ファッションから政治経済まで、変わりゆくアメリカの原動力となっている「Z世代」を多角的に考察し、現代のアメリカ文化をキャッチアップしていきましょう。NY在住のジャーナリストでミレニアル・Z世代評論家のシェリーめぐみさんに「新しいアメリカ」についてご解説いただきます。
目次
Z世代を知るにはまず過去の世代を知ろう!
これまでと違う特別な価値観を持った世代として言及されることも多いZ世代ですが、アメリカでZ世代が出てきたのには、実は理由があります。それは大量生産・大量消費で経済的・文化的に世界のトップに君臨していたアメリカが、時代と共に大きく変貌してきた結果なのです。
その変化を世代の流れに沿って見てみましょう。最初に注目したいのはベビーブーマー世代です。彼らこそが「アメリカらしいアメリカ」を作った世代だからです。
この世代は第二次世界大戦終戦後1946?64年に生まれ、7100万人の巨大な集団です。ベビーブーマー世代が青春を過ごした1960?70年代のアメリカは、ベトナム反戦や公民権運動の激動を経て、大量消費による強い経済に支えられ、輝かしい未来が広がるイケイケな時代でした。アメリカンドリームという言葉もこの世代から生まれました。世界一のアメリカを作り上げたのはまさにこの世代でした。
アメリカの陰りを象徴するX世代
1980年代後半になるとX世代が現れます。1965?79年生まれで、「未知なる世代」という意味でX世代と名付けられました。同じ頃日本に登場した「新人類」と似たニュアンスがあります。
この世代はベビーブーマー世代のような強い存在感がありません。人口が6500万人と少ないこと、当時のアメリカが経済的な勢いを失いつつあったのも、地味なイメージに繋がっています。一方日本はバブル期に入り、ニューヨークの一等地を買収するなどして脅威を与えたのもこの頃です。
家族の形も変わり始めます。例えばシングルマザーが激増したのはこの世代です。
X世代は子育ての真っ最中にリーマンショック(2008年)に襲われました。ほぼ同時に親の介護の時期に入り、子供と親の世話に挟まれたサンドイッチ世代とも呼ばれています。いくつもの苦労を背負い、アメリカの陰りを象徴するような存在がX世代なのです。
新たなアメリカの主役ミレニアル世代
21世紀に入るとまったく新たな世代が台頭してきました。それがミレニアル世代です。彼らはベビーブーマー世代を親に持ち、1980年から95年に生まれた世代です。
ミレニアル世代の出現はアメリカにとって衝撃でした。彼らはベビーブーマーを凌ぐ大集団(7200万人)で、物心ついた頃から身近にコンピューターがあった、つまりアメリカで最初のデジタル・ネイティブだったからです。
日本のゆとり世代、さとり世代と一部時期が重なりますが、少子化している日本と、移民の流入で人口が増え続けるアメリカでは勢いが違いました。
ミレニアル世代はソーシャルメディアを駆使し、シェア・エコノミー、ギグ・エコノミー(フリーランス・エコノミー)という全く新しい経済を生み出しました。GAFAが世界を席巻し世界を激変させたのもこの時代です。
アメリカ負の遺産を背負うZ世代
次のZ世代は、X世代の子供たちです。
彼らは今10歳から25歳くらい。苦労する親の背中を見て育ちました。Z世代にとってアメリカは、かつてベビーブーマー世代が見ていたような、未来への希望溢れる夢の国ではありません。
格差が広がる中さらなる経済的な重圧がこの世代にのしかかっています。パンデミックが襲い状況はいっそう悪化しました。社会も全く変わってしまいました。学校での銃撃が頻繁に起こり、侵入者に対する避難訓練が彼らの日常です。分断が進みあらゆる場面に影響が及んでいます。その間にも気候変動が刻一刻と進行し、異常気象による大災害が立て続けに起きています。
「こうした負の遺産を作り出したのは上の世代なのに、責任を取ろうとせず権力と富にしがみついている」と、Z世代はとても厳しい目で見ています。富を平等に分配しない政治や大企業、資本主義そのものに対しても批判的です。
生まれるべくして生まれたZ世代の価値観
これらの背景を踏まえると、アメリカZ世代と前の世代の価値観との違いがはっきり見えてきます。
まず彼らはとても政治的です。政治や大企業などへの批判をソーシャルメディアに投稿するだけでなく、デモなどの抗議行動にも積極的に参加しています。頼りにならない上の世代を見て育ち、自分達が行動することで社会を変えなければという使命感がとても強いのです。
次にダイバーシティがとても重要と考えています。前回お伝えしたようにアメリカZ世代の白人率は51%。残り約半分は白人以外の人種で、これまでで最も多様な世代です。
彼らは、アメリカは多様だからこそ良い国であり、国にダイバーシティをもたらす移民こそが財産であると信じています。それゆえ人種差別に強い憤りを感じ、人権問題など社会正義に関わる問題にとても敏感です。
ジェンダー意識についても前の世代と大きな違いがあります。アメリカZ世代の2割が自分をLGBTQと自覚しているという数字 があり、すぐ前のミレニアル世代の2倍です。Z世代にとってジェンダーというのは、はっきりした境界線のないグラデーションのようなものです。その上のどこにいるかで自分のアイデンティティが決まると、彼らは考えています。彼らの態度からは、自分らしくいたいという思いと、自分が何ものか決めつけてほしくないという権力への反抗も感じ取れます。
このように過去から辿っていくと、Z世代はアメリカの変貌の中で出るべくして出た世代、彼らの価値観は生まれるべくして生まれた事がわかります。
こうした価値観は、消費や文化にも大きな影響を与えています。次回はそこを見ていきましょう。
意外と知らない世代用語
Gen Z:
Z世代は英語でGeneration Z、縮めてGen Zと呼ばれています。
日本人は’gen- z? と発音しがちですが、?jen-?z? が正確です。
Millennials:
ミレニアル世代は英語でMillennials。ネーミングの理由は、2000年記=ミレニアムに入った頃に成人年齢に達したからです。日本では「ミレニアム世代」と呼ぶ人が多いのですが、正確には形容詞のミレニアルを使った「ミレニアル世代」です。
Baby boomer:
ベビーブーム時代に生まれた人という意味です。日本で「ベビーブーム世代」と言う人がいますが、「ベビーブーマー世代」が正確です。
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