TOEIC指導の専門家・ヒロ前田さんが、学習者の悩みに答える連載「TOEIC学習お悩み相談室」。今回は、「単語集を何冊も使っているのに、TOEICスコアが上がらない」という相談を取り上げます。語彙力をスコアにつなげるには、どのような学習が必要なのでしょうか。
目次
今回の相談
「語彙力を上げれば600点は楽勝だ」と先生に言われたので、単語集を何冊も使ってきましたが、なかなかスコアが上がりません。何が足りないのでしょう。
――会社員(20代)/TOEICスコア 525点
まず確認したいこと
足りないのは語彙力だけではありません
単語集を何冊も使ってきたのに、スコアが上がらない。そう感じているなら、まず見直したいのは「単語集の冊数」ではなく、学習の仕方です。
語彙力を上げればTOEICスコアが上がる、という考え方自体は間違っていません。実際、リスニングでもリーディングでも、語彙力は大きな支えになります。
ただし、「単語集を使うこと」と「語彙力が上がること」は同じではありません。
単語集を何冊も使ったということは、単語を覚えるために努力してきたということでもあります。一方で、何冊も使っているのに成果が出ていないなら、同じやり方を続けても結果が変わらない可能性があります。
大切なのは、単語集を増やすことではありません。今の学習方法で、本当に単語が使える知識として定着しているかを確認することです。
学習方法を見直す
先生が言ったのは、おそらく「語彙力を上げればスコアも上がる」ということです。必ずしも、「単語集を何冊も使えばスコアが上がる」という意味ではないでしょう。
単語集を使えば、語彙力が上がると思うかもしれません。もちろん、単語集を使ってしっかり語彙を増やせる人もいます。
しかし、単語集を何冊も使っているのに成果が出ていないなら、その方法が今のあなたに合っていない可能性があります。
「この単語集が悪かった」と考えて次の本に移るだけでは、同じことを繰り返してしまうかもしれません。
まずは、単語を覚える方法そのものを見直すことが必要です。
単語の使われ方まで見る
別の手段として考えたいのが、英文の中で単語に触れることです。
リーディングの文章でも、リスニングのスクリプトでも構いません。英文を読み、そこで出合った単語を調べることで、語彙力を伸ばせます。
この方法の良いところは、単語の使い方まで知ることができる点です。
例えば、reimburseという動詞があります。単語集では「払い戻す」と説明されていることが多いでしょう。ただ、それだけでは、実際にどのような形で使われるのかまでは分かりにくいかもしれません。
TOEICの会話文などでは、Could you tell me how to get reimbursed for travel expenses?(出張旅費の精算方法を教えてください)のような表現に出合うことがあります。ここから、人が主語の場合は受け身で使われることがあると分かります。また、会社が主語なら、the company will reimburse you for ... という形も見えてきます。
このように、英文の中で単語に触れると、意味だけでなく使い方も一緒に学べます。少し手間はかかりますが、その分、記憶に残りやすくなります。
単語だけを見るのではなく、英文の中でどう使われているかを見る。これが、語彙力をスコアにつなげるうえで大切です。
語彙力を伸ばす学習法
自分に合った方法を見つける
まず、先生が言ったことは間違っていません。語彙力を高めれば、TOEICで600点を取ることは十分に目指せます。
リスニングにもリーディングにも、語彙力アップは良い効果を与えます。ですから、語彙力を伸ばすことに真剣に取り組めば、大きな成果につながる可能性があります。
ただし、単語の覚え方には個人差があります。
多くの人が単語集を使っていますが、その取り組み方も人によって違います。音で覚える人もいれば、例文で覚える人もいます。書いて覚える人もいれば、何度も見て覚える人もいます。
そのため、「単語集で覚えられなかったから、自分には語彙力が付かない」と考える必要はありません。
何種類かの方法を試して、自分に合う方法を見つければよいのです。
ここでは、試しやすい方法を3つ紹介します。
提案1:音声を聞くことを日課にする
1つ目の方法は、音声を活用することです。
単語集にも、いろいろな種類があります。音声が付いている本を手に取り、まずは聞いてみます。何冊か試してみて、一番ストレスなく聞けるものに絞るとよいでしょう。
その音声をスマートフォンなどで、毎日聞くことを日課にします。
大切なのは、聞く時間と場所を決めることです。
日常の中には、毎日同じように過ごしている時間があるはずです。例えば、朝8時から8時20分の間は駅に向かって歩いている、昼休みは会社の近くで食事をしている、といった時間です。
その時間と場所を、単語音声を聞く時間に変えてみます。
5分でも10分でもよいので習慣化することが大切です。聞いた単語を頭の中で繰り返す、つまり、心の声を使ってリピートする練習をすると、さらに効果的です。
提案2:フレーズ単位で覚える
2つ目の方法は、単語だけでなくフレーズを利用することです。
単語は情報の単位として小さいため、一見覚えやすそうに思えるかもしれません。しかし、実際には、小さい情報が必ずしも記憶に残りやすいとは限りません。
例えば、人の名前を覚える場面を考えてみてください。この人が山田さん、こちらが佐藤さん、あちらが田中さん、と名前だけを覚えるのは簡単ではありません。
ところが、そこに少し情報が加わると覚えやすくなることがあります。
「山田さんは北海道生まれで、高校のときに沖縄へ引っ越した。寒さと暑さの差に驚いた」といった情報があると、名前だけよりも印象に残りやすいでしょう。
英語でも同じです。長い英文を丸ごと覚えるのが大変なら、フレーズで構いません。単語と単語の組み合わせとして覚えるのです。
例えば、reimburseを単体で覚えるより、reimburse travel expensesのようにセットで覚えます。そうすれば、「reimburseと言えばtravel expenses」のように、使われる場面と一緒に思い出しやすくなります。
「travel expensesをreimburseする」のように、日本語交じりで口ずさむのも一つの方法です。
提案3:単語をイメージと結び付ける
3つ目の方法は、画像検索を使うことです。
試しに、reimburseをウェブブラウザで検索し、画像検索の結果を見てみます。すると、お金を手渡すイメージの画像が見つかるかもしれません。
画像だけで正確な意味を理解するのは難しい場合もあります。ただ、「払い戻す」という文字だけを見るより、視覚的な印象が残りやすくなります。
画像検索をした後で「払い戻す」という意味を見ると、「なるほど」と感じやすくなるでしょう。名詞に限らず、動詞や形容詞も画像検索してみると、意外な発見があります。
ここまで3つの方法を紹介しましたが、絶対的な正解があるわけではありません。
大切なのは、自分が継続できそうだと感じる方法を優先することです。
単語集を何冊もこなすことだけが、語彙力を伸ばす方法ではありません。音声、フレーズ、英文、画像など、さまざまな角度から単語に触れていくことで、少しずつ記憶に残りやすくなります。
単語を「知っている」で終わらせず、「聞いて分かる」「読んで分かる」「文の中で使われ方が分かる」状態に近づけていきましょう。
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