子どもに英語をマスターさせたい方必見!料理研究家であるかたわら、英語教材「カラオケEnglisn」の開発にも力を入れる行正り香さんの連載3回目。今回は、子どもから大人まで、英語初心者が英語学習でやってはいけないことと、子どもの年齢別におすすめの勉強法を教えていただきます。
英語は一発で覚えられない!
子どもも大人も英語を一発で覚えられる人はなかなかいません。自分の子どもや英語教室の生徒さんたちを見ていると、人間は一生懸命覚えても、すべて忘れてしまうものなのだということが分かります。だから、特に英語初心者が英語学習で一番やってはいけないことは、 新しいことをどんどんやってしまうこと 。
例えば、私が子どもに英語を教え始めたころ、三単現の s を一生懸命教えようとしたことがあります。私が “I see a tree.” と言って、“He” が付いたら動詞に「s」や「es」が付くよ。“He sees a tree” だよ。“I watch TV.” だったら、主語が「He」になったら、“He watches TV” になるよ。と、一生懸命教えるのですが、“I watch TV.” の主語が「He」になったら?と聞くと、次に“He watches TV.” と答えることができて、次に「主語が I のときは?」と聞くと “I watches TV.” と答えてしまうんです。
さっき教えたばかりのことをもう一度やっているだけなのに、答えられないのです。主語が「I」のときは、今度は「s」を取るんだよと説明します。そうすると、次に「主語が He のときは?」と聞くと “He watch TV.” と答えてしまう。
その繰り返しをずっとやっていました。
新しいことを覚えたら、きれいさっぱり過去のことを忘れるのが普通の人です。でも、同じことを繰り返していると、ある時 “I watch TV.”、“He watches TV.” と、突然そのルールが体で理解できるようになるのです。
私の開発したカラオケEnglisn も、1つのユニットが終わったら2つ目、3つ目というふうにどんどん進むのではなくて、1つのことを学んだら、次は少しだけ入れ変えてやってみて、また戻って、またちょっとだけ変えて、また戻ってという仕組みにしています。
英語初心者は何回も覚えにくいところは復習する勉強が非常に大切で、知識を記憶に定着させるためには繰り返し学習するのが有効な手段 だと思います。
私は今は上手に野菜の千切りができますが、昔もできたかというと、できませんでした。そのときは角度によって違うんだと思い、いろんな角度で、体を動かして千切りしてみて、どの角度が一番いいかっていうのを一生懸命見つけたりしました。
もう、できるようになると、できなかった頃のことを忘れてしまうのですが、初心者は繰り返しトレーニングをして基礎をがっちり固めるが最重要です。
伸びる人は同じことを何度もやる人
私は英語を教えるときは、同じことを繰り返しやるように工夫をしています。
実は、同じことを繰り返し勉強することって、自分ではなかなかできないですよね。 人間はやっぱり前に前に進みたい動物 なんです。どんどん新しいことをしたい。そのほうが楽しいです。
でも私がたくさんの生徒さんを見ていて、伸びるなという人は、 同じことを何度もやる人 です。繰り返しやってみて、自分ができているか、できていないかっていうのをきちんと判断して、できなかったところをもう一度やる力を持つ人が一番伸びます。
英語の学習は1をやったら2、2をやったら3と、どんどん進まなければならないように思うかもしれませんが、途中でテストする場所が必ずあります。そのテストでつまずくということは、理解できていないということなのです。つまずいたら、そこを潔く認めてまた戻ってやりましょう。
ピアノなど楽器の練習も同じだと思います。小指が動かない、だからこの曲が弾けない、だったらハノンの小指を練習できるところにもう1回戻る。これがすべてを完璧にこなせるようになるための一つのコツなのです。
そこでつまずいたままスキップしてしまうと、また同じところで間違いを繰り返してしまい、毎回失敗してしまうので自信を持てず、最後には嫌いになってしまうこともあります。
人間は一発ではできない。特に中学3年生のレベルの英語、関係代名詞などはエベレスト山か富士山のような高い山だと思ったほうがいいです。急にはみんな登れません。
少しずつレベルを下げて繰り返し練習
英語の世界で言うと、関係代名詞を使って話せると大人っぽい印象になります。1つの文で2つの要素を言えるようになる。“I want to see a movie.”、“ The movie won the academy award.”と2つに分けて言っていたものをくっつけて、“I want to see the movie which won the academy award.”って言えると大人っぽい会話になります。
