気が抜けない空の旅【オレゴン12カ月】

オレゴン12カ月

渡米して20年以上がたち、現在はオレゴン州ポートランドで暮らす大石洋子さん。家族や身の回りで起こった出来事や季節のイベント、日米文化の違いなどにまつわるお話を現地からお届けします。

娘のフェンシングの遠征試合の付き添いのため、飛行機に乗ることが多い。国土が広いアメリカでは、国内線は日本でいうところのバスみたいなものかなと思う。

最近は、なんでも自分でやらなければならない。空港に着いて、まずはチェックイン。以前なら、カウンターで係員が相手をしてくれたが、今は機械がずらっと並んでいて、それを使ってチェックインする。クレジットカードを差し込むだけで旅程が画面に出てくるから便利だけれど、何か問題が発生して手続きがスムーズにいかなくなったときが面倒くさい。係の人がいなかったり、ほかの客の相手をしていたりすると、結構待たされる。時間に余裕があるときはいいが、そうでないときはイライラ・・・。

チェックインの手続きが済むと、レシートと共に、預け荷物(checked baggage)のためのステッカーが機械からペラーリと吐き出される。スーツケースの持ち手に通して両端をくっつける、行き先が書かれた細長い紙だ。それを荷物に付けるのは、昔は係員の仕事だったのに・・・。いつの頃からか、こんなことまで客がやらされるようになった。

ついでに言うと、いつからか、国内線の預け荷物に料金を取られるようになった。1 個につき20ドル程度。大きなスーツケースは預けるしかないが、お金を取られるならと、機内の荷物入れに入るサイズの荷物はみんなが機内に持ち込むようになった。その結果、満員の便では荷物入れのスペースが足りなくなることが予想され、チェックイン後にゲートで「無料にしますから荷物を預けてください」というアナウンスが繰り返される。効率が悪いし、フェアではないと思うのだが・・・。

ちなみに、娘のフェンシングのバッグは大きいから預けるしかない。オーバーサイズなので何も言わないと100 ドル以上料金がかかるが、スポーツ用品だと言うと、通常の預け荷物と同じ値段になる。スキーやゴルフ、ハンティング用の銃なども同様だと聞いた。コーチからは、「weapon(武器)」とか「blade(剣)」が入っている、などと言うと係員が慌てて大騒ぎになるから、くれぐれも「スポーツの道具だ」と言うように、と注意されている。

オレゴン12カ月

イラスト:尾崎仁美

チェックインを済ませたら、セキュリティーチェック。チケットとIDが確認された後に、手荷物やジャケットなどはX線で検査される。ベルトや靴も脱がなければならない。時には脇に呼ばれて係の人に身体検査をされることもある。怪しい人物だと思われたかと心配になるが、ランダムに行われるようだ。

たいていの空港では、セキュリティーチェックを受けるには長い列に並ばなければならないが、「TSA Precheck(TSA事前検査)」とチケットに書かれている人は、専用の列に並ぶことができる上に、ベルトなどを外さなくてもいい。このPrecheck というステータスは、買うこともできる。5年間有効で85ドル。わが家はなぜかいつも娘だけがPrecheck になっている。聞いた話では、家族のうち1人、2人だけをPrecheck にして、いかに便利で早いかを知らしめ、家族全員にPrecheckを買わせよう、という魂胆なのだそうである。前述の預け荷物といい、「またお金か!」と思う。

機内では、客室乗務員が元気に客を迎える。日本の航空会社とは違って、客室乗務員は若い女性とは限らない・・・というか、そういう人を見つけるほうが難しい。ガタイのいいおばちゃんが多い。男性もよく見掛ける。

以前は軽食がついたこともあったが、今はサンドイッチやスナックなどを食べたい人だけが買うシステムだ。飲み物とちょっとしたクッキーなどは今でも配ってくれるけれども。

私の隣に座る人はどういうわけか大きな男の人が多く、肘掛けは当たり前のように占領される。肘掛けからはみ出すほどに大きい人がいたこともあって、その人は数時間のフライトの間じゅうずっと、両腕を体の前にしてなるべく小さくなっていたので気の毒だった。

先日は、もっと大きな人が通路を挟んだ向こう側の席にいた。飛び立つ前に、乗務員を呼んで何やら頼んだと思ったら、しばらくして出てきたのは、延長座席ベルト。通常のベルトでは用が足りない人のために、長さを足す延長ベルトがあるのだった。各機に1つ、2つ備えられていると見た。お国柄であろうか。

娘のフェンシングの場合、帰りの便は、試合の結果によって変わってくる。遅い便を予約していても、負けると早く帰れることになってしまうのだ。以前は、航空会社に事情を話して席に空きがあれば、手数料ナシで早い便に変えてくれたものだが、最近は、1人につき200ドルぐらいの手数料を取るようになった。早く帰れればうれしいけれど、数時間の違いに2人で400ドルは納得がいかないので、空港で時間をつぶすことが多い。

最近の空の旅は、すべてがお金の世界という印象である。常に財布を狙われているようで、片時も気が抜けない。昔はもっとゆったりしていたような気がするのだが。

アメリカのオレゴン州ってどんなところ?

アメリカ北西部に位置する、全米屈指の美しい景観を誇るオレゴン州。IT、バイオテクノロジー、環境関連産業の成長目覚ましく、ナイキなどのスポーツ・アウトドア企業も多い。州都はセイラム、最大の都市は人口約60万のポートランド。

文:大石洋子
エッセイスト。1993年、夫の海外赴任でアメリカ・ニュージャージー州へ。2003年には異動のためオレゴン州に転居。現在は、日に日に生意気になる16歳の娘に手を焼く傍ら、月に2回、Boiled Eggs Onlineにオレゴンでの生活をつづっている。

本記事は『ENGLISH JOURNAL』2019年1月号に掲載された記事を再編集したものです。