大竹保幹先生&黒田龍之助先生が考える、英語との上手な付き合い方

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』著者の大竹保幹先生(左)と黒田龍之助先生

2020年、小学校で英語が教科化されます。子どもから「英語、教えて!」と言われるケースが増えそうですが、文法をわかりやすく教えるのは簡単ではありません。そんな悩みを解決すべく、『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』が12月に刊行! 著者の大竹保幹さん、そして神田外語大学特任教授の黒田龍之助さんに、子どもから大人まで、英語とどのように付き合っていけばいいのか、お話をうかがいました。

大竹保幹(おおたけ やすまさ)1984 年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。神奈川県立厚木高等学校教諭。平成23 年度神奈川県優秀授業実践教員(第2 部門)表彰。文部科学省 委託 事業英語教育 推進 リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。12 月に著書『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)発刊予定。

黒田龍之助(くろだ りゅうのすけ)
1964 年、東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。東京大学大学院修了。現在、神田外語大学特任教授。著書に『寝るまえ5分の外国語』『ことばはフラフラ変わる』(白水社)、『外国語の水曜日』(現代書館)、『ぼくたち の英語』『ぼくたちの外国語学部』(三修社)、『はじめての言語学』(講談社現代新書)など、多数。

「読み書き」を大切に

高校生くらいまでは、「話すこと」よりも「読むこと」に力を入れた方がいい、と黒田先生

――普段、英語を教えるなかで、意識していることを教えてください。

大竹 できれば高校を卒業するまでくらいには、しっかりと文法の参考書や辞書の使い方を知っておいてほしいと思っています。例えば英作文を書くとき和英辞典をひいたら、その単語を英和辞典でひきなおすこと、その英和辞典も、複数の辞典をひいてみると、違う和訳が書かれているので理解が深まることなどは知っておいてほしい。

黒田 英語は「読むことより話せるようになることの方が重要」と言う人が多いように思いますが、高校生くらいまでは、「話すこと」よりも「読むこと」に力を入れた方がいいでしょう。

大竹 話すのには慣れが必要なので、学校の授業の中である程度は、話す時間を作った方がいいとは思います。しかし、 そもそも 話せるようになるためには、英語の表現を知っておく必要があります。短文を暗唱したりして表現を覚え、collocation(語と語のつながり)を覚えて、スムーズに口から出せるようになっておかないと、話せるようにもなりません。

英語はcollocation(語と語のつながり)

―collocationという言葉がでてきましたが、それはどんなものか、どう覚えていけばいいものか、何か学習のヒントなどはありますか?

大竹 英語を含めて言語には必ずcollocationという、単語同士の組み合わせの“相性”があります。それを知ることでより自然な英文を作ることができるようになります。「この単語とこの単語は相性がいい」「この組み合わせは使わない」といったことも、辞書が教えてくれます。

私たちは非ネイティブなので、自然な表現を目指すためには、「英語で自然な表現とはどんなものか」を、まず読んだり書いたりする中から学んだ方がいい。

黒田 英語は collocation がとくに重要ですからね。ネイティブの詩人が作ったらすばらしい collocation になるけれど、われわれが使ったらただの間違いになってしまうことが多い。

大竹 私たちにシェークスピアのまねはできないんですよ。

黒田 だから英作文は、まず似たような例文を探し、ものまねをしながら学んでいくしかありません。

大竹 そういう積み重ねが大切です。

文法だけでは説明できないのが本当の「言葉」

すべてを文法で説明できないようなものが、本来の「言葉」の姿だ、と大竹先生

――文法は、覚えなくてはならないことが多いですし、言語を縛る、かっちりとした「ルール」のようにとらえられてしまうことがあります。

大竹 言葉が持つ世界というのは本当に広い。英語も決して1つではなく、世界中にはたくさんの英語があります。アメリカ人の話す英語も1つではないし、イギリス人が話す英語も1つではありません。アルクの月刊誌『ENGLISH JOURNAL』でも、世界中のさまざまな人が話すさまざまな英語を取り上げていますよね。

そして、すべてを文法で説明できないようなものが、本来の「言葉」の姿だと思います。生徒に、「英語なら必ずSVOCを当てはめることができる」と思い込ませるような英語の指導はするべきではないでしょう。文法は時代によって揺れて変化していくし、人によっても考え方が違います。そういう面を知っていてほしいです。

まとめ

小学校での教科化だけでなく、大学入試への外部試験の導入や、「4技能」という言葉が重要視されるなど、変革期にある英語教育。その中でも、英語そのものとの付き合い方は、実は大きく変わらないのかもしれません。

『ENGLISH JOURNAL』2019年1月号では、大竹先生、黒田先生による「英語との付き合い方」に関する対談をさらに詳しく掲載しています。外国語を学ぶ側でもあり、教える側でもあるお2人の視点から語学を見てみることで、英語学習に役立つ新たなヒントを見つけてください。

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また、12月18日には大竹先生による、英文法書、『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』が発刊になります。「とっつきにくい」「難しい」「覚えられない」……と嫌われがちな英文法を簡単な言葉で説明しています。子どもが抱きそうな疑問・質問にある程度答えられるように、「代名詞」「冠詞」「時制」など30の項目に分けて英文法の基礎を学ぶことが可能です。英語を学ぶ面白さに触れられる雑学的な小話も随所にあり、楽しみながら英文法を復習できます。
子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ
  • 作者: 大竹保幹
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 編集:江頭茉里、対談の取材・文:大井明子

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