でも、そこはエベレストのような高い山なんです。いきなり登頂するのはすごく難しいから、ただその山に挑戦するだけではなく、その山よりも低い山で何度も予行練習をする必要があります。
だから、私は教えているとき、「あ、全然できていないな」って思ったら、「もう1回、5つ戻ってみて」「関係代名詞、1番からもう1回やってみようか」と言います。繰り返し練習することによって、やっと身に付くのです。
英語の文法はお経トレーニング
英語を繰り返し練習することは、「お経を唱える」のに近いです。関係代名詞のルールを学ぼうとか、英語の難しいところにぶち当たった時にルールを学ぼうとするのではありません。「般若波羅蜜多~」っていうふうなものを、訳が分からないけれど、何度かお葬式に行って、お経が流れているのを聞いて、つぶやいてみたら、なんとなく覚えてしまう感覚です。
お経をずっと聞いていれば意味がわからなくても覚えるのと同じで、あまり理屈を考えずに、時間をかけて声に出して音読するのがいいと思います。
「覚える」と思うときつい。とにかく声に出して「唱える」というのが英語ではとっても大事だと思います。なぜなら、私たち日本人は日本語を勉強するとき、覚えようと思って学んだことはないですよね。なんとなく、お母さんが言うことを聞いて、繰り返し声に出して真似ているうちにできるようになってきたのです。
だから、 覚えなくていいから唱えればいい のです。「私、英語は覚えられない」「文をすぐ忘れるんですよね」とおっしゃる方がいますが、私はそれでもいいからずっと唱え続ければ、なんとなく流れる時が来ますとアドバイスをしています。根気よく頑張って付き合っていくのがいいと思います。
でも、自分で根気よく付き合うのはいいけど、子どもにやらせる場合はどうすればよいのか?次に、年齢別に、根気よく続けられる、おすすめの勉強法をお伝えしますね。
子どもの年齢別おすすめ勉強法
就学前(2歳児~6歳児)は、お気に入りを繰り返し
就学前の子どもの時期って、何か同じものが好きなんですね。同じ絵本が好きで、同じものがものすごく好き。
私も同じ本を何十回も読まされました。でも、今考えるとその時期の子どもは、絵本のストーリーじゃなくて、そこのイントネーションとか、「そこで○○と言いました」の後の間合いとか、おそらくそういうのを学んでいたと思うんです。
私としては次のストーリーに進もうよと、いつも思っていました。日本の昔話も何百もあります。でも、いつも同じストーリーを読んでいる。映画も同じものを何十回も見る。それで同じところで手をたたいて喜んでいるから、何かがそこでリズム的に面白いのでしょう。
この時期の子どもって、新しいことを学びたいんじゃなくて、英語だったら音の仕組みとか、文と文の間に置かれているものとか、イントネーションとか、そういうものを学んでいるのではないかと思います。
だから、親が張り切って新しいものをどんどん与えるのではなく、もし子どもが気に入ったものがあって、何回もやりたいのであれば、何回でもいいから、同じものでもいいから繰り返しやるのがいいと思います。
ある時、子どもは突然飽きて、はやりの終わりがきます。そのはやりが終わったら、次のはやりが来ます。だから、この就学前の子ども時期の勉強は、親が無理やり進めず、 子どもが気に入ったものを何回もやる のがいいと思います。
小学1年生~3年生は論理的に学ぶ
1年生からは、だんだんひらがなが読めるようになって、文字が認識できるようになる。そうなると、 論理を教えてあげた方が記憶に残りやすい です。
カラオケEnglishでも、小学校低学年からは、「入門編で説明があったら、ちゃんと説明を聞いてごらん」と促しています。説明を聞いて論理、“I am” と言ったら “am” は「です」だけど、「He is」と言っても “is” も「です」という意味だと言うと、それを聞いて「へぇ」って思う力を持つのが1年生くらいからです。
小学4年生~6年生は中学レベルに挑戦
自分の子どもが4年生になったときにびっくりしたのが、いきなりいろんな論理と論理を組み合わせて、そして「あ、ここのルールはこうだから、だからこれもこうなんだ」と急に論理的になったこと。
小学4年生からは、 中1レベルの英語をやっても全然できる と思います。4年生でそれができ始めます。文法の構造みたいなものが分かり始めます。
4年生~6年生にかけて、中1、中2レベルまでを徹底してやって、中1に入ったら中3レベルをやるっていうふうにやっていくと、ものすごくアドバンスになります。
海外を例にあげると、中国や韓国は、小3で中1レベルの英語を始めます。中国は小1から中1レベルをやる人もいるし、ブータンは小学校に入ったら算数と化学は全部英語で教えます。
