「英語のアウトプット力に自信がない」?それなら、日々の英語学習にスピーキングテストを取り入れるのがおすすめ!『TOEICテストスピーキング/ライティング総合対策』など数々の著作を持つ浅場眞紀子さんが、英語スピーキングテストの種類や特性、テスト対策法を紹介します。今回は、「英検」「Versant」について解説します。
目次
タイプの違うテスト2種を解説!
第2回の記事ではさまざまな4技能テスト、そしてスピーキングテストについて、どのような目的をもつ学習者に向いているのか、そして目的別に私が目指すべきと考える目標スコアについてお話ししました。
第3回では、私が今までに受験した試験をいくつかご紹介しながら、その試験を受ける過程でどのようなスキルを身に付けられるのかということについてお話ししたいと思います。
今回は、私がかなり対照的だと思っている二つのテストを取り上げます。皆さんもよくご存じの英検(4技能試験)とスピーキングテストのVersantです。
総合力を測る、最も身近な「英検」
まずは4技能試験の代表、英検です。英検は皆さんにとっても最も身近な英語の資格試験でしょう。ほとんどの方が1度は受験したことがあると思います。現在は全ての級にスピーキングテスト(2次面接試験)を加えた4技能テストになっています。5級から1級までありますが、皆さんが最後に受験されたのは何級でしょうか。
英検の基本情報
- 受験級:5級、4級、3級、準2級、2級、準1級、1級
- 1次試験:リーディング、リスニング、ライティング
- 2次面接試験:スピーキング(5級、4級は1次試験の合否に関係なく受験できます。3級以上は、1次試験に合格した受験者のみ2次面接に進むことができます)
- CSEスコア:英検では、合否と別に「CSEスコア」というものが出ます。CSEスコアは、級を横断して自分の能力を数値化してくれるので、目指す級まであとどれほど力が足りないのかなどが具体的に分かります。
どのようにして受ける級や受験時期を決めたか
私が2003年に英語のやり直し勉強を始めた時点で、最後に受けた英検は、中学生の時に取った3級でした。
この3級取得から本当に長い月日を経て再度英検受験を決心した私は、準2級、2級、準1級を飛ばして1級に挑戦することにしました。
本屋に行って英検の過去問や対策本などを何冊も見たり、過去問をあれこれ解いたりしたところ、自分の英語力はおおよそ準1級あたりだろうと目安を付けたからです。
当時は今あるCSEスコアのような便利な合否判断ツールはありませんでしたので、結果は合格か不合格かだけでした。ですから、どれほど努力すれば1級に届くのか、全く見当もつきませんでした。
「まずは準1級を受けてから1級へ挑戦」とステップを踏む選択肢もありましたが、自分の中にある「やり直したい」という情熱を保つには、1級に挑戦するしかない、1級を取れなければその先はない、と思い込んでいたところもあったと思います。
私は自分のこだわりや根拠のないエネルギーを大切にしたいと思うタイプの人間なので、そのエネルギーを最高レベルで持続できそうな半年後の受験を目指して猛勉強をスタートしました。
「3級からいきなり1級だなんて無謀なのかも」と自分でも少し不安でしたし、準1級から1級はかなり距離があることも認識していました。でも、どちらにしても足りないことの方が多いので、何をやってもプラスになるだろうと思い、ひたすら1級の過去問を解き、語彙を毎日30個覚えました。
英語以外のインプットも必要
英検は、級が上がるほどリーディングやリスニングの内容がアカデミック寄りのコンテンツになります。私は英語学習をやり直し始めるずっと前から、テレビで『ナショナル ジオグラフィック(TV)』(字幕版)を見るのがとても好きでした。
そこで扱われる、自然科学、人類学、歴史、環境などに関するトピックは、ちょうど英検で扱われるテーマに重なるものが多く、番組を見るうちに自然とこれらの分野に関して一般知識と基本の語彙が身に付いたため、英検のリスニングやリーディングでも「あ、この話知ってる!」と思うことが多く、ライティングやスピーキングでも「英語を介して得た知識、表現」があることで、日本語を介さずにアウトプットできる、使える知識が蓄積されたと感じました。ナショジオ、おすすめです。
第1回でもお話しましたが、スピーキング力は総合力なので、他の3技能の実力があればあるほど、スピーキング力も伸びるポテンシャルが高くなります。
英検、IELTS、TOEFLなどの4技能テストで、まずは目標とする級やスコアを取りましょう。これらのアカデミックベースのテストでスコアを取りたい場合、自然、社会、人文科学系での知識、雑学はあればあるほど有利です。
こうしたインプットについて、英検2級未満を目指す人は日本語ベースでも構いませんが、2級以上の合格を目指す人は、ぜひ英語で読んだり聞いたりして知識を取り入れることをおすすめします。
英語圏の中学の理科や社会の教科書、無料のTEDやYouTubeなど、使える素材はいくらでもあります。英語を介して知識を得ることで、日本語に頼らず処理できる情報を増やしましょう。
私の過去のブログに、英検1級受験に際してどのように語彙を学んだかについて詳しく書いたものがあります。ご興味のある方はぜひこちらも読んでみてください。
