皆さんは自分の英語の発音に満足していますか?例えばHarry Potterやcatという簡単な言葉でさえ、「ネイティブ」のような音が出せなかったり、「日本人っぽさ」が抜けなかったり・・・。発音は多くの英語学習者の悩みの一つです。口筋肉のストレッチで、ネイティブのような発音を目指しましょう!
基準母音cheeseの/iː/ 、schoolの/uː/をマスター
読者のみなさん、こんにちは。藤田佳信です。この連載では、一般アメリカ英語「ネイティブ発音」のお話をしながら、毎日できる発音ストレッチをご紹介したいと思います(※)。
第1回の記事でご紹介した、強い母音のプライム/ɑː/に続いて、/iː/ /uː/という強い母音2つに登場してもらいましょう。発音記号と口形を1対1で対応させて体験しますね。そのためには、口形と対応させる発音記号を必ず覚えておく必要があります。辞書を開いたら、ストレス(強勢)をかけるアクセント記号を含め、主な発音記号をチェックするクセを身に着けましょう!
プライム/ɑː/に続く2つ目の基準母音、/iː/は例えば、‘cheese’(チーズ)の中心の母音(下線部)、「イイイイ」で、口唇をめいっぱい左右に広げてゆく方向で作ります、がんばって。口輪筋や笑筋など、顔面の筋肉の限界まで。すると顔の表情が大きく変化して、笑ったように見えます。「はい、チーズ!」。単語をゆっくり発音すると、中心の母音がストレッチされます。
[ストレッチのエクササイズ用単語]
eat、peep、peat、heat、peach、jeep
(ご覧のように、中心の母音のつづり字は‘ee’、‘ea’が多いです。‘e’、‘eo’などもありますが。どの単語も、はじまりの子音(オンセット)は強く、終わりの子音コーダは弱く発音します)
3つめの基準の母音/uː/は、口唇をしっかり、めいっぱい丸めて突き出して作ります。ひょっとこのイメージで、「ウウウウ」としっかり声を出します。‘school’の中心の母音が、/uː/です。口形を、鏡で確認してくださいね。大変!です。日本語には、そんなに筋肉を酷使する発音はありませんから。粘り強く発音エクササイズをくり返し、口筋肉を鍛えましょう。口先だけで似た音を出すクセをなくすように。もっと口筋肉を緊張させて、口を丸めます。いえ、もっと、もっと。
[ストレッチのエクササイズ用単語]
choose、google、school、lose、move、shampoo
(つづり字は、‘oo’、‘o’が多いです)
これでストレッチの基準母音、互いに異なる基準動作が3つそろいました。/ɑː/ /iː/ /uː/の3つはポイント母音と呼ばれ、その3つのポイントを線で結ぶと三角形になります。母音三角形です。口筋肉を、3つの異なる方向へ向けて働かせるよう頑張ってください。筋肉力の限界まで。というのも/ɑː/ /iː/ /uː/の3つを基準にして、日本語よりもっと広い、ネイティブ発音の母音の範囲(音域)が決まりますから。言い換えれば、他のすべての母音の音色と、発音の筋肉活動が、3つの基準母音によって決まるということです。発音の筋肉力をアップし、呼気放出エネルギーも増強しましょう。
基準母音のエクササイズ
エクササイズStep 1
プライムの/ɑː/から、始めます。2つの異なる方向へ。
1)下アゴを下げてできた/ɑː/から、口唇を左右に広げる /iː/ へゆっくり、呼気(声)を出しながら口形を変えてゆきます。ゆっくり発音していれば、その運動の途中で/e/、「エ」の母音の口形と音に気付くようになります。
2)続いて、/ɑː/から/uː/へゆっくり、呼気(声)を出しながら口形を変えてゆきます。下アゴが十分下がった状態から、口を丸め突き出す方向へ。鏡を見ながら、顔の表情の大きな変化を確認してくださいね。口筋肉をストレッチしながら、呼気(声)をしっかり出すのも忘れないように!
