皆さんは自分の英語の発音に満足していますか?正しく発音しているはずなのに、「ネイティブ」のような音が出せなかったり、「日本人っぽさ」が抜けなかったり、発音は多くの英語学習者の悩みの一つです。口筋肉のストレッチで、「ネイティブ発音」に近づきましょう!
子音のrとlの違い:オンセットの場合
第3回は、まず英語の‘r’と‘l’の発音について、説明していきます。
第1回の記事でお話したように、英語の話し言葉の最小単位はシラブル(音節)です。そしてシラブルの基本型は、‘pop、cat、dog’などのように、中心の母音(下線部)が前後の子音(1つずつ)に挟まれたCVC型です。‘r’と‘l’のエクササイズは、単音ではなく、CVC型の息(音声)のかたまり、‘r’と‘l’で始まる単語ではじめましょう!始まりの発音エネルギーの強い子音(オンセット)で、発音の仕分けを体験してください。
[ストレッチのエクササイズ用の単語]
/r/ → rock、read、rude
/l/ → lost、lead、lose
(中心の母音は母音三角形、rとlどちらも、順に/ɑː/ /iː/ /uː/です。)
英語の‘r’と‘l’では、舌や口筋肉の使い方、呼気(吐く息)の出し方が全く違います。/r/と/l/の発音の一番大きな違いは、口筋肉の力の差です。/r/の発音にはかなり筋力が必要ですが、/l/にはそれほど筋力は必要ありません。
/r/の発音には、母音三角形の基準母音/uː/を作る、口の丸めと突き出しの筋肉運動が必要です。発音に時間と手間がかかり、エネルギーが要ります。そんな強い母音/uː/の口形で、カタカナ・イメージの「ル」と言ってみます。
先に「ウ」をつけて、と指導する先生もいます、‘ウrock’のように。でもその「ウ」は、口を丸める口筋肉の運動をしなければ(カタカナの「ウ」では)、ネイティブ発音になりません。口筋肉を鍛えて、しっかりストレッチ。単語の始まりの(オンセットの)rを見た瞬間に、反射的に口をしっかり丸めるよう、頑張ってください。
一方、/l/の音は、舌先の運動で作ります。舌先を上の歯茎に押し当てて呼気をしっかり出します。発音のポイントは、呼気が舌の両側から出ることです。日本語のラ行の音では、両側ではなく、呼気が舌の前面から出てしまいます。試しに舌先を上下の歯で挟んで呼気を出してみてください。舌の両側から呼気が出る実感が得られます。そうして出した音が /l/の音です。
ネイティブは密着した音声をどうやって聞き分ける?
先に、一息で話すことば(シラブルの連続)は、すべて密着している、というお話をしました。密着しているのなら当然、単語の始まりも終わりも聞き分けられませんよね。そこで、日常会話にも、英文の音読にも欠かせない、2つのとても弱い子音、リスニング・スピーキング上達の技術をご紹介しましょう。
初めに(第1回の記事)エクササイズに使ったサンプル文を思い出してください。‘She lost her job.’を。全ての音声が密着するイメージなら、‘shelostherjob’の感じ。
ではネイティブ・スピーカーは、どのように密着した音声から内容を聞き分けているのか?聞き手は、前にお話したストレス(強勢)を手掛かりに、意味を伝える内容語(メッセージのある単語)を聞き分けます。話者は、内容語の中心の母音にストレスをかけ、つまり口筋肉をしっかり働かせ、呼気を勢いよくたっぷり出します。聞き手の注意をひくように。
例文の下線部では、発音エネルギーの強い母音プライム/ɑː/にストレスをかけましたね。始まりの強いオンセットの子音と協力して、音声を響かせます。(英語の)強弱リズムの<強>の部分です。すると、他の音声は全て弱くなり、弱くなった音が前の強い部分に密着するようになります。そんなふうにして、英語独特の強弱のリズムが生まれます。<弱>の部分で音声を弱くする工夫・技術が、「消えるh」と「フラップのt」なのです。ターゲットの子音です。
「消えるh」と「フラップのt」の作り方
hの場合
すべての英単語は、内容語と機能語に分けられます。内容語は意味(メッセージ)のある単語で、内容語が聞き取れれば、話し手の言いたいことが分かります。例文では、‘lost’と‘job’ですね。「失くした・・・仕事」という意味。この2つの単語だけでは、カタコト英語です。例文は、文法的な役割をする機能語(she、her)も使って、文の形に組み立ててあります。内容語はよく聞こえるように、ストレスをかけて際立たせます。すると他の音声は自然に弱くなりますよ。強弱リズムの<弱>部分、機能語は弱く。
ネイティブ・スピーカーは強弱のリズムを作るために、機能語をさらに弱く発音しようとします。機能語‘her’で省エネ発音をします。「ハァ」と息を吐く、はじめの‘h’を発音せず、省略してしまう(lost er)のですね。すると、後の弱い‘er’が前の強い‘lost’に吸着し、‘loster’(「ラアアスター」)のような、まるで別の単語に聞こえる音のかたまりになります。これが子音の「消えるh」です。日常の会話でも、英文の音読でも、ネイティブ・スピーカーはふつうに、消える‘h’の技術を使います。‘h’の音を消すのは、日常的にひんぱんに使う機能語、‘he、his、him、her、have、has、had’などの、はじめの‘h’です。
皆さんもCDやユーチューブなどで、ネイティブ・スピーカーの音声を聞いてみてください。確かに‘h’が聞こえず、単語がくっついて聞こえますから。これが、単語を1つ1つ発音するのではなく、一息で話す音声を密着させる方法です。そのためには、内容語の中心の母音、辞書のアクセント記号が付いた母音に、しっかりストレスをかけるクセをつけましょう。
tの場合
続いて、もう1つのターゲットの子音、「フラップのt」をご紹介しましょう。‘lost her’が消えるhの技術で‘loster’のようになると、‘lost’の終わりの弱い(コーダの)/t/、サイレントの/t/が、母音と母音の間に挟まれて、弱いフラップの/t/になります。日本人の耳には、弱いラ行の/l/に聞こえるようになります。「ラアアスラー」みたいに。上の歯茎に舌先を押し付ける、強い始まりの(オンセットの)/t/でも弱い終わりの(コーダの)/t/でもない、フラップの/t/。消える‘h’と同じく、頻繁に使われる技術です。
発音は、上の歯茎に軽く触れるだけ。日本語のラ行音のように。例えば、‘letter’はカタカナ英語では「レター」ですが、ネイティブ・スピーカーの発音では、日本人の耳に「レラー」と聞こえませんか? ‘letter’は、ネイティブ発音では ‘let her’ と同じ音声なのですね、/h/が省略されて。
フラップのtも、ネイティブ発音で頻繁に使われます。「黙って(Shut up)!」のネイティブ発音は実際、「シャラップ!」のように聞こえませんか? ‘Put it on’なら、「プリロン」のイメージです。消える‘h’とフラップの‘t’、皆さんもぜひ使ってくださいね。
まとめ
例文の初めの機能語‘she’も、省エネで発音し、消える方向で弱くなります。実際、カジュアルな会話では、ふつうに消える(省略する)こともあります。例文の音声をビジュアル化すると、こんなふうになります。呼気は、ひと息で吐きますね。ずっと口筋肉を動かしながら。
Sheloooosterjoooob
これまで3回に渡ってネイティブ発音に近づくための、発音ストレッチを紹介してきました。毎日練習すれば、正しい口の動かし方を口筋肉が覚えて、ネイティブの発音に近づいていきます。引き続き、皆さんもぜひ練習してみてください!
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