結果的に6カ月後の英検1級に合格し、優秀賞までいただけたのが自分の人生にとって大きな一歩となりました。
私は基本的には自宅で独学していましたが、6カ月の間の1カ月半ほどは英語学校の英検1級コースに入りました。目的は、同じ目的を持って学習している仲間の中に身を置いてモチベーションを維持するためと、自己学習では得られない学習法や対策を先生から学ぶためでした。
この1級受験準備、合格を通して「英語の資格試験で人生の景色は変わるものなんだ」と実感したことは、自分にとっても驚きでした。皆さんもぜひ、現在のご自分の「総合力」を客観的に確認しましょう。そこが最初の一歩です。
容赦ない音声評価中心の「Versant」
Versantは、最近は4技能タイプのテストも受験できますが、元々ピーキングのみでスタートしたテストで、今でも他にないユニークなスピーキングテストを提供しています。このテストは、スピーキングの流ちょうさ(fluency)にほぼ特化しているところが他のテストとは大きく異なるところです。
流ちょうさと言っても、発話のスピードだけでなく、構文処理のスピード、情報処理(簡単な数処理=足し算、引き算など)のスピード、発音のクオリティーまで含まれます。
Versant Speaking Testの基本情報
- 約20分間で63問の英語の質問、タスクに対応する
- AIによる採点により数分(サーバー・通信環境などにより異なる)でスコアが出る
- スマホやPCで24時間いつでも受験できる
- スコアは20点~80点(満点)の範囲で出る
- 内容は英語圏での一般生活英語
このように手軽に受験でき、さまざまな利点のあるVersantですが、一筋縄ではいかないテストでもあります。日本人のVersantの平均点は現在38点とされ、満点の80点の半分にも届きません。
私が某企業でVersantの指導をしていた時期、参考書も無いこのテストを理解するために、1日に何回も受験していました。その企業では50点というスコアを目標値にしていましたが、多くの方はTOEIC L&Rテスト800以上であっても45~48点で壁に当たり、50点を超えるためには相当の努力が必要でした。それは一重に、このテストで発話の音声的な質が求められているからです。
Versantで高得点を取るための対策
私は最初に受験した時に66点ぐらいしか取れなかったので奮起し、そこからセンテンスリピートやシャドーイングなどを「量」ではなく「質」重視で丁寧にトレーニングし、74点まで上げることができました。
「発話の内容やロジックではなく発話の音声的なクオリティー」に比重を置いて採点されているため、テスト対策だけではなかなか点が上がらず、発話の本質的な改善を求められます。
しかし、だからこそこのスピーキングテストで一定レベル以上のスコアが取れるということは、「AIが理解できる=世界の誰でも理解してくれる(可能性が非常に高い)」英語を話せるという証明になると考えています。
また、こちらのテストにユニークなのは、簡単な計算を求められる問題が含まれるということです。例えば、“Suzan bought a dozen eggs and used four of them to make pancakes. How many eggs are left?”といった音声がさっと流れ、すぐに頭で計算して数を答えなければいけません。
この他にも、英語圏の日常生活では当たり前でも日本で学習しているとなかなか出合わない語彙や表現も出ます。その意味では、留学などを考えている方にはぜひチャレンジしてほしいテストです。『Oxford Picture Dictionary』のようなもので少しボキャビルしておくのもよいでしょう。
自分の立ち位置を客観的に把握しよう
日本にいながらにして英語のスピーキングを上達させたい、という高い志をお持ちの皆さんには、手軽に受験できるVersantやTSST(第1回の記事でご紹介しています)などから始めていただくのもよいと思います。
私は自分のスピーキング力をテストなどで測定されるのが大嫌いで長い間避けていましたが、勇気を出して1回受けた後は、気持ちに変化が起こりました。苦手意識を払拭するには、勇気を持って一歩を踏み出すことがとても大事です。一歩前に出ればまた見える景色も変わり、そこから新しい展開が生まれるでしょう。
まずは学習のスタート時点となるスコアを取り、自分の立ち位置を客観的に把握しましょう!
第4回記事は2021年10月29日(金)公開予定!
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浅場眞紀子慶應義塾大学卒業。コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL)修士号取得。外資企業2社に計10年間勤務後、ビジネス英語研修会社Q-Leapを愛場吉子と設立。企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスン、グループ研修を手掛けている。共著『TOEICテストスピーキング/ ライティング総合対策』(旺文社)、共著『話せる英語ドリル300文』(アルク)など著書多数。