できれば高学年、5年生、6年生で少なくとも中1、中2レベルの、be動詞がコロコロ変化するところと、一般動詞の「I play」「She plays」というように主語や動詞の入れ替えが、できるようになっておくと、中1、中2の学校の授業についていきやすくなります。
英語が日本語と大きく違う点は、動詞が人によってコロコロと変わるところ。あと時制によって変化するのが特徴です。中学文法の基礎で、時制や人称によって動詞が変わることを学びます。
実は、ここはものすごく慣れないところだから、それこそ何も考えずに言えるようになるまで何回も唱えないと本当はしっかり身に付きません。学校の授業はすぐ次に進んでしまいます。身に付くところまで行かないうちに、もう次に行ってしまうので、早めに始めて、時間をかけてちゃんと身に付けていったほうが、本当に英語が使えるようになると思います。
中学1~3年生は先取り学習
中学1、2、3年生のカリキュラムは、実は素晴らしいです。よくできていて、これを作った昔の人は、世界の英語の文法学習方法を学び、それらを日本人に合うようにした、情報整理能力がものすごい人たちなんだな、と驚きました。ただ、中1で学ぶことはものすごく多いです。
アルファベットを学んでから、be動詞、一般動詞、過去形に至るまで、もうローラーコースター。振り落とされない人がおかしいぐらいに、超ローラーコースターです。
何もやらずに中1に突入するお母さんは、その超ローラーコースターに、いきなり子どもを乗せるようなもの。この時期のお子さんをお持ちの方が、「うちの子どもが落ちこぼれました」とおっしゃる方が多いですが、当然だと思います。何もやらなくて落ちこぼれる人もいるかもしれませんが、がんばってついていくのは大変なカリキュラムです。
学校の先生たちは、その説明をするのに精いっぱいで、いわばプールで泳ぐのに「先生、教えるよ」と「クロールは前にこうやって、背泳はこうだから」って、「はい、じゃあ明日はバタフライよ」と教える感覚かもしれません。
たぶん生徒は「泳ぐ」機会もないかもしれません。先生がプールの中に入って、「これがクロール、これが平泳ぎ、次がバタフライね」と言って、生徒たちは周りで「へぇ」と見ていて、「じゃあ試験は来週」と言われている感じだと思います。
それほど中学校の英語では学ぶことが多いのです。なので、中学生は学校の内容より少し先の勉強をしておくと学校の授業についていきやすくなります。学校の授業が復習になります。
私が、カラオケEnglishで動詞の変化を全部音声で聞いて、声に出して学べるようにしたのは、動詞の変化を何度も耳で聞いて、音の変化を聞き分けられるようにしたかったから。何回も何回も同じ動詞が出てくるようにしなければ、聞き分けられる(泳げる)ようにはなりません。
英語はマナー。遅くとも小5からは文法を始めよう
私は、小5の子どもがいる人には文法をきちんと始めさせてほしいなと思います。世の中にはやめていいもの、だからといって親がやらせることを諦めていいものと、良くないものがあると思うのです。
たとえば掃除とか、帰ってきたら靴を並べるとか、悪い事をしたら謝るとか、ご飯の前に「いただきます」を言うのは、何があっても親が子どもにやらせ続けなきゃいけないことです。それは大人の人間になるために必須です。英語も同じ。だから私は子どもが「できない」と言っても、「できなくてもいいから、とにかく声を出して」という感じでやっています。
でも、できないという壁は必ず来ます。でも、なぜできないかというと、自分ができることとできないことが分かってきたからなんです。
逆にできるようになると、成功体験を積み重ねることができるのです。だから、壁にぶち当たったときに、お母さんたちはうまく誘導してあげて、続けさせてあげるようにするしかないと思います。
いかがでしたでしょうか。子どもの英語の学びについて、私が伝えたいことはまだまだあります。次回もお楽しみに!
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
- スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
- 制限時間は6秒!瞬間発話力が鍛えられる!
- 英会話教室の【20倍】の発話量で学べる!
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。
英語学習を1000時間も続けるのは大変!でも工夫をすれば無理だと思っていたことも楽しみに変わります。そのための秘訣を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんに教えていただきます。