1)と2)どちらの発音運動でも、舌のかたまりは低い位置から高い位置へ移動し、声道(共鳴管)の形を変えます。*口腔の形を変え、母音の音色を変えます]。
エクササイズStep 2
/iː/と/uː/の交替運動。/iː/から/uː/へ、/uː/から/iː/へ。
この2つの基準母音は発音するとどちらも、舌のかたまりは盛り上がり高い位置になります。/iː/は口腔の前方で盛り上がり、/uː/は後方(口の奥)で盛り上がり、声道の形が変わり、異なる音色を響かせます。
[ストレッチのエクササイズ用例文]
Eat your soup hot.
/iː/ /uː/ /ɑː/
ところで、母音三角形の母音、プライム/ɑː/に並んで、とても聞こえの良い母音があります。「アッシュ(Ash)」と呼ばれる発音エネルギーのとても強い母音です。プライム/ɑː/の場合と同じで、アッシュの発音に成功すれば、皆さんの発音はたちまちアメリカン!スピーキング・リスニングの上達には必須のターゲットです。ただ、この母音はノン・ネイティブの耳には、「ほんとにそんな発音なの?!」と違和感が強いです。
アッシュの発音記号はこんな形、/æ/。‘cat’や‘bag’の中心の母音です。記号の形をよく見ると、aとeの合わせ文字だと分かります。日本語のカタカナ・イメージだと、アとエが合体したような音かと思いますよね。でもアッシュ/æ/は「エア」と発音し、「エ」に近い音です。‘e’の要素が中心で、「エ」をストレッチ(引き伸ばし発音)して、緊張して口筋肉(口唇)も左右にストレッチして、「エエエエア」と息(声)をしっかり吐きますね。
終わりの「ア」はとても弱い音。どの筋肉もお休みで、声はため息のように出るだけ。「シュワー」と呼ばれ、発音記号はアルファベット文字の‘e’を逆さにした/ə/、短く弱くアかウか、イかエか?あいまいな音です。ネイティブ発音の、強弱リズムの<弱>部分です。
ストレッチのエクササイズ用の単語は、‘cat’で始めてみましょう。呼気(声)をしっかり吐き出すように頑張ってください。「ケエエエアツ(t)」のイメージで。終わりの(コーダの)とても弱い/t/は、無音(サイレント)ですが、発音動作をしなくてよいわけではありません。舌先を上の歯茎にしっかり押し当ててください。呼気の流れを妨害するために。
イギリスで/ɑː/と発音されるのが、アメリカではアッシュの/æ/で発音される単語が多いです。‘ask’を代表に、そんな単語が150ほどあると言います。/æ/の口の開きは、人差し指と中指を2本重ねて入るぐらい。「エ」の口ですから、プライム/ɑː/より、開き具合は薬指1本分狭いですね。どちらも舌のかたまりの表面は低く平らで、呼気の流れは妨害されず、たっぷり出ます。その分、いずれも聞こえの良い音になります。
/ɑː/で舌本体は奥へ後退しますが、一方の/æ/では舌のかたまりは、下の前歯に向けて前進。舌先が下の前歯の裏に当たります。まるで発音の勢いで、舌のかたまりが口から飛び出すのを止めるかのように。鏡で、口唇の左右への引っ張りを確認しましょう。と同時に、舌先が下前歯のウラに着いている感触に意識を向けてください。OK!です。それでネイティブ発音に向け、さらに大きな一歩前進です。
[ストレッチのエクササイズ用単語]→cat、bag、Japan、Titanic
発音クイズ
クイズQ: あの世界的有名人Harry Potterの発音は、「ハリー・ポッター」?
(Harryの中心の母音(下線部)がアッシュ/æ/で、Potterの中心の母音がプライム/ɑː/です)
発音ストレッチを毎日やることで、正しい口の動かし方を口筋肉が覚えて、ネイティブの発音に近づいていきます。ぜひ練習してみてください!
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