校でTOEIC・TOEFL・英検などのテスト対策講座や英会話などの授業を担当。TOEIC® L&Rテストは18歳の時から現在まで断続的に受験を続けている。米国で苦労して英語を学んだ自身の経験に基づく丁寧な指導には定評がある。TOEIC® L&Rテスト 990点(満点)、英検1級(日経Weekly賞)。共著に『TOEIC(R) L&Rテスト Part 5 語彙問題だけ555』、執筆協力は『TOEIC® L&Rテスト 直前の技術』『TOEIC(R) L&Rテスト 200%活用模試』『TOEIC(R) L&Rテスト 究極の模試600問+』(以上アルク刊)など、アプリ教材も含め多数。趣味は英語学習も兼ねた洋楽・洋画鑑賞と英語のPodcast視聴。

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